現実に、住民から提案されている地区計画を、基準がないために長期間放置している現状がありながら、「弾力的」な対応という答弁がいったい何をさしているのかわかりません。
今日は、こうした「住民参画」のしくみの無い、そして、「住民参画」に消極的な大田区のまちづくり行政についてみてみましょう。
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先日、私は、その名のゆえんでもあるせせらぎ公園の3か所の水源のうちの一か所の湧水が止まってしまったため、マンション建設の住民説明会資料を大田区に求めました。
大田区の墓地建設においては保健所の判断で出している住民説明会資料ですが、建築調整担当課は、「事業者の了解を得られなければ渡すことはできない」と回答しています。
一般に、近隣住民でなくても配布を拒否されることがないマンション建設の住民説明会資料を開示請求で出すというのもどうかと思いますが、事業者の了承が必要という回答は、他の自治体でも聞いたことが無く、大田区のまちづくり行政が事業者よりであることの良い事例です。
開発主導のまちづくりは、企業の論理を中心にすすめられるため「都市マス」とは無縁の開発もおこなわれてしまいます。こうした、開発主導・優先のまちづくりという考え方は、大田区に限った事ではありません。
現行の日本の法律や制度が、欧米に比べ土地所有者の権限が大きかったこと。そして、まちづくりは、戦後、建築・土木、不動産業のため、景気対策のためだったことから、街並みや環境・景観といった視点でのまちづくりを行ってこなかったのです。
しかし、国立市のマンション紛争を契機に景観法が制定されるなど、少しずつではありますが、まちづくりに対する考えかたも変わってきています。
■質問④■
開発主導のまちづくりから住環境に配慮した地域に住む工業者・商業者も含めた住民主導のまちづくりを進めていくためには、住民参加を保障する手続条例の制定とともに、日常に発生する業務における、開発事業者よりでない、住民の側にも配慮した中立な立場での情報公開や行政としての対応が必要であると考えますがいかがでしょうか。
■大田区の答弁④■
中立な立場での情報公開や住民側にも配慮した行政としての対応が必要であるとのご質問ですが、まちづくり関連の情報公開は、大田区情報公開条例に示された基準に基づき、公開すべきか否かを判断いたしております。
ご指摘にありました住民説明会資料の件ですが、これは大田区中高層建築物の建築に係る紛争と予防と調整に関する条例に基づき、事業者から提出されたものであり、条例上の説明対象者のために作成、配布された資料です。
これを第三者に開示することは、法人等又は個人の事業の運営を不当に害すると認められた場合に開示をしないとする、大田区情報公開条例第9条第2項に抵触する可能性があるとの判断から、事業者の意向を確認の上で対応させていただいたものであり、情報公開条例に基く原則的対応と考えます。
*答弁についての奈須のコメント*
周辺住民を建設予定地からどこまでの範囲にするのか条例上で定められているとはいえ、大田区の中高層条例に基づく説明会は、半ば公開されているものであり、配布された資料についてもそれを第三者に配布・コピーすることを制限されてはいません。
事業者が中高層条例基づきは開催する説明会において配布する資料は、第三者への配布・コピーも想定していると考えるのが妥当でしょう。
紛争において、十分な資料を入手できないため、建物建設後の周辺環境への悪化を正確に知りうることができず、詳細な資料を求め事業者と交渉することは珍しくありません。
そうした類の資料を都度、「事業者の意向を確認したうえ」で資料提供するか否かを判断することが、情報公開条例に基づいた適正な判断と言えるでしょうか。
事業者が配布不可と言ったら事業者の意向に沿うのが大田区の姿勢でしょうか。事業者ごとの判断に差が生じても適正な条例に基づく運用といえるでしょうか。
情報公開条例第9条第2項に基づく判断は、事業者の意向に基づき行うのではなく、大田区の判断のもと行うことこそが、条例の適正かつ区民にもまた事業者にも公正な運用であると考えます。
ちなみに、質問の際には、そこまで言及しませんでしたが、区に資料提供を求めた際に情報公開条例に基づき判断すべきとお伝えしましたところ、その時点で区は、そうではないと答えています。
日常業務における、こうした区の開発事業者よりの認識のひとつひとつが、結果として住民主導のまちづくりを阻害してはいないでしょうか。