国家戦略特区はTPPの前倒し?~TPP後の日本を推測するために~
マレーシアで行われているTPPの会合ですが、先日の甘利大臣が秘密厳守が強制されていると発言している通り、その内容について、なかなか私たちにまで届きません。
一方で、アベノミクスの第三の矢と位置づけられているのが国家戦略特区です。私は、この国家戦略特区を含め、現在、全国で推進されようとしている特区は、TPPの前倒しではないかと考えています。
米韓FTAをより厳しくしたものがTPPと言われていましたが、国家戦略特区において何が行われようとしてるのかをみることで、TPPによって何がおきるのか推測できるのではないかと思っています。
8月1日に行われた「国家戦略特区ワーキンググループ」の資料です。 誰が、どのような内容を提案しているのか非常に興味深い内容です。
是非、一人でも多くの皆さんにお読みいただき、政府とは何か、公共とは何か、国家とはなんなのか、改めて考えていただきたいと思います。
経済は私たちの暮らしを支えるために無くてはならない大切なものです。 しかし、一方で、私たちは、国家の構成員として、政府に対し、一定の権限を持たせることで、私たち国民生活を守り、国家を維持することを信託しています。 国家とは何か、国家における経済とは何なのか、考えなくてはならない時代になっています。
*あえて、提案内容を先に、提案者をあとに掲載しています。【】が提案者です。 所属などは、文末に記載されています。
平成25年7月19日 地域活性化統合事務局
○ 国家戦略特区ワーキンググループは、4日間(7月5・8・17・19日)にわたり、以下の有識者 等(学識経験者、コンサルタント、経済団体等)から「集中ヒアリング」を行ったところ、有識者等 から提案のあった規制・制度改革事項(税制関連事項等は除く)は、次頁以降のとおり。 (注)【 】は、提案者(又は提案団体)
資料2
1.都市再生 ○安全な市街地形成のための都心・都心周辺部(山手線地域内全て)の防火地域化 【伊藤】 ○都心居住促進等のための容積率の大幅な緩和 【伊藤、安念、不動産協会、八代】 ○都心部における容積率を、敷地規模・建築性能の両方の評価で決定 【伊藤】 ○都心部における容積率2000%以上の象徴的開発プロジェクトの推進 【伊藤】 ○都心部において用途地区混在地区を商業地域500%に統一し、日影規制を解消 【伊藤】 ○都心部における附置義務駐車場制度の廃止 【伊藤、不動産協会】 ○都市計画手続きの迅速化(自治体、開発事業者、専門家による計画裁定プラットフォームに よる円滑・迅速な大規模再開発事業の推進など) 【伊藤、不動産協会】 ○都心周辺部における国際居住区(国際化に対応した多様で文化的な住宅市街地)の指定 (容積率緩和による高層集合住宅化や、遊休地化した公有地の海外関係組織への優先的 譲渡又は賃貸など) 【伊藤】 ○プライベートジェット機専用の羽田空港第6滑走路の整備 【伊藤】 ○リニア新幹線の整備及び品川地域の再開発等 【伊藤】 ○カジノ等による臨海部の国際的利用 【伊藤】 ○都市の有効利用・都心居住の推進のための「特区版法制審議会」の創設 【安念】 ○自治体の高さ規制や景観規制への迅速な対応 【不動産協会】 ○区分所有権法のマンション建替え決議要件の緩和(議決権方式で2/3以上など) 【八代、 不動産協会】 ○借地借家法の定期借家権法への乗り換え 【フェルドマン、八代】 ○羽田・成田間、成田・仙台間の高速鉄道化 【フェルドマン】 ○立体道路(道路と建物との一体的建設)の拡大 【八代】
2.医 療 ○外国医師による外国人向け医療の充実(特区内医療機関所属外国医師による全国往診可 能化) 【阿曽沼、不動産協会、八代、翁】 ○国内未承認の医療技術・医療機器の持ち込み・使用許可解禁 【阿曽沼、フェルドマン】 ○チーム医療実施のための外国人看護士等の受入れ推進(就労資格の弾力化) 【阿曽沼、 美原・杉田、フェルドマン】 ○病床規制の見直し(再生医療等先進医療分野での病床開設許可の推進、休眠病床に関す る知事等による再配分等の地域管理の実施) 【阿曽沼、不動産協会、翁】 ○ASEAN諸国等への医学教育及び医療制度の輸出 【阿曽沼】 ○ASEAN及び環太平洋諸国における医師免許の共通化(国内における英語による医師国家 試験の実施など) 【阿曽沼】 ○患者負担軽減策(民間保険の第三分野拡大等)及び患者救済策(医療自賠責保険制度の開 設等)を併せ、先進医療分野(再生医療のみならず難病・稀少疾病分野、小児癌分野等へ段 階的に範囲拡大)に関する混合診療の解禁 【阿曽沼】 ○先進医療に関する評価専門会議の改革(企業の専門家を含めた人選の弾力化、免責制度 の在り方など) 【阿曽沼】 ○先進医療に関する条件付期限付き承認制度(用法・容量・対象疾患毎の品目承認から包括 承認へ)や市販後調査の運用弾力化) 【阿曽沼】 ○欧米機関とも連携したPMDA の国際部門の創設 【阿曽沼】 ○一定水準以上の医療機関における混合診療の解禁(保険外併用診療の拡大) 【八代、翁】 ○高齢者の自己負担率の引上げ(2割以上、年齢に応じた負担率の導入等) 【フェルドマン】 ○健康を基準とした自己負担率の導入(基本負担を6割とし、メタボ基準以下は3割、喫煙者は 7割とする 【フェルドマン】 ○米国等との疾病分類の統一化(これに基づき診療報酬を決定) 【フェルドマン】 ○病院(国立病院・大学病院・地方病院等、クリニックを含む)の監督の一本化 【フェルドマン】 ○医療分野へのマイナンバー制度の早期導入 【フェルドマン】 4 ○高度な診療・手術の可能な病院の集中化・絞り込み(臨床研究中核病院の機能集中の加速 化など) 【フェルドマン、翁】 ○レセプト情報の見直しなど、医療の情報化の促進 【翁】 ○革新的医薬品の薬価算定ルール等の見直し 【翁】 ○医療機関制度の見直し 【翁】 ○都市部等における在宅医療推進 【翁】 ○医療機関に関する株式会社の参入要件の更なる緩和 【翁】 ○処方箋の郵送及び配達に関する規制の見直し 【翁】 ○健康・医療政策に関する司令塔機能の充実・強化 【製薬工業協会】 ○新薬創出・適用外薬解消等促進加算の完全・恒久実施 【製薬工業協会】 3.介護・保育 ○介護施設等への外国人労働者の受け入れ解禁 【フェルドマン】 ○介護保険報酬を基準とした質の高いサービスに関する価格の上乗せ(混合介護の解禁) 【八代】 ○介護制度・社会福祉法人制度の見直し 【翁】 ○訪問看護ステーションの人員配置基準の緩和 【翁】 ○保育所設置基準等の保育規制行政の地方移管 【フェルドマン】 ○保育所に関する株式会社の参入促進 【八代】 ○認可保育所にも多様な保育サービスを容認(混合保育の解禁) 【八代】 ○都市部における保育士に関する規制緩和 【翁】 ○介護・保育分野での外国資格保有者の受入れ促進 【八代】
4.雇用・人材 ○解雇規制の緩和・合理化(金銭解決などを含む) 【大竹、大内、フェルドマン、八代、製薬工 業協会】 ○解雇規制の明確化のためのガイドライン規定の法令整備 【大内】 ○各企業の就業規則における上記ガイドラインに則った具体化の義務付け 【大内】 ○若年雇用推進のための労働契約初期段階(試用期間)における解雇規制の適用除外 【大 竹、大内】 ○零細企業・ベンチャー企業に対する解雇規制の適用除外 【大内】 ○社外取締役を導入した企業に対する解雇規制の緩和 【フェルドマン】 ○有期雇用契約の自由化(60歳以上の労働者を対象とするなど) 【フェルドマン、青木】 ○有期雇用契約に関し雇止めを制限する場合の、金銭解決手段の導入 【大竹、大内】 ○無期転換放棄による有期雇用の安定性確保(労働契約法18条の撤廃など) 【大竹、大内】 ○定期雇用制度(期間内は解雇禁止、期間経過後は解雇可能・再契約自由)の創設 【大竹】 ○労働時間規制の適用除外(一定の要件を満たす業種・職種等の労働者に関するガイドライン 規定の法令整備) 【大内】 ○労働時間規制の見直し(労働時間の上限規制緩和、休息に関する規制強化など) 【大内】 ○労働者の権利の一部放棄の容認(個別合意における適用除外) 【大内】 ○労働者派遣法制の理念の再検討(派遣労働者保護から需給マッチング手段としての経済活 性化の目的へ) 【大内】 ○賃金政策の再検討(貧困対策としての在り方など) 【大内】 ○海外との経済活動一体化のための企業勤務者・研修生・留学生等へのビザの発給要件の 緩和 【八代、大上】 ○全てのスキルレベルにおけるビザの発給要件の緩和(労働ビザの緩和) 【フェルドマン】 ○積極的な移民政策の推進(医療、介護、農業の分野など) 【フェルドマン、八代】
5.教 育 ○インターナショナルスクールに関する設置許可条件等の見直し 【不動産協会、八代】 ○海外留学(一年間)を大学卒業のための必須要件化 【フェルドマン】 ○大学卒業基準としてTOEFLを採用 【フェルドマン】 ○遠隔教育の推進 【フェルドマン、新しい学校の会】 ○教育行政の所管を、文部科学省から特区担当又は地方自治体へ一部移管 【フェルドマン】 ○教員給与の算定基準に実力テストを採用 【フェルドマン】 ○教育委員会の廃止・権限縮小 【フェルドマン】 ○公設民営学校(公立学校の運営の民間委託)の早期解禁 【大森、新しい学校の会】 ○教育バウチャー制度の創設 【新しい学校の会】 ○複数地域にまたがる株式会社立学校(通信制高校など)の解禁(特区内での添削指導、試験 の義務付けの撤廃など) 【新しい学校の会】 ○教育基本法上の「学習指導要綱」の柔軟化 【楠本】 ○学校教育法上の「大学設置基準」の柔軟化 【楠本】 6.農 業 ○農業委員会に代わる農地利用監視機関の設立 【大上、本間】 ○株式会社等による農地所有の解禁 【本間、フェルドマン、八代】 ○農地利用等に関する関連法制(農地法・農業経営基盤強化促進法)の一元化 【本間】 ○農地情報(地代、農地価格等)の開示、データベース化 【本間】 ○農地転用規制の強化(一定期間における転用禁止、農外利用の罰則化等) 【本間】 ○中小企業信用保証制度の農業関係法人への適用 【本間】 ○農協への独占禁止法の適用 【本間、フェルドマン、八代】
○農協における各事業(信用事業・共済事業)に関する独立採算性・第三者監査制度の導入 (中長期的には、各事業の分離分割) 【本間】 ○減反制度の廃止 【フェルドマン】 ○米価設定の廃止 【フェルドマン】 ○農地への不動産信託の導入 【フェルドマン】 7.エネルギー ○電力システム改革(小売自由化、発送電分離等)の早期実施 【大上、フェルドマン】 ○バイオマス等の再生可能エネルギープロジェクトに関する全ての規制の撤廃 【大上】 ○環境・エネルギー分野における欧米との規制・基準の統一化 【大上】 ○エネルギー新技術に係る競争促進(省エネ住宅・電気自動車等) 【フェルドマン】 ○サマータイム制度の導入 【中上】 ○ガス卸供給用の導管の道路下敷設工事における公益特権の付与【ガス協会、八代】 ○河川横断するガス導管敷設工事の渇水期以外の施行許可 【ガス協会、八代】 ○ガス工作物設置における農地転用許可の不要化 【ガス協会】 ○道路占用に関する措置充実(ライト・オブ・ウェイ)(作業時間の柔軟化、常設作業帯の距離 延長等) 【ガス協会】 ○コジェネレーション設備に関する専用線での連系接続の実施 【ガス協会】 ○燃料電池等自家発電の逆潮電力の活用 【ガス協会】
8.文化・芸術・クールジャパン ○世界に誇る新しい文化施設(美術館、博物館、劇場・ホール、ライブハウス等)に関する容積 率の緩和 【青木】 ○都市部のカフェ、レストラン等のテラス設置・利用に関する規制緩和 【青木、楠本】 ○案内サインや野外広告に関する規制緩和 【青木】 ○美術品の国家補償法の適用範囲の拡大 【青木】 ○国立美術館における経営努力により獲得した収益の活用促進(目的積立金の容認) 【青 木】 ○古民家等の伝統的建築物(国宝、重要文化財等以外)の旅館・レストラン等としての活用の ための総合的施策の推進(「地域再生特定物件」として、建築基準法の一部適用除外、旅館 業法・消防法等に関する規制緩和など) 【金野・西本】 ○「料理人」に対する就労ビザの発給要件の緩和(国内の調理学校卒業者及び海外での経験 を有する者への対象拡大、料理の種類・料理人の国籍・就業地の紐付け撤廃) 【楠本、フェ ルドマン】 ○「国際業務」ではなく「ファッション産業の専門職種」として、就労ビザの発給要件の緩和(国 内の大学・専門学校卒業者及び海外で同等の教育を受けた人材、並びに、海外の実務経験 を有する専門家への対象拡大) 【楠本、フェルドマン】 ○「ダンス」の風営法上の規制対象からの撤廃 【青木、楠本】
9.インフラ等の民間開放(PFI/PPP 等) ○公的データベースの民間開放(不動産等) 【フェルドマン】 ○民間事業者による道路建設の解禁 【八代】 ○道路や公共空間の占用許可要件の緩和 【青木】 ○有料道路に関する料金徴収業務の民間開放 【福田】 ○有料道路に関する徴収料金の各種原価以上への範囲拡大 【福田】 ○有料道路における、建設費のみならず維持管理費も含めた費用回収(償還)後の料金徴収 の容認 【福田】
○水道事業に関する民間参入の推進(公共施設等運営権者が事業認可を受ける際の各種手 続の整備、地方自治体と同一水準の支援策の付与、官民の役割分担など) 【福田、美原・ 杉田】 ○公共施設の運営権移転等に当たっての公務員出向制度等の整備(官民人事交流の推進) 【福田、美原・杉田】 ○公共施設等運営権者と指定管理者との二重適用の排除 【福田】 ○公共施設等運営権の新規公共施設整備への適用拡大 【美原・杉田】 ○民間による国管理空港整備の際の運営権設定範囲の拡大(空港ビル施設等)、及び各種施 設間の調整規定の整備など 【美原・杉田】 ○公共調達における民間提案に関する「段階的選定方式」、「競争的対話方式」の導入 【美 原・杉田】 ○「SBIR制度」の本格導入(国・自治体が中小ベンチャー企業等との共同開発した上で最初の 顧客として調達) 【美原・杉田】
10.その他(行政改革等) ○公務員の給料を民間と同一基準化 【フェルドマン】 ○マイナンバー制度に基づく行政コンシェルジュの推進 【フェルドマン】 ○国家戦略特区推進のため特区担当部局が関係各省・自治体の人事を担当 【フェルドマン】 ○外国法規に基づく教育・金融・法律・医療機関等の認可の推進 【フェルドマン】 ○地方議会議員に対する選挙区毎の人口比例での議決権の配分 【フェルドマン】 ○新聞の再販規制及び公正取引委員会からの特殊指定の廃止 【フェルドマン】 ○金融関連記者への証券外務員試験の記者版合格を義務付け 【フェルドマン】 ○官庁の記者クラブを廃止 【フェルドマン】 ○企業業績やその他の重要情報漏洩への刑事罰適用 【フェルドマン】
参考: 税制関係 ○ 跡 田 直 澄 嘉悦大学ビジネス創造学部学部長 ・ 法人税を中心に、所得税も含め、以下の視点からの各種減税措置を提案。 - 特区への内外企業の投資促進 - 特区での継続的操業・再投資促進 - 特区への内外の優秀な研究者の招聘・定着 - 特区での先端研究の促進 ○ 佐 藤 主 光 一橋大学国際・公共政策研究部教授 ・ 全国レベルでの法人減税を原則としながらも、 - 短期的な呼び水効果 - 中長期的な構造改革の推進 の観点から、規制改革と一体となった特区での減税措置の意義を主張。
7月5日(金) 10:00~ 伊 藤 滋 早稲田大学特命教授、東京大学名誉教授 11:00~ 安 藤 光 義 東京大学大学院農学生命科学研究科准教授 13:00~ 安 念 潤 司 中央大学大学院法務研究科教授 14:00~ 一般社団法人 不動産協会 17:00~ 大 上 二三雄 エム・アイ・コンサルティンググループ(株)代表取締役 18:00~ 跡 田 直 澄 嘉悦大学ビジネス創造学部学部長
7月8日(月) 9:00~ ロバート・フェルドマン モルガン・スタンレーMUFG 証券チーフエコノミスト 10:00~ 阿曽沼 元 博 順天堂大学客員教授(滉志会がん医療グループ代表) 11:00~ 八 代 尚 宏 国際基督教大学教養学部客員教授 13:00~ 大 竹 文 雄 大阪大学社会経済研究所教授 14:00~ 翁 百 合 日本総合研究所理事 15:00~ 大 森 不二雄 首都大学東京大学教育センター教授 16:00~ 佐 藤 主 光 一橋大学国際・公共政策研究部教授 17:00~ 新しい学校の会
7月17日(水) 8:30~ 本 間 正 義 東京大学大学院農学生命科学研究科教授 9:30~ 大 内 伸 哉 神戸大学大学院法学研究科教授 15:30~ 日本製薬工業協会 16:30~ 青 木 保 国立新美術館館長
7月19日(金) 9:00~ 南 嶌 宏 女子美術大学教授 10:00~ 金 野 幸 雄 流通科学大学特任教授 西 本 千 尋 (株)ジャパンエリアマネジメント代表取締役 11:00~ 福 田 隆 之 新日本有限責任監査法人エグゼクティブディレィクター 12:00~ 美 原 融 東洋大学大学院客員教授 杉 田 定 大 同志社大学大学院客員教授 13:30~ 楠 本 修二郎 カフェ・カンパニー(株)代表取締役社長 14:30~ 中 上 英 俊 (株)住環境計画研究所代表取締役会長 15:30~ 一般社団法人 日本ガス協会