徳州会から猪瀬前都知事が受け取った5千万円の背景からみた国家戦略特区の規制緩和と医療機関の淘汰再編

国家戦略特区の制度的な問題について指摘してきたが、やはり、暮らしに影響のある部分について具体的にお話ししないと、ピンとこないかも知れない。
そこで、今日は、医療機関の淘汰・再編について、徳州会から猪瀬前都知事が受け取った5,000万円の背景を想像しながら考えてみたい。

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少し前の赤旗に、猪瀬知事の受け取った5000万円に関連付け、徳州会がJCI(国際病院評価機構)認証支援についての疑惑を指摘した記事が掲載されている。

 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-12-06/2013120615_01_1.html
 
 記事には、国家戦略特区の提案書の病院一覧に徳田虎雄理事長(当時)と面会した病院が明記されていたとあるように、このJCI取得は、今後の医療の規制緩和に関係していることがわかる。

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 それでは、JCI取得によるメリットとは何か。
 
 JCIは、米国に本部がある国際医療機関認証(Joint Commission International)。JCI取得のメリットは、一般に、医療保険会社の保険支払いにあると言われている。

(以下2行引用 http://www.nikkeibp.co.jp/article/dho/20120615/312690/ )
日本の医療機関が国際認証機関のJCIで認証をうけるメリットは何か? 米国の場合には、保険の支払いに関連がある。しかし、米国以外の病院がJCIの認証を受けても、米国の病院とは異なり、保険会社から受ける直接のメリットは少ない。

国家戦略特区など、規制緩和による医療ビジネスの狙いは、高度医療・先進医療の提供による医薬品・医療機器の売り上げ増と、それに伴う医療費高騰に備えた民間医療保険(いわゆる第三分野)の普及にある。アフラックの郵貯銀行での窓口販売開始は、その伏線だ。

そして、ここに、上記のJCI認証が関ってくることになる。
今後、アフラックが保険を売るためには、規制緩和により、高度・先進医療が認可され、それを提供する病院が必要になる。JCI認証を受けた医療機関が必要になるわけだ。

一方で、日本の医療機関は、財政的な要請から、現在ある一般病床を持つ8200病院は今後淘汰・再編されて行くと言われている。

現在のベッド数、120万床から50~60万床を目指していて、将来的には病院数にして2500~3000病院になるのではないか。
ちょうど、JCAHOというアメリカの民間組織医療施設認定合同機構の日本版(JCAHO)の現在の認定数は3000病院で60万床程度だが、その程度。
国立病院や都道府県立病院程度の規模の

病院などしか残らないのではないか、と指摘する専門家もいる。

しかし、規制緩和の流れを考えれば、日本の認証JCAHOなど取得していても意味は無い。今後の日本の医療提供体制を考えれば、規制緩和により標準化されるであろうJCIを取得することこそが、生き残りにつながることになる。

中でも、5721(2011年5月末現在)ある徳州会病院はじめとした医療法人立病院にとっては、非常に厳しい状況下にあり、JCIの取得は、死活問題といっても良いのではないだろうか。

また、JCIの背景には、「株式会社立病院」がある。
医療の規制緩和は、「投資家」の存在を意識して読み解くと、より理解が進む。

JCIは、単なる患者に選ばれる病院としての評価にとどまらない、投資家に選ばれる病院の評価でもある。
投資家が投資する際の指標にJCIが使われるわけだ。

 財政的側面から、医療機関の淘汰・再編と言われているが、生き残りの要件にJCI取得があり、株式会社立病院を経営したい大きな要請がある。

日本の病院のほとんどは、利益を配当しない医療法人で支えられてきている。にもかかわらず、JCI認証は着々と進められ、アメリカ型の医療ビジネスへと制度的な舵は切られている。

 
医療機関が株式会社により経営される時代になれば、最後に残るのは、株主配当にこだわる医療機関ばかりになりはしないか。

日本の歴史的経緯の中で、国民皆保険と医療機関へのフリーアクセスという誇るべき医療制度を、維持できるかどうかは、私たち国民の意思にかかっている。

一つ一つからは見えない変化をつなぎ合わせた時、医療の明日が見える。