その後の調査によって、次のような問題点が見えてきました。
洗足小池は釣堀として使用されていましたが、区は、釣堀使用をやめ、地域に親しまれる公園として整備することにしました。
しかし、
①長期間釣堀として使用してきたため、つり餌が落ちて池の水質が富栄養化し水質が悪く、池底にヘドロが堆積していること。
また、
②そのヘドロには、釣りで使用していた鉛のおもりがかなりの数落ちていることからしゅんせつした土の処理費用が高額になること。
のふたつの理由から、池の水をいったん抜いてヘドロをセメントで固化(固めてしまう)という工法を選択してしまいました。
ところが、池の水を抜いてしまうとヘドロが地表にでて悪臭を放つのではないかということで、区として防臭対策をとることにしたのです。
区は、「ミネラルオーシャン」という名称の石灰を主成分とする環境浄化剤を㎡あたり3kgも散布しています。9000㎡ある小池に実に27tもの石灰を主成分とする薬剤が散布されました。
その後の区の調査により、魚が死んだのは、モーターのついた舟使用して薬剤を散布したことにより、池の水が攪拌されたことによる酸欠死であることがわかりました。(確かにモーターによる水の巻き上げも酸欠の原因ですが、あの池に27tもの薬剤を散布すれば、薬剤の重みだけで水が巻き上げられたのではないかということも考えられます。)
これを、施行方法のミスによる魚の死亡として済ませてしまって良いのでしょうか。
私は、次のような点で問題があると考えます。
◆薬剤散布にモーターボートを使用することで池の酸素濃度を全体を低下させることが予見できなかったのか◆
この散布に先立って、大田区では複数の調査を行っています。
その調査結果には、池の浅い部分と深い部分とで酸素濃度が異なっていることが明記されています。かくはんすれば、池の酸素濃度が低下し、生物に影響を与えるであろうことが容易に推測できました。
しかし、専門知識を有するという理由で随意契約を行った散布業者も、また調査を委託した区もこの調査結果を活用することができず、多数の魚を死なせてしまうという結果を招きました。
いったい何のための調査だったのでしょうか。
こうした調査を元に決定した小池をセメントで固め池をプールにしてしまう工法そのものが果たして最善であったのか、工法選定そのものの有効性さえもが疑わしくなるところです。
◆この防臭対策選定は適正だったのか◆
区では、この防臭対策方法を随意契約によって選定しています。
選定された事業者は、最初に、本門寺の弁天池での防臭対策を区に申し出て区はそれを受け入れました。弁天池で薬剤散布について、区では効果は見られなかったとしています。
次に区は、呑み川での薬剤散布をこの事業者に行わせています。
しかし、ここでも成果はなかったと環境保全課は報告しています。
効果がなかったにもかかわらず、しかも、薬剤散布は、区が選定したものではなく、事業者からの提案だったにもかかわらず、区は、他の対策との比較検討なしに、小池の防臭対策をこの事業者と決定し、約1000万円の随意契約を締結しました。
事業者が売り込んできたから提案を受け入れるのであれば、早い者勝ち、あるいは、行政の恣意がそこに無いことをどのように説明するのでしょうか。
随意契約を締結する際に、その方法が良いという説明はいくらでもできます。
しかし、その方法、あるいは、選定した事業者が、取りうる他の方法や事業者に比べても優位であることをいかに客観的に区民に説明ができるかどうかが、随意契約選定が適正であるかどうかに関わってくるのではないでしょうか。
これは、この案件に限ったことでは無く、すべての随意契約の問題点としてもいえることであると思います。
今年の1月の活動報告で私は「入札適正化法」について取り上げています。そこで「随意契約の相手先の選定理由の公表」が、23%にあたる427市区町村で取り組まれていないことを紹介しました。
大田区での「随意契約の相手先の選定理由の公表」をいちどご覧ください。
随意契約の理由は第○号と書いてあるだけ。
たとえば、
第2号は、契約の性質又は目的が競争入札に適しないもの
第5号は、緊急の必要により競争入札に付することができない
第6号は、競争入札に付することが不利と認められる
第7号は、時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる
となっています。
大田区では、第2号の理由が多いことがわかりますが、何故入札に適さないかを公表することこそが大切なのではないでしょうか。
これで、随意契約の選定理由として区民が理解・納得ができる公表内容になっていると言えるのでしょうか。