建築許可処分などに対して、不服申し立て(=審査請求)を行うことが認められていますが、この「審査請求」の「審理」「採決」を行うのも「建築審査会」の役割のひとつです。
先日、大田区で行われた「審査請求」を傍聴しました。
「審査請求」がされますと、「審査会」は、当事者双方の主張を審理し、その審査請求に対する裁決を行います。処分が違法であると判断された場合は、裁決により当該処分は取り消されます。
今回の「審査会」は、民間検査機関がおろした建築確認について、周辺住民が確認にあたっての法的不備を主張し、建築確認を取り消すことを求めているものです。
審査請求は、訴えの利益が認められれば誰でも行うことができますが、代理人として、弁護士や建築士をたてることもできます。
「審査会」では、代理人である弁護士から、
①平均地盤面の捉え方の問題
②避難経路の問題
③窓先空地の問題
④設計図書の問題
などについて、建築基準法や東京都の条例に基づき、不備が指摘され、それに対して建築確認をおろした民間検査機関から反論がありました。
たとえば、②について
◆審査請求人◆
ピロティーは避難経路としても使用されるため、2メートルの幅が必要だが、機械式自転車ラックの幅から計算すると2メートル確保されないが・・・。
◇民間検査機関◇
開放性を重視したが、機械を変えて2メートル確保する。
などのやりとりがありました。
◆審査会会長◆
これに対して、審査会会長から、「区画」とは、どこの部分を指しているのか
。(壁からなのか、自転車ラックの端からなのか)という質問がありました。
◇民間検査機関◇
壁からをさす。
建物の壁からを区画された避難経路とするならば、避難経路に、障害物(=自転車と自転車ラック)が設置されていて安全性に問題が生じる恐れがあります。一方で、自転車ラックの端からを区画された避難経路とするなら、開放性の確保ができなくなる可能性が生じます。
審査会会長の指摘は、専門性に乏しい私にも非常にわかりやすく、大変勉強になりました。
非常に驚いたのは、審査請求が行われていても、民間検査機関も建築主も、周辺住民に簡略な図面しか配布せずにいることでした。
簡略な図面をもって請求人側が法的不備を主張しても、法律は守っているから大丈夫という説明が繰り返され、審査請求から5か月が過ぎようとしています。
このまま、請求人側に設計図書の写しを渡さなくても、建物が建ってしまえば、訴えの利益はなくなることになり、法的不備が存在したかどうかが明らかになる前に、請求人が取り下げるあるいは「却下」となります。
昨年、大田区民が、開発許可に関わる審査請求を行っていますが、論点は開発許可に関わる道路の拡幅でしたが、道路が拡幅されてしまい、訴えの利益がなくなったため、結果、審査請求は「却下」となっています。
*規制緩和により、共有部分容積率不算入・天空率などにより、従前は建たなかったような建物が建つなど、建築紛争が多発しています。
一方で、耐震偽装問題以降、建築確認の民間開放の問題性が明らかになり、「建築審査会」の役割も大きく変わってきました。
それまでは、ほとんど無かった「審査請求」の認容が増えてきていると「審査請求」にかかわった弁護士は話しています。
大田区の、建築確認処分の取り消しを求める審査請求の処分状況は次の通りです。
【平成17年度】
審査請求件数 5件
・認容裁決1件
・棄却裁決1件
・取下げ1件
【平成18年度】
審査請求件数 7件
・認容裁決2件
・棄却裁決2件
・却下裁決2件
【平成19年度】
審査請求件数 3件
・認容裁決2件
・棄却裁決2件
・取下げ2件
「容認」は請求人の不服申立てが認められること
「棄却」は請求人の不服申立てが認められないこと
「却下」は審査請求を受理できないこと
「取り下げ」は請求人が訴えを取り下げることを意味します。