2008年度の決算では、利益が約1億1500万円ですから、経営状況は良好と言えるのでしょう。
しかし、大田区には、事業内容についての説明も報告も一切ありません。請求して初めてでてきたのは、HPに掲載されている損益計算書と貸借対照表のみ。これまで、HPで公開していた内容さえ、守秘義務を理由に公開しなくなってしまいました。
23区が出資金を負担してわざわざ作った株式会社ですが、23区民にとって、何がどれくらいメリットになっているのかさえ示してもらえないのが現状です。
何のため、誰のために作った株式会社でしょう。
【第三セクター】
国や公共団体と民間企業とが共同出資して設立した株式会社を官(第一セクター)でも民(第二セクター)でもない「第三セクター」と呼びます。
三セクと聞くと、当初の期待=公共事業に民間の経営感覚とノウハウを活用した事業体としての役割という側面もありますが、夕張市破綻の一因となるなど債務を抱えた自治体の財政上のお荷物といったイメージも強くなっています。
【物議をかもした株式会社設立】
2006年に23区が払い込んだ資金を元に東京23区清掃一部事務組合(一組)と民間事業者が共同で出資し、
●清掃工場が焼却に伴い発電したうちの余剰電力の売買
●23区の清掃工場の運転管理受託業務
するための株式会社(=「第三セクター」いわゆる「三セク」)を設立することが大きな論議を巻き起こしました。
【23区が出資金を負担して設立しても、株式会社は情報公開の対象外!?】
大田区議会で、私の質問に対し西野前区長が「新会社(この三セクのこと)について、経営状況等は当然一部事務組合議会には報告をするべき義務がございます」と答弁したこの「三セク」ですが、設立後の情報公開のありかたが答弁と大きく異なってきています。
「東京エコサービス」は、おもに、二つの事業を行っています。
●清掃工場が焼却に伴い発電したうちの余剰電力の売買
●23区の清掃工場の運転管理受託業務
【株式会社設立の目的は?】
23区にとっては、余剰電力をこれまで以上に高く売却し、清掃工場の運転管理を安定的に安全にしかも、これまでより安価に委託できて初めて、この株式会社の設立の目的を達することができたことになります。
しかし、この「三セク」の経営状況については、常任委員会で指摘して初めて損益計算書と貸借対照表をのみを報告しただけで、株式会社設立による23区への効果などは一切報告されておらず、著しく透明性に欠けているのが現状です。
そうした姿勢が直接の出資者で株主の「一組」の考えであることは大田区に確認しましたが、それについて大田区もそれを問題視していないと委員会において答えていますので、同じ意識でいるのでしょう。
これまで、HPで公表してきた23区の清掃工場(一組)の売電量と単価さえ「一組」は出せないのですから、「三セク」設立によって透明性は後退したと言えます。
余剰電力は「一組」の財産であり、いわば、23区民の財産でもあります。その財産をどこにいくらで売却するのかを、「守秘義務」で公表しないことができるのでしょうか。公共団体の情報を民間企業が拘束できるとするならば、その根拠はいったい何でしょうか。
【黒字経営であれば目的は達成できたと言える?】
「三セク」は利益を出していますが、利益は、売上が大きく費用が小さければうみだすことができます。
「三セク」の仕入れ先であり、売却相手は23区の清掃工場を運営する「一組」です。「一組」とこの「三セク」の間での売買価格が明らかにならなければ、23区にとって、この「三セク」の存在が効果を生み出しているかどうかを判断することはできません。「三セク」が黒字経営であるからといって、必ずしも23区民にとっての利益に直結するかどうかはわからないのです。
「三セク」の黒字が一組が本来得られるべき収入を得られないことによって確保されていることが無いことを「一組」そして「大田区=23区は」23区民に対して示すべきではないでしょうか。
一方で、今後、「三セク」は、清掃工場から購入した電力を23区の小中学校に売却すると言っています。
電力の自由化は、どこからでも電力を調達できることにあり、23区が足並みを揃え「三セク」から電力を強制的に購入すること自体、自由化とはかけ離れた発想であり、自治権の侵害と言えるでしょう。
現在、品川区で余剰電力を「三セク」から購入することについて検討中ということですが、委員会での私の質問に対し、大田区はこの売却金額についても「守秘義務」にあたるとして公表しないと発言していました。自治体側から見れば、品川区の税金で調達した電力量と単価を公表しないことになり、税の使い途と情報公開の視点から考えれば、それは、ありえない話です。
そこまでして守らなければならない「秘密」とは一体なんでしょうか。
【地方自治体にも存在する官主導の弊害】
今年度から大田区は、「一組」から環境清掃部長を迎えいれています。
大田区の負担した出資金も、また、「一組」の運営費の一部も大田区民の税金です。税金を投入して設立した株式会社の経営が大田区民(=23区民)の利益になっているかどうかの検証さえできないにもかかわらず、区民税金の投入効果を明らかにする姿勢を持てないとするならば、適当な人事だったと言えるでしょうか。
これも一つの天下りになるのかも知れません。
官僚の天下りが今回の総選挙のひとつの争点となりました。
立法も議会運営もまた官と政の関係も、地方は国を倣っています。亊の程度の差こそあれ、国でおきていることで、地方自治体は無関係なものはありません。
金額が大きかったり、マスコミで大きく取りあげられていたりするために国の動向は目立ちますが、国だけでなく地方自治体も変わらなければならないところは数多く存在します。