【①】災害廃棄物広域処理の背景にある清掃工場の余力という大きな問題

災害廃棄物の広域処理について質問させていただいたのち、女川町に行ってきました。
お手元の資料(資料1)の黒く塗りつぶされているところに瓦礫が仮置きされています。

テレビや写真では画面いっぱいに瓦礫の山が映し出されますが、それではボリューム感がわからないと思いますので、この女川町の地図を見ていただければと思います。
瓦礫がおかれている以外の低地の大部分は、一組ビデオで女川町長が市街地の8割が被災したと話されているように、ほとんどが更地になっていました。

違う視点から、こういうことも言えます。
たとえば、災害廃棄物総量は、環境省の報告で2,250万t。そのうち広域処理分は353万tで15.6%。がれきが置かれている面積は約11㎢でそのうち広域処理分は2㎢程度です。可住地面積が、岩手県(3710㎢)・宮城県(3130㎢)と首都圏たとえば東京都(1396㎢)大阪府(1314㎢)などに比べ格段に広いことがわかります。また、地震の被害により海岸部は地盤が下がっていて、かさ上げしなければ使用不能ですが、がれきはそうした地域を中心におかれていることなども知られてはいません。

先日の議会質問でも指摘しましたが、地震により、地盤が下がり、そのままでは使用できず、場所によっては十数mとかなりのかさ上げが必要なことを女川町役場の方から教えていただきました。

仮置き場の一番奥にはコンクリートがらなどが置かれ、海岸部に近いところに混合ごみが置かれていました。
東京都に持ってくる女川町のごみは10万トンですが、残りのほとんどはかさ上げに使うそうです。しかも、それだけでは足りず、かさ上げの土を確保するために山を切り崩す予定だと女川町担当から説明をいただきました。(資料2)

しかし、いずれにしても、土地利用計画(案)が策定されたばかりで、これから町民に説明し、意見を聞きながら合意形成を図っていくという段階で、どこをどのくらいかさ上げするかさえ決まっていない状況であることがわかりました。

現地で乗ったタクシーの運転手さんは、海岸近くに住んでいたそうですが、津波の心配があるうえ、地盤が沈下しているため同じところには戻れないと話しておられました。実際、その場所は、土地利用計画では公共施設が設置される場所になっていました。
土地利用計画案が計画として定まるためには、場所や面積など細かい評価や補償が定まったうえで合意が必要ですが、女川町からはまだ何も言われていない状況だということでした。

災害がれきの処理とひとくちに言いますが、がれきの撤去だけではなく土地利用計画と密接にかかわっているところが阪神淡路と大きく異なっているところです。
がれきを撤去したらそこに元通り家や工場を建てられるわけではないのです。
はたして、こうした時間軸も含めた現地の状況や、町全体に占めるがれき置き場のボリューム感というものをどこまで把握して広域処理を選択しているのでしょうか。

時間軸や場所とともに考慮に入れなければならないのがコストの問題です。現地では土地利用計画も定まっていない状況で、がれき置き場すべてを緊急に撤去しなければならない状況にはありませんでした。それどころか、現地で稼働していたのは、広域処理の粗選別上だけで、埋め戻しに使うと説明していた44万tのうちの10万tを除いた34万tのがれきについては何も動いていない状況でした。女川町の担当は、東京都に持ってくる以外のごみのほとんどは、土地造成のための埋戻しに使うと言っていましたが、埋め戻しさえ行っていない状況でした。

問題にすべきは、土地利用計画や復興計画が進まないことであり、すべてのがれき処理を緊急に行うことではありません。

逆に、急ぐことを理由に拙速に広域処理を行えば、輸送費などのコストがかさみます。
 特に、東京都に受け入れるがれきの選別場を見てきましたが、現地にはベルトコンベアのついた選別機が設置され、4つのラインで手選別が行われていました。
 がれきをベルトコンベアに乗せ、プラ・コンクリ・布紙・アスベスト・PCBなどを除いていくと最後には木くずが残ります。
 ところが、分別の済んだこの木くずにプラと布・紙類を混ぜ「一組の清掃工場の受け入れ基準」に合わせて東京都23区に運んでいることがわかりました。
 選別のためのプラントを建設し分別のための費用をかけているにもかかわらず、それをまたブレンドして燃やすとはなんと無駄なことをしているのでしょうか。
 ごみの世界では、分ければ資源、混ぜればごみと言います。
いったん、分けて木質資源になったものをなぜ、また混ぜてゴミにしてしまうのか、理解に苦しみます。
 がれき処理が目的でなのではなく、東京都に持っていくこと=広域処理が目的であることは明らかで常軌を逸しています。

 常軌を逸しているといえば、広域処理が進まないからと言って、がれき広域処理のための広報宣伝費に39億円の予算をつけてるのもまた異常です。
政策ですから、なすべきは、政策の優位性を理解してもらうために情報公開を進め、説明責任を果たすことです。
 これらの処理費用はすべて私たちの税金により賄われるわけですが、広域処理ならいくらかけても良いということでしょうか。

一方で、こうした広域処理を可能にしているのが清掃工場や廃棄物処理施設の余力です。

 今回の広域処理にあたり、東京都は環境省からの事前調査で一組、多摩市広域連合、民間処理施設の一日当たり処理可能量について回答しています。
ここでの回答が、現在までのところ、その通りに進行しています。民間処理施設での引き受けについても公募はしているものの、環境省の受け入れ調査が、事前調整機能的な役割を果たしているように見えます。

災害がれきの広域処理は、「きずな」や「支えあい」という言葉で飾られていますが、お金の流れや実態からは、過剰設備投資による余剰能力を稼働できる絶好の機会であり、稼働しなくても支払わなければならない固定費をカバーしてくれる特需という側面が見えてきます。

さて、この広域処理にあたり、東京二十三区清掃一部事務組合は、一日受け入れ可能量を150トンとしています。

年間54750トンを受け入れられるとしていますが、これを現在の清掃工場の年間稼働日数と余力で割り返すと、日量200tを処理する清掃工場分のごみにあたります。
災害廃棄物受け入れに際して、この間、清掃工場の焼却能力への影響するといった議論は一部事務組合からも、区長会からも一切ありませんでした。つまり、現時点で、200tの炉=ちょうど渋谷清掃工場程度の炉がなくても23区のごみ焼却は賄えるということを示しています。

【②】災害廃棄物広域処理の背景にある清掃工場の余力という大きな問題

【③】災害廃棄物広域処理の背景にある清掃工場の余力という大きな問題