台風19号のための補正予算の必要性と課題
フェアな民主主義 奈須りえです。
2019年第四回定例会には、10月の台風19号の被害対策のために必要な費用が計上されました。平常の区民生活を取り戻すための予算計上なので賛成しましたが、そこから見えてきたいくつかの課題(必要なかった防災基金・貸無利子でも借りられなければ援助にならない住宅改修費用など)について報告します。
第92号議案令和元年度大田区一般会計補正予算(第4次)は、主に、台風19号による被害に対して、平常の区民生活を一日も早く取り戻すために必要な費用を計上しています。
【台風被害に12億円の補正予算】
深刻な浸水被害に対して、住宅被害、災害廃棄物対策、多摩川敷きの運動施設ほかの復旧など、適正な予算措置による区民生活の確保を望むもので、賛成いたします。
一方で、今回の補正予算は、財政調整基金から5億円、防災基金から7億円合計12億円の取り崩しによりまかなわれています。
【防災対策基金は必要だったのか】
大田区は今年第一回臨時会において、防災対策基金として50億円積み立てました。
その時、大田区は、大規模災害に伴い、突発的な財政需要に対する積極的・戦略的な備えとして災害直後から区主導で迅速かつ地域にそくした応急対策(予防対策経費を含む)及び普及等を実現するため、本条例の基金に「防災対策基金」を追加する。
と説明しました。
私は、災害対策において、その被害が甚大であればあるほど、国からの支援もあること。特に大田区の場合、財政基金として1000億円のつみたてがあり、とりあえず、財政基金で使って、国からの補助を待っても、財政に深刻な影響を及ぼさないこと、住民福祉のための基礎自治体、社会保障の責任主体である大田区が、50億円も防災の財源をあえて基金として確保しながら、常に足りない福祉サービスのための財源は、特段措置を講じていないことなどから、50億円もの防災基金の創設に反対いたしました。
【防災基金50億円を積み立てなくても
財政調整基金と予備費で間に合った災害対策】
実際、今回の災害復旧のための予算計上を見れば、12億円のうち5億円は財政調整基金からの取り崩しであることをみても、防災対策基金がなくても予算措置できたことが明らかです。
今後、防災対策の使途が確定し、あるいは、国からの防災対策の費用が大田区に補助されるなど、その財源についても明らかになったのちには、速やかに、財政調整基金から取り崩し、防災のために使った費用は、財政調整基金からではなく、防災基金から、とするよう求めます。
【無利子で貸すだけでは支援にならない防災対策】
また、災害が激甚化し区民生活への影響も大きくなっていますが、無利子貸し付けを使えるかたは、低所得者層に限られ、借りても返さなければならないことを考えれば、被災者の中には浸水などで家屋の修理が簡単には用立てられない方たちもいらっしゃると思います。災害時の生活復旧のためには、効果ある支援事業を求めます。
【豪雨など招く東京一極集中と都市化を放置しない】
都市計画や建築基準法の規制緩和による東京一極集中と、各種の法令により、開発で都市の土にコンクリートで蓋をし、高層建築などを許し、ヒートアイランドなど気候変動を助長し、都心部などでの豪雨を招いてきている一因は政治にあります。
一方で災害を激甚化させながら、一方でその対策のために莫大な税金が使われています。対症療法には限界があり、財源には限りがあります。私たちが考え行わなければならないのは、都市化と一極集中に歯止めをかけるための、都市やまちづくりのビジョンではないでしょうか。
【一極集中と国土強靭化で災害から無傷のまちは作れない】
議案質疑で、大田区が対症療法に依らない災害対策を講じると答弁したことは、今後の大田区における一つの希望ですが、国土強靭化とも答えています。
技術を過信し、土木・建設によるコンクリートで固める国土強靭化で、あらゆる災害から無傷でいられる町を作ること、自然を土木の力で組み伏せることは不可能です。
【空っぽになったコンビニの棚、いっぱいの避難所から学ぶこと】
空っぽになったコンビ二の棚やいっぱいになった避難所の様子に、人口の集中している大田区で安全な場所に逃げること、物流が止まった時、命をつなぐことがいかに困難か気づかされたと思います。
災害被害の増大を招いている東京一極集中や都市化に歯止めをかけ、まちづくりの在り方を見直すことを求め、今回のところは、賛成といたします。