マニュフェストを掲げ当選した首長は、そのマニュフェストの実現を有権者に信任されたものとして推し進めようとします。
しかし、全ての政策に賛同した有権者もいれば、良し悪しはあるものの、総合点でと選択した有権者もいるでしょう。また、政策も時間の経過とともに、修正していかなければならない部分も出てくるでしょう。
首長は、投票した有権者の中で最大多数の支持を得ていますが、他の候補者を支持した有権者もいれば、投票しなかった有権者もいるのです。
政策を提案し、議員も含めた市民と議論し、決定していくことにこそ、民主主義の基本があるのではないでしょうか。
一部自治体の首長の動きがイエスマンだけを議会に集めようとしているのだとするならば、民主主義による市民政治とは大きくかけ離れたものになるでしょう。
■今こそ議会改革を■
こうした、首長から挑戦状を突き付けられているとも言うべき状況の中、それでも、予算を可決できるのは議会しかありません。国から分権された権限を首長がほしいままにするなら、分権の意味はありません。
議会本来の持つ条例策定、行政のチェックといった機能を取り戻すことにより、地方自治体経営を健全にすることが、これからの地方主権時代には何より求められます。
しかし、行政とのなれ合いで議会内部にその権限をとどめるなら、真の分権とは言えません。 住民に最も身近な自治体が、住民の意見を聞きながら、その意志を反映させながら、政策実現していくことにこそが分権の本来の意味です。
先進自治体の中には
・住民の中に入っていき、議会として議会報告会を行う。
・議案提案前に議会として住民意見を聞く。
・インターネットによる議会・委員会中継など審議過程を透明化する。
・委員会などの傍聴資料を配布する。
・総合計画も議決事項に加える。
・質問の全文事前通告をやめる。
・議案の事前審議をやめ、議会で実質的な政策の検討と決定を行う。
など様々な試みが行われています。
■自治体政治に関心を■
前回の大田区議会議員選挙の投票率が約46%程度。昨年の衆議院議員選挙では、3区と呼ばれる大田区の北側で約69%でしたから、1.5倍にもなります。いかに区政に、区議会に関心が薄いかがわかります。
これが如実に表れているのが田園調布地域。区議会議員選挙では約35%の投票率でしたが、昨年の衆議院議員選挙の際には約71%と投票率が2倍も違っています。
確かに、介護保険も保育園も障害者自立支援法も国が定めた法のもとに行われていますが、実際の運営主体は大田区です。
特養の入所基準も、保育園の待機児対策も、緑地の保全などのまちなみも、ごみの分別も・・・区の独自政策によって決められていくものです。
分権の目的は、権限を生活の現場におろすことにあります。
生活課題を解決できる分権にするためには、議会改革が欠かせません。
*23区は東京都の内部団体的位置づけにあるため、自治体の固有財源である固定資産税や法人住民税がいったん東京都に吸い上げられ、「財政調整」という分配の仕組みによって23区に配分されるという特殊な事情がありますが、それは、また、別の機会に改めて。