アスベストの被害は、大きくは「労働災害」と「環境被害」のふたつにわけられます。
「労働災害」は、アスベストを取り扱ったり、アスベストが使われている環境の中で仕事をしていた方が、アスベストが原因の病気、例えば「石綿肺」「肺がん」「中皮種」などにかかる場合を言い、認定されれば労災保険が適用されます。
認定の要件やや補償に時効があるなど問題が残されていますが、労災認定されれば補償を受けることができます。
一方の「環境被害」は、アスベストを取り扱う工場などの近く住んでいたり、ご家族がアスベストを取り扱う仕事をしていてその洋服などの洗濯をするなどして被害にあった方たちで、2006年3月に新法が制定されようやく救済制度に手がつけられたところです。
「労働災害」も「環境被害」もアスベストを吸い込んだことで被害を受けられた方たちであるにも係らず、その補償内容は大きく異なります。
「労働災害」が適用されれば治療費や通院費も補償されますが、「環境被害」では補償されません。休業補償(労災が月額33万円に対し環境被害の補償は一律月額103,870円 )や遺族一時金・遺族年金(環境被害者には支給されない)などにも大きな差があります。
一方で、現在のところ、企業に民事的責任は認められていません。また国も賠償責任という視点で補償していません。
「環境被害」者に対してアスベストを取り扱っていた企業のうちの一部は救済金を支払っていますが、これも、(「石綿(アスベスト)を扱ってきた企業としての社会的、道義的責任」2006年5月3日毎日新聞より)として支払っているとされています。
そのため、企業の道義的責任への姿勢の違いや企業体力などを反映し、救済金の額も
クボタ 2500〜4600万円
ニチアス 1500〜3000万円
竜田工業 1000〜2000万円
など、大きく差があります。
支払っていない企業のなかには、既に会社が存在しないケースもあります。
大森南の「環境被害」を受けられた方たちを今後どのように救済していくのかは、これから大田区が行っていく問診を含んだ健康調査と工場周辺の疫学調査に大きく影響されます。
労災に比べ補償制度の遅れている「環境被害」者をきちんと救済するためにも、工場と周辺住民の健康被害との因果関係を明らかにする「疫学調査」を行わなければなりません。