指定管理者制度導入は、民営化の流れの一つの手法です。
指定管理者制度導入のメリットは、2005年10月1日の活動報告にも書いたとおり、多様化する住民ニーズに、より効果的、効率的に対応するため、公の施設の管理に民間の力を活用しつつ、区民サービスの向上を図るとともに、経費の節減等を図ることであると言われています。
私は、民営化に反対していません。昨年、図書館を指定管理者に指定することのできる条例改正案には賛成しています。
しかし、安易な(=経費削減ありき)の指定管理者制度導入では、決して前述青字のメリットを実現することはできません。
民間活力を有効に活用するためには、区の「図書館行政に対する明確なビジョン」「事業者の創意工夫が活かされるしくみ」「事業者指定にかかわる明確な選定基準」が必要です。
今回の指定管理者の指定が適正であるかどうかを判断するためには、「募集要項」「事業者応募書類(=提案内容を含む)」「選定結果(=選定方法と基準)」などが必要ですが、そうした資料は、議案提案時には示されませんでした。
結局、開示請求を行い、それらの資料を基に、今回の事業者の選定がどのように行われ、選定された事業者の提案がどのように図書館事業に反映されるのかを検証したわけですが、重要な判断に必要な資料も「開示請求をしなければ」提示されないというのもおかしな話です。
例えば、この議案を審査するこども文教委員会の資料に、選定メンバーは記載されていましたが、選定委員会の報告を見ると、唯一の外部選定委員の公認会計士は、一次審査は、その事業者の財政面などを審査するにもかかわらず、その、たった一日の一次審査にも欠席しています。
こうしたことは、委員会の資料では検証できませんが、審査自体が形骸化していることを明確に現しているものです。
当然、選考過程が区民に見えずらく、大変不明瞭でした。
仮に良いプロポーザルを出されても、それを、事業内容に反映できない契約では、プロポーザルの意味はありません。
区は、自主事業については事業者のノウハウであるとして、各館にまかせると言いますが、質の高いサービスをしていく館のレベルに他館をひきあげるための仕組みを明確にしなくては、民間活力の導入のメリットはありません。
しかし、民間事業者のノウハウは企業秘密として他館に提供されるしくみになっていないため、大田区全館のサービス向上につながりません。
今回のように、一度に14館という多数の図書館を指定管理者として選定するのであれば、指定管理者となる図書館と大田区、あるいは指定管理者図書館同士の意志や情報の伝達、管理体制をどのようにするのかが大変重要になります。
また、大田図書館の位置付け、中央館機能はどうなるのか、大田区として全館をどのように掌握していくのかといったことも、明確にしていかなければなりません。明らかになっていないままに、業者を選定することは乱暴です。