原発事故における政府の対策をみていると、これまで私が扱ってきたアスベスト対策と余りに共通する問題が多く、根源が同じであることを実感します。
先日の「中央環境審議会:石綿飛散防止専門委員会」において、問題のある事例として、下丸子都営アパートのアスベスト対策について報告がありました。
「東京都」が所有し、現在東京都から管理の指定を受けた「東京都住宅整備公社」が発注し、「大田労働基準監督署」と「大田区」が確認している事例において、どこが問題であると指摘されているのでしょうか。
「公」が関与していながら問題が指摘されるアスベスト対策ですが、安全性を確保するために、何をすべきでしょうか。
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下丸子都営アパートの天井には、飛散性アスベストである「ひる石」が使用されていて、建物の解体や改修にあたっては、飛散性アスベスト=レベル1としての対応が必要です。
ところが、下丸子都営アパートの改修工事において、法令で定められた飛散性アスベスト対策をとらずに行う可能性が出てきました。
この下丸子都営アパートについては、2006年から安全なアスベスト対策を講じるよう、住民・アスベストセンターとともに、東京都と東京都住宅整備公社に働きかけてきています。
安全な工法について確認を重ねてきましたが、十分な回答を得ることができていません。
◆行おうとしている工事◆
老朽化した下丸子都営アパートの「スーパーリフォーム」「耐震補強工事」「アスベスト封じ込め工事」の3つの工事を行おうとしています。
◆工事で問題になっているアスベスト対策◆
工事では、天井に使用されている飛散性アスベストを封じ込める際に、国土交通省から認可されていないアスベスト封じ込め薬剤を最初にアスベストに塗布し、その上から認可している薬剤をさらに塗布し「封じ込め」を行います。これについて、以下のような疑問が生じます。
①石綿障害予防規則に規定する「封じ込め工事」であるにもかかわらず、作業労働者はヘルメットと簡便な半面マスクを着用しているのみで、それ以外には「集じん・排気装置」「負圧」「クリーンルーム設置」などアスベスト対策を行っていないこと。
②認可されていない薬剤について、現在申請中であること、試験により効果が認められたことをもって大田労働基準監督署と大田区が使用を認めているが、国が認可する薬剤について、申請中であるにも関らず、所管ではない大田労働基準監督署と大田区が薬剤を認めることができるのか。
③封じ込めたひる石に、天井ボードをはるため、ドリルで穴をあけたりアンカーを打ちこんだりすること。
上記ような点につき、確認してきましたが、十分な回答が得られないまま、工事が始まったことから、都営アパート住民が弁護士を代理人に、内容証明を送付し現在、工事の安全性についての確認を行っているところです。
本日、16時より、都庁記者クラブにおいて、記者会見を行いますので、詳細についてお知りになりたい方は、ご出席ください。
◆既に工事を終えたひる石を使用している都営アパートのアスベスト対策はどうだったか◆
東京都は、既にひる石を使用している下丸子アパート以外の全ての都営アパートの天井にボードを張ってしまっています。
これらの工事についても、ドリルで穴をあけ、アンカーを打ちこんだ可能性を否定できない状況です。
東京都、東京都住宅供給公社と住民、アスベストセンター、弁護士が加わり、何度も話し合いを続けてきましたが、結果として、東京都は当初決めた、これまで他の都営アパートで行ってきた工法と何ら変わらない工法で天井ボードはりを行おうということでしょうか。
font size=’5′>◆なぜ、東京都はアスベスト=ひる石を除去しないのか:地震で飛散を防げない封じ込め◆
一方で、この工事において、納税者である都民として感じるのは、なぜ、ひる石を除去しないのかという問題です。
スーパーリフォーム工事など、今回の一連の工事により、住民はその工事期間、住居を移転します。
せっかく、居住者がいない状況なのですから、いずれにせよ、解体時に行わなければならないアスベスト除去工事についてもこの機会を利用し行うべきであると私は考えます。
阪神淡路大震災においても、また、東日本大震災においても、地震により倒壊した建物からアスベストが飛散していることが大きな問題になっています。
封じ込め工事で安全を確保することはできないのです。
都が行おうとしている封じ込め工事では、地震の際の被害を防ぐことはできません。
除去費用は、今支払っても、解体時に支払うことになっても負担しなければなりませんが、「封じ込め」工事をしなくて済む分、費用もかけずにすみます。
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これまでの大田区におけるひる石(=飛散性アスベスト)対策