東京都は、公表している開発コンセプトに沿い、また、まちづくりの誘導目標を実現する提案を民間事業者から公募し、その中から、東京都が総合的に評価した事業者を選んで、この地区を開発させることになります。
開発コンセプト
「環境と調和した魅力あるまちづくり」周辺の良好な住環境に囲まれた立地特性を活かし、環境と調和し、多様な世代が集い、地域に開かれた魅力あるまちづくりを進めます。
まちづくりの誘導目標
○ 環境の確保に配慮したまちづくり
○ 多様な世代が集うコミュニティ豊かな拠点の形成
○ 地域と調和した景観と防災機能の創出
一方で東京都は、この土地活用にあたり、「民間事業者のノウハウや資金を積極的かつ有効に活用し、地域生活基盤の充実に資する整備を行うこと」や「長期間にわたり高い収益を確保できる事業を構築すること」を目的に調査を行っています。
調査には、商業施設・業務施設・オフィス・研究所分譲マンション・賃貸マンションなど、導入する施設の検討や、建築基準法により敷地内に配置される建物の配置や種類、高さなどの検討、また、余裕交通量から逆算した商業・業務・住宅の最大規模までが詳細に記されています。
これらの調査やプロジェクトの目的から、東京都は、この地域に、法的に可能な限り収益性の高い施設を、民間事業者の力を借りて誘導し、この土地から長期間にわたり高い収益を確保しようとしていることがわかります。
西馬込車両工場跡地の活用についてでは、大田区民から、プレイパーク、障害者の温水プール、多目的体育室、高齢者施設の建設など様々な要望が出されてきました。
このまま、先行まちづくりプロジェクトが進めば、民間が提案した事業の通りにまちづくりが行われることになりますが、都が行った調査結果にあるような大規模ショッピングセンターが建設され、第二京浜から住宅街に車が多く侵入したり、17階建ての大規模高層マンションが建設されたりといったことを地域住民は望んでいるのでしょうか。
例えば、200年に東京都は、財政立て直しのために都立大理工学部跡地について入札による売却を行っています。都立大駅近くは目黒区が購入し、公共用途として開発されましたが、世田谷区の部分は、民間事業者に入札によって売却されることになりました。
入札条件として都は、土地利用について、次のような「基本的な考え方」を示しています。
○居住系を中心とした土地利用を図ることを目標とすると友に生活支援サービスなどの公共性の高い機能の導入に配慮する。
○周辺地域の居住環境等を配慮しながら、調和の取れた街並み形成を図る。
○道路生活支援サービス機能など周辺地域の現状に配慮した整備をするとともにオープンスペースの創出等により防災安全性を確保する。
○環境強制を目指した建築物を整備する。
西馬込の「先行まちづくりプロジェクト」の開発コンセプトやまちづくりの誘導目標と非常に良く似ています。
都立大跡地は、結果として、民間事業者が19階建てを含む高層巨大マンション開発になり、地域住民は、圧迫感や戸数増による地域に対する影響や、理工学部であったことから土壌汚染問題などに発展し、民事訴訟になっています。
大田区は、東京都の開発計画を、私が知りうる限りでも平成16年という早い段階で知っていながら、これまで、区民の要望や、地域性を考え、西馬込のまちづくりをどのようにしていくかという視点で東京都に主体的に関ってきたのでしょうか。
少なくとも、事業者が決定する前までに、大田区として、検討会を立ち上げると言う話もありましたが、検討会で出された意見も含めた区民の意見を取り入れた方針を東京都に出し、東京都の事業者選定に反映すべきではないでしょうか。
仮にこの開発にかかわり、建築紛争が起き場合に、区は関係ないと言えるでしょうか。