ビルの建て替えの際に、富士通は、清水建設㈱と東京電力㈱が共同開発した「コンクリートリサイクル(コンクリート資源循環システム)」を採用しています。
この「コンクリートリサイクルシステム」について富士通に行き、お話しをうかがってきました。
富士通は、民家に道路をはさんで接しています。
建て替えの際には、環境への配慮と共に、周辺住民への騒音・振動・粉塵の飛散等に配慮し、工法を選択したそうです。特に問題になったのは、解体したビルから排出される廃コンクリートで、約3万台のトラックの出入りが試算されました。トラックが出入りすれば、それだけで周辺に、騒音・振動などの問題が生じます。
こうした状況の中で、清水建設㈱と東京電力㈱は、壊したビルから排出されるコンクリートを敷地内に建設する再生プラントにおいて再利用するしくみ(=「コンクリートリサイクルシステム」)を提案してきました。トラックの出入りの問題を軽減し、また、建築廃材の排出を抑制し、資源の有効利用につながることから、採用を決めたそうです。
実際のトラックの出入りの削減は、どの程度コンクリートを再利用できるかにかかっています。
解体されたビルのコンクリートガラは砂利と砂と微粉末に分けられ、砂利・砂は新築材に、微粉末は地下部分に使用されるのですが、それは、砂利や砂の質に大きく左右されるそうです。
幸い、古いビルで使用していたコンクリートの砂利の質が良かったそうですが、それでも、全てが新しいビルのコンクリートとして利用されたわけでは無く、使用に適さないものは、路面材として使われたそうです。
しかし、この「コンクリートリサイクル」によって、約3万台と試算されたトラックの出入りを2万台にすることが出来たということです。
コスト的には、場外処分費用とコンクリート購入費としての2億円が抑制されましたが、再生プラントとして3億円強かかっていて、良いとは言えません。また、単純に場外処分費用とコンクリート費用、そして、再生プラント費用とのコスト比較をしていますが、他にもこのシステムを採用したことによるコスト負担の増減はあったはずで、コストでこのシステムの良否は決められないでしょう。
実際、富士通がこのシステムを採用したのも、環境への配慮とともに周辺住人への配慮が大きく、周辺住人に理解を得るための費用をコストで計ることは相応しくありません。
ただ、このシステムは、どの建て替え時にも採用できるものでは無く、建設現場に再生プラントのスペースを確保できる現場に限られるそうです。今回の建て替えにおいても、建物を建てる場所として確保した部分以外は、全てプラントに必要な施設のスペースになったそうです。
都営住宅でもこうしたシステムを採用するという記事を読みました。
このシステムの採用も、コンクリートに使用されている砂利の質の良否が再生の可否を決めたということですから、再生に適さなければ、全て新しい材料で新しい建物を作らなくてはなりません。耐用年数の長い建築物を作ることこそが、重要かも知れません。