地方自治体で税金が余っている衝撃、税金が余っている理由に思う「やっぱり」と「なぜ」

家計と違う大田区などの財政

大田区で税金が余っています、とお話しするとみなさん驚かれます。

節約していると思ってはいないものの、たぶん「無駄遣いして」足りないのだろうと思っている方が大半だと思います。増税増税という議論も耳にタコができるほど、聴いています。

ところが、大田区では税金が余って貯まっているのです。

しかも、この間、貯金が急激に増えています。

ただ、理由を聞けば、やっぱりと思われるでしょう。

社会保障のための増税分を社会保障に使っていないからです。

だから、減税と私は言っています。

 

今日はそこから一歩進めて、では、なぜ、税金を余らせて貯めているのでしょう?

奈須りえが考える、
大田区はなぜ、税金を余らせ貯めるのか

 

【1】社会保障のための増税分だから

社会保障のための増税分だから、ほんとは社会保障には使えません。
だから、いったん余らせて、基金(貯金)に貯めて、
・蒲蒲線や蒲蒲線のまちづくり
・羽田空港跡地開発
・刻教施設建設
などに使えるようにしているのです。基金は特定目的基金と言って、積んだ目的にしか使えない「口座」があります。

いったん積み立てると、社会保障のための増税分が、蒲蒲線や羽田空港跡地開発の財源に変わるのです。

 

【2】すぐ使わないから

しかも積み立ててから、すぐ使うわけではありません。
羽田空港跡地開発のために使った165億円は、社会保障のための東京都からの交付金割合が変わった年2007年に60億円、翌年、2008年に80億円積み立てて、それを10年後の2018年に引き出し使いました。

  平成30年 第4回 定例会-11月29日-02号 (gikai-ota-tokyo.jp)

 

私たちが2007年と2008年に納めた税金を余らせて、10年後の2018年に使っています。

 

財政の単年度主義という原則から大きく外れていますね。

2007年に税金を払った方は、引っ越したり、亡くなったりしていて、大田区にはいないかも知れません。
使えないインフラのために、税金を払わされているのです。

これを許したら、税金はいくらでも取れますね。

そのうちに、100年後の月面開発のために増税すると言い始めかねません。

 

自治体財政は家計とは違います。

 

一番の大きな違いは、需要=必要から収入(税)が決まるということです。(家計は、収入が決まって、そこから支出を決めますね。)

 

何故かと言えば、何が必要か、国民の声で決め、その財源である税もまた、国民の声で決めるわけです。

必要も財源も政治(私たちが選んだ代表である議員=議会)が決めるのです。

勝手に決められない仕組みになっているのです。

 

ですから、いま、税金が余っているというのは、本当におかしな話です。

 

必要分の見込みが少なすぎたか、増税し過ぎたか、どちらかのはずなのです。

 

そこで思い起こされるのが、三位一体改革です。

地方自治体に税収を増やす増税などは、小泉構造改革の地方分権で行われた「三位一体改革」でやったことです。

ところが国は、地方分権だから地方が自分で税金を稼ぎなさいと、地方税を増税などしたにもかかわらず、国庫補助を復活させています。

二重で、自治体に税収が集まるようにしたのです。
当然、社会保障のための増税分は余りますから、貯まっていきます。

 

国が、地方自治体に税金が余るしくみをつくったという風には言えないでしょうか。
そして、ほとぼりが冷めたころに、貯めた基金(貯金)を使い始める。

国は地方に何らかの文書で、余った税金の使途や、貯め方などについて、文書で通知していないでしょうか?

例えば、いま、全国の自治体で、国債など債券を買って利息を稼ぐ動きが加速しています。
これも、国との関係の中でやっているように思えます。

三位一体改革は、結果として、地方自治体発の第二の公共事業財源確保になっています。

選挙が落ち着いたら、調べてみようと思います。

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国や地方と企業や家計は違うというのを、財務省がコラムに書いていました。
HPに載っていたのですが、いまは削除されたようです。

掲載されていた時に、議会で取り上げたので、ここにも掲載しておきます。

 

 

財務省のコラム 

 

「市場経済では、企業であれば企業の売上げ、家計であれば賃金収入、 というように、収入がまず決まり、その収入にもとづいて支出を決める。 というのも、企業の売上げは生産物市場、賃金収入は労働市場というように、市場が収入を決めてしまうからである。

そのため市場経済は、「量入制出りょうにゅうせいしゅつ(入るを量って出ずるを制す)の原則」で運営されている。

  ところが、財政では収入が市場によって決められるわけではない。

財政は市場メカニズムによってではなく、政治過程で決定されるからである。そのため必要な支出を決めてから、それを賄う収入を決めることになる。政治過程で収入を決めるには、必要な支出が決まらない限り、収入の決めようがないからである。したがって、財政は「量出制入の原則」で運営されることになる。