平成22年度予算討論「事業執行根拠の明確化:効果的な施策執行のために」

 地方主権と言いながらも、国からの関与や制約も多い状況のなか、23区は自治権を認められているものの、都区財政調整という特殊な税収配分のしくみにより、未だ東京都の内部団体として位置付けから抜け切れず、市部に比べても自治意識の低い自治体であると言わざるを得ません。

 税収は大幅に減少し始める一方で、人口構成の変化により区民需要は大きく変わり、高齢者や子育て支援策などの歳出は増える一方です。
 また、公共施設の建て替え時期を迎え大田区の施設の更新をどのようにしていくのか、近い将来必ず来ると言われている大規模地震に対し、自治体としてどう備えていくのか、などの課題もあります。
 税収は減る要因はいくらでも列挙されるものの、増える要素に乏しい一方、区民需要は増すばかりという極めて厳しい状況です。

 国の事業仕訳は、政治の「透明性」を国民にアピールしていますが、私たちに疑問が残るのは、何故、そうした今回の事業仕訳で廃止となったような「無駄」な事業が、予算査定において、省庁をスルーしてしまったのか。財務省のチェックが及ばなかったのか、そしてまた、国会を通過してしまったのかということです。

 大田区も「事業仕訳」的なことを行うとしています。しかし、本来、チェックすべき、「予算査定」「行政内部評価」「外部包括監査」「監査」、そして、私たち「議会」でもチェックしえないという事実を特に私たち「議会」は重く受け止めなければならないのではないでしょうか。「議会」は変わらなければならないと強く感じます。一方で、あえて申し上げさせていただくなら、現在の状況で、議会が果たしてどこまでチェックしえるのかという問題もあります。

 予算の編成は、政策や事業の根拠や意志決定過程が非常に重要になってきます。
 これまでも、私は、意志決定過程の透明性の確保について、繰り返し発言してきていますが、大田区においては、それが改善されるどころか、逆に悪くなっているように感じるのは私だけでしょうか。

 国の「事業仕訳」において、評価できるのは、仕訳人に対して事前の事業説明が行われ、必要な資料は、要求すれば用意されたということです。

 私たち「議会」は、予算委員会において、様々な視点から、予算をチェックし、区民の税金をいかに有効に使って区民生活に寄与できるかという視点で議論を重ねてきました。
 しかし、私たちに明らかにされないまま、様々な事業が行われようとしています。
縮減傾向にあった大田区の補助金・助成金ですが、ここ数年大幅に増えています。「地域力」は重要ですが、税金の配分には慎重になるべきで、バラマキ、集票と疑われることのない明確な根拠と支給基準が必要です。

 今回の予算にも、新事業が提案されていますが、たとえば、グループ保育室は、事業の概要も明らかにされないままに予算計上しています。
 いわば、白紙委任の状況ですが、こうしたことは、今回の「グループ保育室」に限ったことでなく、たとえば、福祉施設への貸付条例制定の際にも条件が決まっていなかったなど、松原区長になって散見されるようになっています。
 少なくとも予算提案、事業提案するときには、その全体像を示すよう要望します。

 昨年の予算委員会で、区民の権利義務に関わる事項は、条例によって規定すべきであり要綱での運用は自治法の趣旨に反すること。また、要綱は、区民にみえる状況にすべきであると提案した結果、HPに掲載すると答弁していただいています。
 補正予算にも計上され、一年近くたちましたが未だにHPには掲載されていません。
 そこで、先日、要綱のタイトルのリストを区議会図書館に設置するよう議会事務局長を通じ依頼しました。しかし、中間報告であがってきたのは、要綱の一部だけ。HPには、全ての要綱を掲載しないのだそうです。

 議会は、予算を可決し、また否決する権限を持つ府です。その議会に、区政に大きくかかわる、区民の権利義務に関わる内容も、補助金助成金の支給も規定している要綱のタイトルさえ出せない。必要なら開示請求しろというのです。

 区が、どういったルールで区政を行っているのか、その礎である要綱のタイトル=つまりはその存在さえ知ることができないのが現在の大田区なのです。
 中には、情報公開条例によりその内容を明らかにできない要綱もあるかも知れませんが、タイトルまで制限する必要があるでしょうか。

 改めて、区政の意思決定過程の透明性と説明責任を要望します。

 以下、具体的に次の事項を要望いたします。

1.大森南のアスベスト土壌置換工事は
 「不十分な調査と失敗を活かせなかった」
 「判断が遅い」
 「事業執行目的がぶれる」
 「隠ぺい体質とリスクコミュニケーションの不足」
といった点に問題がありました。また、一部専門家からは金額が高いという指摘もあり改善が求められます。
 
2.土地の取得や活用についても繰り返し指摘させていただいていますが、土地開発公社を隠れ蓑に、不要な土地を不適切な価格や条件で購入することの無いよう要望します。

3.待機児対策は、国基準より低い、、認可外保育で定員増がはかられています。国基準を遵守した良好な保育環境の中での認可保育園の定員増を要望します。安易な認証保育所の増設は将来の幼稚園への経営圧迫、ひいては、認可保育園の定員削減を招きかねません。近い将来の少子化を踏まえ、安易な認証保育所の増設には慎重になるべきです。

4.現在の大田区のしくみでは、解体に伴う安全なアスベスト建材の除去は望めません。「形骸化し機能不全に陥っている制度」を見直し、業者の手抜き工事を未然に防止できるよう要望します。

5.「東京エコサービス」と小中学校との売電契約を締結し今年度から電力の販売は、23区に不利益の生じてはなりません。23区に負担を強いたうえでの東エコの作られた黒字でないことを祈り、透明性をもった経営を要望します。

以上をもって賛成討論といたします。


なかのひと