「大田区まちづくり条例(素案)」で大田区のまちづくりの課題は解決できるか①

 マンション紛争、建築紛争が起きるたび、日本の都市計画や大田区の建築行政の問題を痛感して来ました。
 大田区では、まちづくりに関わるルールを法的拘束力をもたない「要綱」で定めてきましたが、ようやく条例化することを決めその条例案が示されました。

 果たして、現在、大田区が抱えている「まちづくり」の課題が解決できる条例になっているでしょうか。
 説明会も開催されます。

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 建築紛争、マンション紛争は大田区に限ったことではなく、日本全国あらゆる場所でおきています。ある日突然、周辺住環境が著しく変化することを知り驚いた住民が、開発事業者と話し合いの場を持ち、交渉しますが、ほとんどの場合、住民の主張は退けられてしまう。判断の基準は、その開発行為が住民の住環境にどれほどの影響を及ぼすかではなく、基本的には「用途地域」と「建蔽率・容積率」を守っているかどうかという話でしかないというのが現状です。

 中曽根首相のアーバンルネッサンスに始まり、小泉改革による規制緩和によって高層・超高層ビルがあちこちに建設されるようになりました。
 共有部分を容積率に面積算入しなくなったため、ボリュームが大きく、これまで○階しか建たなかったところに思いもよらない高い建物が建つことになっています。

 日照権という言葉はあるものの、受忍限度を超えない範囲であれば、保障されるべきものでもなく、圧迫感・景観・・などいずれも、それらを理由に、建物の形状が変わることはまずありません。
 ビル風という言葉はありますが、仮に風害調査を行っても、調査の基礎となるデータの取り方がいい加減であったり、調査結果の示す周辺への影響を解かりやすく説明していなかったりで、建った後の影響を予測することができません。
 高層ビルの脇を抜けるとき大きな風を受けることはよくある話ですが、それにより、何らかの被害が出たとしても、その建物と風のあるいは風による被害の因果関係を多くの場合被害者側が証明しなければ被害の補償もまず行われることはありません。
 しかも、建物が林立することでの影響は想定されておらず、ひとつの建物が与える影響でしか見ないため、結果として穴倉のようになろうとも、大きな壁が立ちはだかろうとも、そのことについての責任や補償といった問題は発生し得ないしくみになっています。
 大田区議会に、工場跡地に建設された高層マンションにより、そのわきにあるバス停での風被害が著しく、陳情が出されたことがありました。珍しく建設業者によって対策が取られましたが、風除けの木を植えるにとどまったと記憶しています。

 マンション建設・大店舗の進出、墓地の建設などにより住環境に与える影響からの紛争は後を絶ちません。
 
 大田区においても、この間、工場の海外移転や閉鎖、社宅の売却などにより、その跡地がマンションに変わってきました。敷地のある程度大きな宅地も売却されると細分化され、緑は減り土は建物やコンクリートで覆われ温暖化を進めたり降った雨を土のなかではなく下水に誘導してきました。
 環境も変わっていきますが、住んでいる住民の構成により必要な施設も異なり、需要と供給のバランスが崩れています。たとえば、ファミリー向けマンションができれば、若い子育て世帯が増え学校や保育園が必要になります。しかし、それも一時の需要であったりもするのです。

【大田区のまちづくり条例(案)】
 それでは、今回のまちづくり条例は、町工場、良好な住宅地、商業地など様々な顔をもつ地域を抱えながら、そこに起きている問題を解決しうる条例になっているのでしょうか。

  
 マンション紛争がおきて、運よく議員の知り合いがいたりすると、議員や区長だったらなんとかしてくれるのではないかと住民は淡い期待を抱きます。確かに、本気でやるきの区長や議員なら、そのマンションは建ってしまうかもしれませんが、様々な工夫を凝らし、条例などを変えることで、現状を改善することはできます。それと、既に土地が取得され、建築計画がスタートしている建設をストップさせることは、別の問題です。

 それでも、区民が区長や副区長に会いに行き現状を訴えると、区側は、苦肉の策として「地区計画」をつくってくださいと言います。「地区計画」とは一定区画区域内の、建築などのまちづくりルールのことで、住民の発意によって作ることのできるものです。
 たとえば、建蔽率・容積率を変えたり、接道部分への緑化義務を課したり、最低敷地面積を定めたり、高さを制限したりといったことを行えます。区は、「地区計画」をつくれば、みなさんの周囲に今回のような建物は建たず、みなさんが思うまちをみなさんでデザインできるのですと言ってきたわけです。

 ところが、現実には、せっかく区民がまちづくりの意欲を高めても、専門知識の不足や資金の不足により、まちづくりの機運が高まりにくい状況がありました。また、実際に計画案ができても、それに対し行政がどのように対応すべきかが定めされていなかったため、その案が、長期間放置されているケースも見られました。

■まちづくり条例説明会■
大森地区
 日時 8月17日(火曜日) 午後2時から午後4時まで 
 会場 エセナおおた 多目的室

糀谷・羽田地区
 日時 8月18日(水曜日) 午後2時から午後4時まで
 会場 糀谷特別出張所 大会議室

調布地区
 日時 8月19日(木曜日) 午後2時から午後4時まで
 会場 嶺町文化センター 第一集会室

蒲田地区
 日時 8月20日(金曜日) 午後2時から午後4時まで
              午後6時30分から午後8時30分まで
 会場 区役所本庁舎 202・203会議室

  
なかのひと