十分な知識も無く、経験も無い人が除去作業をするということは、本人が被害者になる恐れと共に、周囲に被害者を広げる可能性もでてきます。本人が被害者になる可能性があるから、将来の発症に備え、いつどこで作業にかかわったかの記録を手帳でよいからとって置くようにと指導している事業者もありました。この事業者では、同時に、除去作業をおこなうことは、加害者になることもあるのだと強く指導しているということでした。
長年除去工事をしている事業者も、アスベスト除去現場は、高圧電流の流れる場や、取りにくい、暑い、暗い、狭い、高温多湿なところなど、一つとして同じ現場は無いうえ、よいコンディションの現場は1、2割しかないと言っています。
また、新規参入者が増加すれば、競争が激しくなり、工事単価が低くなることが予想されます。一部でダンピング傾向が現れはじめているとも言われています。工事単価が低くなれば、十分な工事ができなくなる恐れもあります。
そうした対策のためにアスベスト除去工事は分離発注すべきであるという指摘もありました。
事業者に係る改善策と共に、被害者になりうる人の疑問、不安にどれだけ応えられるかと言う、リスクコミュニケーションの視点も大切です。
工事の前に、被害者になりうる立場の市民が事業者とのやり取りをすることで工事の質もあがってきます。
平成17年7月に厚生労働省が、監督指導を重点的に行ったところ、5.5%が違反を犯していたという結果もでています。
今後は、第三者評価制度や、アスベスト Gメンの設置なども検討していく必要があるでしょう。
除去した吹きつけアスベストは、特別管理型処分場に持ち込むことが義務付けられています。現在アスベスト除去工事を受注している事業者は、処分場へのもちこみに二ヶ月かかるということでした。これから受注する事業者や、現時点で処分場や運搬の車の手配をしていない事業者のアスベストの廃棄処分も問題になってきます。緊急的に受注した企業がアスベストの処分場所を確保できなければ、不法投棄のも問題もでてきます。