人口減少、少子化、高齢化などの社会変化に対応するために大田区が財政、社会保障、施設整備、都市計画などについてなすべきこと
生活者ネットワーク奈須りえです。
一定の基準を決め、受給対象を線引きしていながら、そのラインに入っている区民が希望している公共サービスを受けられない。
こうした問題を生じさせる背景には、合理的政策根拠に基づき優先順位をつけられない、あるいは、いったん始めてしまった事業はやめられないという極端に利益配分に特化した、日本の「既得権を守る政治」の存在があると考えています。
高度経済成長期には、社会インフラを整えることが政治の大きな課題の一つだったわけですが、一定のインフラが揃った今も更なるインフラ整備が政治の大きな役割になっています。
大田区においても、作り続けてきた既存の公共建物や道路・公園・橋などが大田区の財政圧迫要因になっていながら、空港跡地には産業交流施設建設、蒲蒲線、蒲田、大森駅前開発と次々と新たな公共インフラ需要を作り出しています。しかも、平成25年度予算には、本来優先しなければならない既存の公共インフラ整備の安定的な財源確保のための基金積み立ては無く、まだ事業化さえされていない蒲蒲線の基金が積み立てられているあたりにも新たな需要にばかり目が向いていることがよく表れています。
右肩上がりの経済成長とそれに伴い税収が増えていた時代には、それでも、増えた税収を新たなニーズに投入することが可能でした。人口の増加による税収の自然増を見込めなくなっている現状において、私たちは、これまで行ってきた「何か」をあきらめ、新たな行政需要を選ぶと言った「優先順位」を付けなければならない時代に入っています。
蒲蒲線を作り、蒲田駅前広場を整備し、大森駅前の開発を行い、しかも既存の公共インフラ整備も公共サービスの維持もして、子どもたちの世代は、どの程度の税や鉄道運賃などによりそれらを負担していくのでしょうか。公共インフラが私たちに与える「利便性」や「快適性」「安全性」などについて、どの程度の税負担までなら支えられるのか・容認できるのかという「合意形成」が必要なはずですが、どこにもそうした検討や議論の場はありません。
こうした考えに立ち蒲田グランドデザインについての審議において質問したところ、大田区は、 「財政が先か事業が先かといった考えはとっておらず、予算のフレームもない。必要かどうかというニーズでしか考えておらず、それは、都市計画決定の場において判断される。補助を申請する先である国や東京都も事業が必要であると認めれば補助が出る。だれがこれを認めるか国家的な予算の中でどうやっていくのかは、そちらで判断していただく」 と答えています。
事業の発意元である大田区は、都市計画審議会や国が必要と認めたからと言いたいのがわかりますが、国からみれば、自治体から必要だと言われたから補助を認めたという構図で、誰も財政フレームに責任を持たないしくみであることがわかります。
私はこれをキャッシングサービス付のカードを渡されている子どもと、それを支払う甘い親の関係に例えています。ここでの子どもは自治体で、親が国にあたります。
こうした財政持続性という視点の欠如した公共インフラ整備ニーズが、社会構造変化に伴い生じている保育園待機児400人や特別養護老人ホーム待機者1600人と言った新たな社会保障ニーズに対応できない結果をまねいていると私はとらえています。
第四回定例会での生活者ネットワークの公共サービス提供における公平性の視点からの提供できていない保育園や特別養護老人ホームなどの問題に対し、区は、 「課題と認識し、努力しているが、多額の財源を必要とするばかりでなく、用地の取得など難しい課題があり全員に施設サービスを提供できるというわけにはいかない。」 と答弁しています。
そこで、うかがいます。現在大田区が提供しているサービスを受けられない区民に対して、現状を課題と認識しながら、長期間にわたり放置し、その理由を多額の財源が必要だから、たとえそれが、区民のニーズに対してほんの一部、わずかであっても目標値を定めていれば、それが「計画的」ということで許されるのでしょうか。 杉並区では、保育園に入れなかった区民の行政不服申し立て直前に認可保育園定員を60人増やしています。区が、待機児を出す行政の在り方に問題があることを認めたようにみえます。 杉並区の行政不服申し立てをうけ、長期間にわたり、大田区が、保育園待機児や特別養護老人ホーム待機者などサービス提供における不公平を放置している問題について、あらためて今後の区の整備方針をうかがいます。
また、保育園の待機児をはじめ、高齢福祉における在宅支援や特別養護老人ホームなどの整備は緊急の課題です。国は、消費税10%の法律を可決する際に「社会保障」という言葉を使ったわけですが、全体での増収10兆円のうち、国は3兆で残りの7兆円は地方自治体に交付されます。国と地方の配分から考えれば、消費税はむしろ自治体において社会保障をどう整えるかという課題でもあるわけです。大田区は100億、東京都は2200億の増収が見込まれます。 私は税金の使い道の構造転換をまずはかるべきで、現時点で増税すべきではないと考えますが、自民党政権になりましたので、ほぼ導入が確実でしょう。導入されるのであれば、消費税増収分は都の増収分の支援も求めながら、転換できない少子高齢化社会に対応するための財源、子育て支援、高齢、障害、雇用、住宅などの社会保障の課題解決に使うべきです。
国の公共事業が減ったと言われている一方、地域自主戦略交付金に移行していたり、大田区の福祉費の割合が高いと言っても、土地取得と建設により福祉需要をまかなっているなど、必ずしも土木建設への税投入が減り福祉費が増えたからと言っても、少子化高齢化などの社会構造変化に対応してきているとは言えない実態もあります。
そこで、大田区の公共施設整備計画についてうかがいます。 策定時には、人口減少、人口構成の変化に対応して策定すると言っていた大田区公共施設整備計画ですが、私の議会質問により適正で持続可能な整備計画になっていないことが明らかになっています。
人口が減少すれば、現有資産をそのまま維持したとしても、区民一人あたりの財政的負担は大きくなります。ところが、大田区は、人口減少、人口構成の変化に対応すると答弁する一方で、 「大田区の2020年までの人口推計では、高齢化率が高まるが10代までの子どもの数は現在と比較してほぼ同程度が見込まれ、20代から30代人口も安定して推移すると想定されているので、高齢者福祉の充実はもとより、子育て支援や教育も、少なくとも現在とほぼ同様の行政需要があると考えている。」
という答弁が示す通り、現状の公共インフラを維持更新するという考えにたっていることがわかります。都市計画マスタープランでは、計画期間2020年までに人口1万人増を想定しています。
それでは、2020年までの人口推計がほぼ現状維持だからと言って、現状のまま、区長在任中既存の施設を漫然と更新するだけでよいのでしょうか。
長期的視野にたち区民生活を考えた施設整備計画を考えるなら、当然、将来の税収と、区民負担を考慮した計画策定が求められますが、これまでの議会や委員会答弁からも、また、施設整備計画や予算の策定、執行をみていても、人口減少と労働人口減少のという重要な視点は反映されていません。
子育て施設や高齢施設などは、今後も需要が増える部分もありますが、漫然と区が建て替えを繰り返せば、そこから大田区が掲げる耐用年数60年間は維持管理をし続けなければなりません。しかも、計画で2020年まで現状のままだった人口は既に減り始めており、実情に即した施設整備が求められます。
しかも、財政負担からも、民営化は絶好の機会ですが、大田区は、民営化した保育園の施設まで将来区が建て替えようとしています。
古川こどもの家も建て替え規模を大きくして、新たに行う事業はグループ保育ママですが、はたしてこの方法が最善でしょうか。学校施設活用も子どもの数や学級数が大幅に減っていながら、子どもが帰った放課後の学童保育活用でさえ、一向に進みません。たとえば、学校に学童保育機能を移転し児童館と保育園を合築して子育て支援の拠点とするとともに保育園の定員を増やす。出張所、ゆうゆうクラブ、文化センター、地域庁舎など地域のコミュニティー機能の見直しをはかり、子どもから高齢者までが集える施設の複合化を検討する。などの検討はされたのでしょうか。政治的に厳しい判断を求められるからと言って、施設の有効活用を先送りすることは、結果として、緊急の課題である、保育園や高齢福祉などの優先課題を先送りさせる要因にもなっています。
合築や複合化、既存施設の有効活用はお題目だけで、進まず、漫然と建て替えを繰り返すだけでなく、(建て替え期間中も施設を利用し続けるため)仮の施設をリース契約することが常態化しています。(保育園は、閉鎖すれば区民が困るというのはその通りですが、1園改修期間閉鎖できないほど待機児がひっ迫していると言うことです。待機児が400人もいることにより、大切な税金は、待機児対策でなく、こうしたモノに投入されていくことになっているのです。以前は、授業を工夫すること、近隣体育館を借りることで対応していた体育館建て替えですが、今や、校庭を使えないようにしてでも体育館仮施設を建設することが優先されています。) 100年建築という発想もどこへいってしまったのでしょうか。
10年間の施設整備計画の前期5年が終わりますが、たとえば公共建物約550、延べ床面積約120万平米を、耐用年数60年、大規模修繕15年ごとという区の方針でおおよそ試算してみると、毎年10施設、延床面積平均で20,000平米の建て替えと、40施設の大規模修繕が必要というあらあらの試算ができます。
施設整備計画前半5年で行われた解体数が23で、平均的に行わなければならない年10施設の半分程度しか改築されていません。特に建て替えの集中するのが、2020年ごろで、それ以降の集中的な財政負担を軽減するためには、前倒しでの施設の延命や更新が集中する施設の合築や転用など大胆な取り組みが必要です。しかも、今ある施設改修のための計画的な基金積立もできないのに、区長は、蒲蒲線や跡地開発などに取り組もうというのです。
このペースでいけば、間違いなく、増税か、他の福祉サービスを中心とした大幅な削減か、公共施設が廃屋になるか、最悪財政の破たんといった道が待っています。
施設整備における、玉突きに改修を行っていくことも、これまでのところ、新たな土地を購入して行うなど、莫大な財政投入があって初めてなりたつもので、周辺に波及せず、公共施設の有効活用からの事例はみられません。合築や複合化どころか、合築していた施設が分かれているものもあります。
そこでうかがいます。人口減少に対応した、公共施設の整備について、区長は、課題はなんだとお考えですか。区長の在任期間には人口がほとんど減らないからこのまま更新するという考えなのでしょうか。持続可能な大田区政からみた施設整備を行うべきと考えます。3期までは在職できるという多選禁止条例をご自身に限ってだけ策定していますが、困難は先送りし、任期中は取り組まず、任期後、一気に老朽化した施設が問題になってもかまわないというのでしょうか。具体的な、施設整備計画後期に、人口減少社会に対応した整備指針を示せますか。
一方で、人口減少社会におけるインフラ整備は公共分野だけでなく、民間においても課題が残ります。 これまでも繰り返し指摘していますが、住宅政策に課題は残るものの、一般的に言えば、住宅の量は既に足りており、量から質の時代へと転換しています。
ところが、一連の規制緩和により、従来よりも高く、規模の大きな建築が可能になり、大田区内では、いまだに建築紛争があとをたちません。
繰り返される紛争に対し区は、現行の建築基準法では合法であり、区として建築をやめさせることはできないという言葉を繰り返してきました。
しかし、先進的自治体は自治体独自の取り組みにより、高さの規制を行ったり一定のまちなみに誘導したりということを行い、この量から質への転換における質をどう高めるかという具体的な取り組みを行ってきています。大田区も、まちづくり条例を策定し、今回ようやく景観条例を策定するに至りました。これまで、私は、区内各地でおきている紛争から建築に係る問題についてみてきましたが、たとえ、現在のまちづくり条例がその時存在し、今回審議される景観条例があったとしても、これまでに起きている国分寺崖線の貴重な自然環境や池上本門寺を中心とした日本の伝統的寺町の景観など守ることはできません。
2015年まで増加を続けると予測してきた東京都ですが、予測を大きく前倒しし、昨年初めて人口が減少しました。大田区では、死亡数が出生数を上回る自然減が大きく増えただけでなく、マンションを建設による区内転入では人口減少に歯止めがかからなくなってきています。高齢化による大幅な人口減少にも関わらず、新規建設を繰り返す結果、空き家も増加しています。 人口減少社会における、量から質へのまちづくり政策の転換が求められます。
そこでうかがいます。
大田区は、まちづくり条例においても景観条例においても策定することをもって一歩前進とし、課題を先送りしてきています。現在起きている建築紛争から区民の生活環境や景観を守ることについての課題はなんだと考えていますか。日本でも有数の寺町である池上ですが、開発により地域の環境と景観が乱されつつあります。池上本門寺周辺の伝統的なまちなみを守るには、まず本門寺周辺を景観形成重点地区と指定する必要があると考えますが、それも含め いつからどのように解決しようと考えているかお答えください。