リニア大深度シールドマシントンネル工事をこのまま始めてはいけない理由
リニアの問題について、外環道の陥没の問題もあり、大田区の地盤を調査し、あらためて、外環道陥没についての調査報告書を読んで、大深度地下トンネル工事の問題点が見えてきました。
大深度地下使用は、地中深くの大深度の支持地盤が固ければ大丈夫だと言いますが、表層の地盤や地中のガス、上下水道、鉄道、ケーブルなどのインフラに影響するため、そこの調査が必要です。
しかも、表層は人為的な改変が著しく、詳細に調べる必要があります。
JR東海は、新たな調査もせず、工事を再開すると言っていますが、このまま工事再開はあり得ないと思い、議会質問で取り上げました。
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フェアな民主主義 奈須りえです。
東京外かく環状道路つつじが丘の陥没をうけ、6月8日、JR東海は、その再発防止対策を含めたリニア中央新幹線工事の安全対策について、住民向けの説明会を行いました。
◆気をつけながら工事したら、リニア工事は大丈夫!?
JR東海は、外環道の陥没事故の原因を「特殊な地盤」と「施工の課題」とし、「施工管理を強化」してトンネル掘削を進めると説明しました。
◆東日本道路はシールド掘削と陥没の因果関係を認め補償
外環道は、今後も追加ボーリング
外環道の陥没などの事故について東日本道路(NEXCO)が因果関係を認め補償すると公表されていましたし、
報告書には、
・今後のシールド掘進地盤について、必要に応じ追加ボーリングを実施し、地盤に適した添加材配合を再確認すると書かれていますので、
・このまま新たな調査もせずに工事を進めることはあり得ない、
・場合によってはJR東海がリニア事業撤退を表明するのではないか、
と思って参加しましたので、JR東海の結論と説明に大きな違和感を持ちました。
外環道陥没事故で分かった
◆大深度地下認可だけでは安全を保障できない
陥没事故の起きた外環道は、大深度地下法に基づき大深度地下使用が認可されていますが、認可の手続きを満たしているだけでは、事故を未然に防ぐことはできず、認可は安全を保障していないことが分かったからです。
【1】そこでうかがいます。
外環道で起きた事象の原因は、陥没や空洞が発生したことを受け、その箇所を外環道の事業主体である東日本道路がボーリングし、調査委員会を立ち上げて、判明したと理解しています。
その理解でよろしいでしょうか。
それとも、ボーリングや調査をする前から、特殊な地盤だということが分かっていたのでしょうか。
◆支持地盤が固ければ大丈夫?
ところが、説明会でJR東海は、リニア中央新幹線経路は「上総層群北多摩層」の固結シルトと締め固まった砂を掘削していくので、外環の陥没カ所のような「特殊な地盤ではない」と「考えている」。大田区などの工区の支持地盤は固く、外環道の特殊な地盤とは違っているから大丈夫。ボーリング調査は必要ないからしない。と言って、施工に配慮して行うから安全・安心であるという説明に終始しました。事故を踏まえて施工管理をしっかりやろうというのが説明会の趣旨であるとも言っています。
◆掘りながら調査で大丈夫?
また上の地盤については東雪谷非常口の土をだしていくところで確認していくと説明し、配布資料には、計画路線周辺の状況を確認しながらトンネル掘削を進める、と工事しながら調査すると思える記載もありました。
◆原因は、事故後にボーリングして判明
しかし、外環道で特殊な地盤とした
- 掘削断面は細粒分が少なく、均等係数が小さいため、自立性が乏しく、礫が卓越して介在、
- 掘削断面上部は単一の砂層、
- 表層部は他の区間と比較して薄い地盤
は、事故後に事故現場をボーリングして初めてわかったことです。
◆ふれなかった二つの調査結果
1、陥没カ所の表層の地質
2、入間川分水路地下下水管の沈下と剥離
しかも、説明会でJR東海は外環道の2つの重要な調査結果について触れませんでした。
一つが、「当該地造成時などにおいて人工的に掘削された可能性があるエリアであることを確認した」という記載。もう一つが、入間川(いりまがわ)分水路地下下水管の地表面が6~8ミリ、管渠部分で12~16ミリ沈下、管渠内が8カ所剥離していたことです。
◆JRも認める工事の振動は地表に伝わる
JR東海は、説明会で低周波の質問に対し、「シールドマシンで掘削していると若干振動が出る。地中を振動として伝播してそれが皆様のおたくや杭の基礎を揺らす。」「振動を抑えようと考えている」と言い振動が上部に伝わると説明しています。これと合わせて外環道の調査結果をみると、掘削に伴う振動が、下水管他地下構造物や地表面に影響し、今回の事故が起きた可能性を示しているように思います。
大深度地下が固いことを証明しても、そこを掘って振動が地中から地表に伝わる間に、下水管や、地質によっては地表に影響するということで、盛土や切土、比較的新しい時代の土砂が堆積している区域など、地表地盤に関する調査が十分でなければ事故は防げない。地下構造物、インフラや大深度地下トンネルとの位置関係がわからなければ、事故は防げないということだと思います。
東京都土木技術研究所調査結果が示す
1、表層地盤調査の重要性
2、木造家屋、道路、ガス、上下水道などに影響
3、表層地盤は改変著しい
大田区は、昭和45年3月地震対策のため東京都土木技術研究所に「表層及び浅層の地盤地質構成を明らかにすることを主眼にした調査」を依頼し報告書を作成しています。ここに、先ほど私が指摘した調査結果の気になる二点、「造成時などにおいて人工的に掘削された可能性があるエリア」と「入間川(いりまがわ)分水路地下下水管沈下と剥離」に重なる問題点を指摘している箇所がありました。大切なので読み上げます。
1、従来震害(地震・振動の被害のこと)に関係した地盤条件として、沖積層(ちゅうせきそう)の分布等、いわゆる浅層地盤構造が主に検討されてきたが、震害における地盤災害の点から見ると、表層地盤の詳細な検討が必要である。とくに地盤災害による被害は、大構造物よりも、木造家屋、道路などのほかガス・水道等の地下埋設物に対して影響の著しいことは従来の震害例が示している。
2,表層地盤の性状は微地形等から概要は、はあくできるが、土性については不明瞭な点が多いので、よりきめの細かい調査が必要であろう。とくにこの地盤には、人工的な埋立土(場所によってはゴミの層がある)が広く分布し、人為的な改変がいちじるしい。
ここから、
・震害における地盤災害の点から見ると、表層地盤の詳細な検討が必要、
・地盤災害による被害は、大構造物よりも、木造家屋、道路、ガス・水道等の地下埋設に対して影響が著しいことは従来の震害例が示している
・表層地盤はよりきめの細かい調査が必要で、この地盤は、人工的な埋め立て土が広く分布し、著しく手が加わり変わっている
ことがわかります。
報告書をみると、リニア経路が、「比較的災害の少ない台地部」だけでなく、「台地と台地の間の人工的な盛土などの下」の地盤災害がやや大きい部分も通っていることがわかります。
【2】そこでうかがいます。
JR東海は、既存のボーリング調査だけで、新たな地盤調査は行わず、また、地質調査も概要にとどまっているまま、リニア工事を始めようとしています。
大田区の図書館には、JR東海が公表している以外にも、大田区の地盤について調査した資料が複数ありました。
JR東海が大深度地下使用の認可に際し、提出した調査資料やそれまで公表されてきたリニア事業に必要な資料で、リニア経路における大田区の地盤や地質について十分把握できていると大田区はみていますか?
さらなる資料の収集やボーリング調査が必要だと思いますが、大田区の見解をお示しください。
◆JR東海が触れなかった下水管の沈下と剥離からみた、大田区、東京都、JR東海の責任
【3】JR東海が触れなかったもう一つの調査結果が
入間川分水路地下下水管の剥離と地表面の沈下です。
原因調査をした結果、東日本道路は因果関係を認め、東京都に補償するとしています。
これは、地下トンネル工事がその上にある構造物に影響を及ぼす事例が確認されたという事です。JR東海が「振動が家の杭を伝わる」と言っている事からも、大田区の昭和45年の調査報告書からも、大深度地下シールドトンネル工事による振動の影響が、リニア経路の上部の構造物、鉄道、上下水道、地下ケーブルなど、インフラにも及ぶ可能性を示しています。
ところが、JR東海は、説明会で、この部分の報告や対応策に言及しなかっただけでなく、そもそも、東日本道路の調査報告書は入間川(いりまがわ)分水路の地表面沈下などの原因にふれていません。因果関係の内容が公表されていないのです。
「東京外環トンネル施工等検討委員会の3月19日に公表された結果報告書」には、分水路の管渠の地表面が沈下し剥離が見られた部分は含まれていません。
JR東海の説明会で質問したところ、原因が公表されていないのに、JR東海は、陥没と空洞と全く同じ特殊な地盤と施工が原因だと思うと発言しています。とても大切なことで、JR東海も気にしているとも言っていておられました。
しかし、私が質問しなければ、入間川(いりまがわ)分水路の問題は報告すらされなかったという事になりますから、非常に心配です。
そこでうかがいます。
外環道のトンネル工事における、分水路の地表面沈下と管渠内の損傷について原因が公表されていません。
・原因を公表すること
・JR東海はその原因を知ったうえで対策をとり説明すること
・それまでリニア中央新幹線工事はすべきではないこと
について関係者にご確認ください。
このことは、
調査委員会のメンバーである、国土交通省関東地方整備局、東日本高速道路株式会社関東支社、中日本高速道路会社東京支社に確認すべきですが、少なくとも、リニアに関係する事業者JR東海、管渠の所有者である東京都に聞いてお答えください。
◆密集する地下インフラ
大深度トンネル工事でも大丈夫?
【4】大深度地下使用は、地上部分が密集していて土地取得が困難なことから、使っていない地下深くの財産権に係る土地収用法の適用を例外的に除外して、インフラ整備するために始まりましたが、当日JR東海は地下には、鉄道、上下水道、ガス、電気、地下ケーブルなど、たくさんのインフラが存在していることにもふれていて、都市部は地下も大深度地下も既に使われ密集していることが判明しました。
ところが、昭和45年当時の報告書で既に、震害は大構造物より木造、道路、ガス、水道など地下埋設物に影響がいちじるしい、人為的な改変がいちじるしい、と書かれているにもかかわらず、事故まえどころか事故が起きた後でさえ、大深度地下使用において、そうしたインフラの存在や、位置関係は私たちに示されていません。
JR東海は、トンネル直径分、管や施設が離れていれば影響ない。干渉しあわないようしっかり施工管理やっていく。相手さまもしっかりやっていただく。
と説明を聞く限り、事業者間で調整していて、私たちは知ることができません。今回の説明会で質問されて初めて触れたことやリスクコミュニケーションの視点からも、事業者まかせで良いとは思えません。
さらに気になるのが、東京都が豪雨75ミリ対応で、洗足池の北から東へ少し進みそのまま道路沿いを南に行く管路を計画中だという事です。
この管路も大深度で地下約50mで、地下約60~70mのリニアと交差します。
・外環道も延伸すれば、大田区で交差する可能性があり、平成24年1月の都市・環境委員会で「リニアの環境アセスに大田区長意見として『外環道とリニアが交差することに関して、その影響も留意すべき』と都知事に回答したことが報告されています。
・呑川から多摩川へ抜ける中原幹線の近くもリニアが通ります。
こうした地下のインフラは道路管理者である大田区にも関係がありますし、上下水道は東京都自身が事業者であり、都道なら東京都、国道なら国の責任も生じます。
平成30年 7月交通臨海部活性化特別委員会で、大深度地下の認可について
「大田区は、道路管理者、施設管理者の立場で、その施設が地下にあるか、それが通ることで道路に損傷があるか、意見を求められ意見はなしと回答した」と答弁しています。
外環道の事故で、道路管理に支障が出ることが明らかになったわけですから、答弁の通り道路管理者として責務を果たすべきだと思います。
大深度地下トンネル工事と管渠内の損傷の因果関係を東日本道路が認めた今、地下構造物やインフラの情報を持つ関係行政がインフラとリニアが干渉しないよう、位置関係含めた情報を公表し大深度地下を使ったリニア中央新幹線シールドトンネル工事の安全について住民に説明し理解を得る責任があると思います。東京都の75ミリ対応の管渠の計画含め、大田区および東京都の考えをお示しください。
◆更に好ましくない事業に譲渡される前にリニア事業は廃止すべき
リニアの総工事費が認可申請時(平成29年9月25日)の5.52兆円から7.04兆円と、1.52兆円増額しました。JR東海は新たな1兆円の資金調達と売り上げ増で乗り切ろうとしていますが、安定配当を堅持することを優先するJR東海の株主は、株主総会でどう評価するでしょうか。
大深度地下法は事業譲渡を認めています。掘り始めて家屋、上下水道、ガス、鉄道などに大打撃を与え、都市機能不全に陥る前、更に住民に好ましくない事業用に譲渡される前に、リニア事業は廃止すべきだと思います。少なくとも、安全を担保するための調査と情報収集をして住民に合理的、論理的な説明ができる状態にしてから、でなければ工事は再開できないことを強く申し上げ質問を終わります。