吞川と同様、水質浄化が課題となっている目黒川では、目黒線と交差するあたり=亀の甲橋に設備を設置して、川床に不足している酸素を供給して、水質改善に取り組んでいます。
大田区でも、東京工業大学と連携し、このしくみを更に改善して吞川の浄化に取り組むと公表していることもあり、お花見をしながら、「高濃度酸素水を活用した水質浄化実験施設」をはじめ、豪雨対策として建設された「荏原調整池」「目黒区立川の資料館」を見学してきました。
【目黒川の緑化】
目黒川は、桜が植えられていてお花見の名所になっています。また、フェンスの部分がツタでおおわれていて、ちょっとした緑化になっています。
吞川沿いの道も、街路樹を植えるスペースのないところは、道路をすべてコンクリートで固めるのではなく、土を残しわずかなスペースを活用して緑化をしてはと提案しています。
最近、大田区の呑川の新幹線の上流側、「東橋」付近のフェンスが新しく取り付けられました。
これまでより、川側に寄せてフェンスを設置することで生まれたスペースに、ポットを設置してツタを植えています。
水やりが必要なため、地面に植えている池上などように根付くか気になるところです。
【荏原調整池】
また、今回は、荏原市場の跡地に建てられている住宅や高齢者施設の地下部分を活用して作られた豪雨時の河川氾濫を防止するための「荏原調整池」も見学してきました。
貯留量は、20万㎥。25mプール670杯分の目黒川からあふれ出る水を貯留できます。
平成9年、供用を開始してから、既に11回目黒川から水が流れ込み川の氾濫を食い止めてきているそうです。
【高濃度酸素水を活用した水質浄化実験施設】
さらに、歩くと、品川区が設置している水質浄化のための試験装置が設置されている場所に着きました。
川床のヘドロが堆積している部分は、酸素が少ないため、空気中から酸素を取り出し濃度の高い酸素にして、川の水と混ぜた後、川床に送り込む装置です。
課題は、
①空気中から酸素を取り出す技術は簡単ではなく、装置が大きくなる。
結果、水質浄化に十分な高濃度酸素機器の設置スペースとして広い場所が
必要なこと。
②水質浄化に十分な装置を設置するには莫大な費用がかかる。
また、濃度の高い酸素を送り込んでも、当然水より軽いため、すぐに川の表面に浮かび上がり川床に長時間とどめることができません。そのため、どれほどの効果があるのかという指摘もあります。
【都市化の代償】
「荏原調整池」の施設建設費は316億円。
一旦水が流れ込めば、地下に溜まった水をポンプでくみ上げるとともに、貯留池にたまった泥などを洗い流す作業も必要で、維持管理費もかかります。
下水管と雨水管がわかれていないため、雨が降れば、下水が雨水とともに川に流れ込み浄化対策が必要になっています。
地下浸透するべき雨水も、開発により、建物やコンクリートで覆われ、雨水の受け皿が都市型河川になっているのです。
最近は豪雨、それも、集中豪雨と呼ばれる雨も多く、都市化やそれに伴う気象変化の影響により、都市河川の水位が短時間で増すケースが増えています。
最近の人口調査でも、日本全体が人口減少に転じる中、一部の大都市だけが依然人口増を続けています。
人・金・物の都市集中は、経済の効率化などの恩恵をもたらす一方で、様々な弊害ももたらしています。
流域面積45.8㎢。延長8Kmの目黒川の水質浄化と豪雨対策は、降った雨を貯留したり、流れ込んだ汚水を設備により浄化するだけの結果を改善する対策だけではなく、同時に、広くは温暖化に歯止めをかけ、また、降った雨をできる限り地下浸透させるようにし降雨時の下水道への越流を防ぐといった原因を改善しなければ、解決にはつながらないでしょう。
【大田区呑川の浄化対策】
大田区を流れる呑川の水質浄化のため、産官学で連携して取り組むことが21年度予算に盛り込まれています。
現在、品川区で試験的に取り組み、今後、品川区と目黒区が連携して目黒川の水質浄化していこうとしている「高濃度酸素水を活用した水質浄化」のしくみの課題を東京工業大学の研究と大田区の技術で解決しようという取り組みです。
小さな施設で安価に、そして効果的に水質浄化できるしくみができることに期待すると共に、大田区が下流で弊害を被る自治体としてイニシアチブを発揮し、上流域と連携して、雨水の地下浸透を促進していくことが必要です。