大田区の大田区の要綱行政の課題について〜障がい者サービスなどの事例から〜

第一回定例会一般質問

「法的根拠や基準が明らかでない大田区政執行の課題について」

 自治体運営は、首長や議会、行政職員のの意志で運営されているのではもちろん無く、法律や条例に従い運営されています。
 そして、その条例を制定するのは、議会(=住民代表で構成されている機関)の役割です。
 しかし、現実には、執行機関である行政が、議会の権限の及ばないところで定め(つまり、住民の意思が反映されずに)執行されているものがあります。

 全てにおいて、議会が関与するのが現実的でないとしても、どの範囲まで認められると考えればよいのでしょうか。

【地方自治法の定めによる自治体の権限の根拠】

 地方自治法第14条は「義務を課し又は権利を制限するには、法令に特別の定めのある場合を除くほか条例によらなければならない」と定めています。
 権利義務にかかわる自治体のルールは議会の議決によらなければ作ることができないという意味でもあります。

【地方自治体の現場、特に大田区では・・】
 しかし、現実には、まちづくりにおいて「開発指導要綱」などで対処してきた経緯もあり、大田区においても数多くの要綱が存在しています。「行政手続法」や「地方分権一括法」の制定により、要綱が議会の議決を必要とする条例になっていくと期待されましたが、進んでいないのが現状です。

 大田区のまちづくり推進部の「要綱」「要領」「細目」「指針」「基準」などは、202にもおよび、申請書まで含めれば実に厚さにして20㎝以上の分量になります。まちづくり推進部に限らず、条例や条例施行規則によらないこうした区長の裁量で定める「要綱」などで施策を執行している事例は少なくないはずです。

【過去の議会答弁からみた大田区の要綱行政の実態】
 平成18年3月の予算委員会において、要綱もホームページに載せてはどうかという質問に対して区は、「福祉のまちづくり整備要綱」や「開発指導要綱」は掲載していると答弁しています。しかし、これらは、法で公表が義務付けられている「複数の者を対象とする行政指導」に該当するため当然の公表であり、特段、大田区が要綱の情報公開を積極的に行っているのではありません。一部の自治体では、例規集に加え要綱もHP上で公開しています。

 同じく平成18年に、「要綱は各部局で制定し運用を管理していて総数を把握していない。」という答弁があります。こうした、各部任せの管理により、本来、要綱で対応すべきではないものが見過ごされてこなかったでしょうか。また、区民の目の届かないところで管理されているため、公平・公正な執行を妨げてはいないでしょうか。

 地方自治法は第138条の4第3項で「諮問調査のための機関は条例により設置しなければならない」と定め、条例の規定に基づかない委員への報酬や費用弁償は判例で違法とされています。
 しかし、大田区では要綱で対応している機関が少なくありません。

 予算案の概要40ページ(現在大田区のHPされています)に載っている「蒲田駅周辺地区及び大森駅周辺地区グランドデザイン策定に係る学識検討委員会」も要綱で設置されていて、要綱の6条には委員の謝礼が一時間1万円である記載されていますが、違法である可能性があります。

 また、要綱による一部負担金や協力金の徴収も、地方自治法228条に抵触しますが、大田区にはこうした要綱も見受けられます。

【障がい者サービスを事例に】

 一方で、「大田区重度身体障害者ガイドヘルパー派遣事業」は、平成14年に要綱で定められて以来、7年間継続している事業ですが、未だに条例として定められていません。
 まさか、議決が必要ないから、あるいは、区民の権利・義務としたくないから要綱で定めているのでは無いと思いますが、少なくとも長期間にわたり継続して行われている事業は条例化するべきです。

 またこの要綱には、派遣対象事由として「社会生活上必要不可欠な外出及び冠婚葬祭に加え関係団体の会合や余暇活動などの社会的参加のための外出」と記載されていますが、区民が日常目に触れる「障害者福祉のあらまし」には、余暇活動が記載されていません。事業を初めて知る区民は、余暇が対象になっていることを知ることができません。ここにも要綱行政による弊害が表れているとは言えないでしょうか。

 「あらまし」のこの部分を改定するとともに要綱を公表することでこうした不備も是正することも可能になると考えます。

 過去にやはり区は「要綱は、事務処理基準、事務処理手続きを定めているものである」と答弁していますが、実際には事務処理だけではなく各種補助金の支給要綱やこうした区民生活に関わる要綱も少なくないのです。

【要綱行政見直しのための提言】

 そこで、要綱への過度の依存を払しょくし、行政手続法に従い公正で透明な区政執行を行うため

 1 現在の要綱等を整理し、要綱・要領などで定める範囲の基準を決めること
 2 現在の要綱をその基準で見直し条例化すべきもの、条例化できるものは条例化すること
 3 そして、区民から見えないルールである要綱をHPや区政情報コーナーなどで基本的にすべてを公表するべきではないでしょうか。

 
なかのひと