移送サービスを考える③

構造改革特別区申請から

 これまでお話してきました、現在行われている「移送サービス」は、道路運送法による”一般乗用旅客自動車運送業(=民間タクシー事業)”にあたります。自家用自動車は、お金をもらって人を運んではいけない(80条1項)のです。現行は、白タクでなければ、NPOなどの市民事業は、黙認されている形になっています。
 
 神奈川県の大和市で移送サービスを行っている団体は、この問題を「構造改革特区」申請をすることで解決をしようと取り組みました。
 
 人口21.8万人の大和市では、市の身体障害者手帳交付者は4666人、要介護認定者は、3412人で、約8000人の移動制約者がいると推測しています。しかし、現実には、タクシー事業者による福祉車両輸送の登録台数は、大和地区では常駐配備0、周辺市区町村でも30台と少なく、移送サービスのニーズの高い地域です。
 しかし、市が実施しているサービスは、①通院に限定②月2回まで③送迎のみで介助がない④土日祝日、早朝・夜間は利用不可⑤急な依頼は不可で使いにくく、タクシー事業者のサービスは高額だったという背景があります。
 大田区で行ったアンケートでも、通院以外の目的がありましたが、大和でも、当初多かった通院目的から、通院・入院以外の目的に増えてきています。
 
 80条1項は緩和されましたが、大和市の特区申請には、いくつかの問題がありました
 ①使用車両を福祉車(リフト付きやスロープ式の車いす対応車か助手席回転シーと付改造車)に限定している。
 ②運送の対価をタクシー運賃上限額の1/2に規定。短時間利用の場合に難しい。
 ③自家用自動車の有償運送の解釈により、旧契約を解除されたうえ、保険料があがった
 ④運送の対象(運んでよい人)が限られる
 
 国土交通省は、今年度中に全国NPOに適用するガイドラインを作成するといっています。マイカーボランティアが、含まれるのかどうかが大きな注目の的になっています。

 遠距離利用が期待できる地区(都心の繁華街)では、タクシーが列を成し、待つ客は僅か。近郊の駅前には、タクシーまちの長蛇の列で、タクシーは来ない。タクシーの運転手が、儲けの高い仕事を選んでいる結果が、このような状況を作っているという記事を、新聞で読みました。

 利用者が利用しやすいサービスを提供することを主眼に、この送迎NPOのガイドラインが出来上がることを望みます。