『総合評価一般競争入札制度』と障がい者雇用@大阪府の事例から

大阪府では、
障がい者母子世帯の母高齢者など特定の課題を抱えている人たちに対し、それぞれの自立した生活を支援していくという視点が不可欠」
であるとして、福祉部局だけでなく、あらゆる分野において、自立支援を進める「行政の福祉化」に取り組んでいます。
特に、雇用・就労につなげるための取り組みですが、雇用を生み出すための事業を立ち上げたり予算をつけたりするのではなく、既存の事業における点検、公務労働分野、市町村への働きかけなどを通じて326人の就労につなげています。
私が、かねてから大田区に提案している事業者選定における「
総合評価方式」あるいは、「政策入札」、「行政におけるCSR」を行っている大阪府の取り組みについて視察してきました。

 

 


 

先日、知的障がいの雇用率が7割を超え大田区に本社がある「日本理化学工業」の取り組みついて大山泰弘会長のお話しをうかがってきました。

 

そこで大山会長が話された、作業所に行けば、年間500万円×40年間で2億円の税金が投入されるが、その方たちが、仕事に就くことで、税金を支払う立場になっていただくことができる。

 

しあわせは以下の4つ

 

①人から愛されること

②人からほめられること

③人の役に立つこと

④人に必要とされること

 

により感じられるが、そのうちの①以外は、働くことにより得られる。と話されたのが、心に残りました。

 

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大田区においても、障がい者雇用は行われています。大田区自身の法定雇用率は、数字上は達成されているものの、以下のような課題があると私は考えています。

 

①雇用率を満たしているのは身体障がいがほとんどで、他内部障がいなどで、知的障がい等は含まれていないこと。

 

②民間委託や指定管理者制度など、行政の外部化が進む中、公を担うのが「公務員」だけでなくなっているにも関わらず、新たに公を担う「民」に対して障がい者雇用等を求めていないため、結果として、割合は達成しているものの障がい者雇用数としては減っていること。

 

③数の多い、段階の世代の大量退職により、障がい者も退職したため、かろうじて法定雇用率は守れているものの、雇用率は低下していること。

 

一方で、大田区は、広い意味では、民間に対して、法定雇用率を守っていただく立場にありますが、こうした現状は、民間への取り組みをお願いする立場として必ずしもほめられたものではありません。

 

そこで、私が提案してきたのが、事業者選定において、価格だけではなく、雇用や環境問題、地域貢献など大田区の政策課題への取り組みを評価する「総合評価方式」「政策入札」を提案してきています。

 

 

これを実践しているのが大阪府です。

 

大阪府では、

 

①入札において、価格だけを評価せず、例えば価格評価を1/2、ほか、公共的分野での評価を1/2とし、そこに障がい者、母子家庭などの就職困難者の雇用に関する取組、環境問題への取り組みや研修、苦情処理を評価項目として事業者選定を行う。

結果、平成20年度現在、府内施設において、179人の雇用を確保するとともに、就労訓練の場として88施設、106名の障がい者が就労訓練を行っている。

 

②①が公共から受託する分野における取組への評価である一方で、企業として法定雇用率がどの程度であるかをポイントとして評価項目に加える。法定雇用率を下回る場合は0点。法定雇用数を同数の場合3点。上回る場合7点など。その際、直近一定期間の雇用状況をチェックする

 

③大阪府の各部署において、知的・精神障がい者、母子家庭の母親などを受け入れられるかどうかを点検し非常勤で受け入れている平成21年度現在、知的障がい者39名、母子家庭の母親34名、精神障害者18名雇用している。

 

授産製品(作業所で障がい者が作った製品)の購入。114件、1,931万2千円。

 

⑤府内市町村に総合評価入札制度導入を働きかける平成22年度6月末時点で12市が導入。

 

⑥ほか、IT関連のアウトソーシング97件、2,617万3千円指定管理者の選定における提案により、64施設で新規雇用74名。等の実績を作ったということです。

 

 


 

 

 

特に、特徴的なのが、公共施設の清掃を就労訓練の場と位置づけ、そこで、知的障がい者が数か月間最低賃金の1/2程度を得ながら、研修を終えると民間のビル管理会社に就労させるしくみです。

 

民間のビル管理会社は、大阪府が「総合評価方式」を採用していて、障がい者を雇うことにより、大阪府からの施設管理業務を受託しやすくなることを知っていますので、積極的に雇用しようとします。

 

一方で、ビルメン業界の実状をみても、清掃業務にあっている障がい者にとっては理にかなったシステムであると感じました。

 

ビル管理業務の市場規模は3兆5千億円以上で、そのうち、8%程度がビルメンテナンスに充てられいるそうです。そこには、約200万人の雇用が存在していますが、毎年、10%程度は辞めていて、常に、雇用ニーズが存在しています。

こうした背景に、障がい者雇用を評価し、それを達成した企業に公共参入のチャンスを広げるしくみとなっています。

 

大阪府では、清掃業務について完全な電子入札(大田区の場合、入札に”区内”を条件とすることがあります)を行っているため、全く聞いたことのない事業者が受託することもあるそうです。現実問題として、清掃業務のために通勤できる方(障がい者含む)を雇用し事業を行わなければなりませんから、地域に密着していることは守られていると言えるのではないでしょうか。