予算執行に当たり、何点か意見・要望をさせていただきます。
地方分権改革も第二期に入っていますが自治体側から見れば、権限・財源の移譲ともに不十分で道半ばであると言わざるを得ません。
地方分権が進まない理由として、最後の自治省の事務次官として務められた二橋正弘さんが、東京市政調査会発行の「都市問題」2008年9月号において、中央省庁が地方を信頼できないから任せられないということをコメントしています。
内閣地方分権改革推進室も自治体が、「適切な判断や財産権の制約」「公共性の担保」「需要の判断」「利用者の生活安全」「質の確保」が困難であると決めつけ、事務権限移譲に反対しています。
現在の、国が地方に一律のメニューを押し付けるしくみのままで、市民の生活課題を解決し得なくなっているのは明らかであるにもかかわらず、現状に固執する国の姿勢には、大きな問題があります。
しかし、自治体側としてなすべきは、国に、こうした口実を与えるすきを作らず、国の疑問視する「公共性の担保」「需要の判断」「利用者の生活の安全、質の確保」について、住民からの信頼を勝ち得るしくみを自治体自ら率先して構築することに他なりません。
「行政手続法」は、
1 申請の公正な処理の確保のため、判断の基準をできるだけ具体的なものとしてあらかじめ用意し公にすること。
2 行政の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであること
により、行政運営の公正の確保と透明性の向上を図ることで国民の権利利益を保護していくことを目的に成立しました。
「区民が主役」の区政実現のためには、この法律の規定により定められた、大田区の行政手続条例の趣旨にのっとり区政運営がなされることが基本です。そして、それが、結果として分権に後ろ向きな国に口実を与えないことになるのではないでしょうか。
大田区立特別養護老人ホームは、区が定めた優先入所基準により、優先的入所が行われています。
しかし、病院からの申請者を住居がないと読み替えるといった公になっていない基準により入所が行われている実態は、改善する必要があります。
先般の利用料金制を導入する条例改正により、今後、入所の承認や取り消しの権限を区だけでなく指定管理者にも持たせることになるため、入所事務はより公正・平等に、また、適正に行われなければなりません。判断の基準をできるだけ具体的なものにし公にするという行政手続法の趣旨に従った優先入所のしくみの構築が求められます。
一方で、清掃に関わる費用は、焼却費用、ごみ・資源双方の収集運搬費用とも増加の一途をたどっています。
しかし、資源が増えたから増額補正をするといった言葉だけで資源回収のデータは示さず結果の説明にとどまり、その根拠があいまいです。
特に今回の質問により、資源化事業が、プラスティック焼却に伴う雇上会社の代替業務であった重大な事実が、初めて明らかになりましたが、詳細は示されず、依然不透明なままです。区による早急な情報提供が求められます。
また過去の議会答弁で報告が約束された、23区が共同出資して設立した清掃工場の電力を売買するための新会社の経営内容なども未だ一切報告がありません。清掃事業にかかわらず、求めなければ基本情報が提供されない現状を改善し、十分な資料提供に基づく、意思決定過程の情報公開など、説明責任を果たした行政運営が必要です。
地方自治法により、「区民の義務を課し権利を制限するには条例によらなければならない」と定められていますが、大田区には、事務処理基準や手続きにとどまらない区民生活に関わる非常に数多くの要綱が存在します。
今回、区は、要綱の公開について取り組むと答弁しましたが、職員間の公開にとどまらないすべての要綱の区民への一日も早い公開を要望します。
地方分権は、国から地方自治体への権限の委譲を意味しますが、それが、首長や議会への権限移譲にとどまることなく、更なる市民への分権により名実とともに「区民が主役」の区政が実行されることを要望し賛成討論とします。