読売新聞に掲載された記事には、今年の都議会議員選挙に争点が無いという記事が掲載されていました。
4年前は、直後に控えた衆議院議員選挙の影響を受け、国政の前哨戦として争点が「政権交代」になるなど、国政選挙の影響そのままに、都政の課題が見えにくいのが都議会議員選挙ですが、はたして、本当に争点は無いのでしょうか。


 

私は、以前から、東京都、特に23区において保育園の待機児や特別養護老人ホームの待機者の問題が顕著であることに疑問をもってきました。
土地が高い、人が多いと言われ、そのようなものかと流してしまうところですが、土地が高ければ固定資産税が高く、人が多ければ住民税が多いわけで、必ずしも、土地が高い人が多いから待機児も待機者も多くて仕方がないという理由にはなりません。
【都市部に顕著な保育園待機児、特別養護老人ホーム待機者】
日本で最も土地が高く、人が最も多い23区を、国は東京都と合算で財政的支援を必要としない「不交付団体」として位置づけています。 財政的に自立している自治体と国からみなされている23区(大田区)において、なぜ、認可保育園の待機児が1300人も出るのでしょうか。 23区の大田区で解決できない保育園の待機児問題をほかのどこの自治体で解決できるというのでしょうか。
【財政が厳しいから社会保障の課題ばかりが先送りされるのか】
しかも、行政は、財政が厳しいからともいいます。
しかし、私は、土地が高いからでも人が多いからでも財政が厳しいからでも無く、政治課題解決の優先順位の問題であると考えています。
たとえば、この10年の大田区の一般会計の推移をみてみますと、ほぼ毎年財政規模は増え続け、10年前に比べれば2割、約460億円も増えています。 しかも、この10年の間に民営化や民間委託が進められているわけで、経費削減効果もかなりにのぼるはずです。 この10年の間には、低率減税の廃止、住民税一律10%化など実質の増税が行われています。
増えた460億円、民営化の経費削減効果は一体何に使われたのでしょうか。
私が議会で、何に使ったのか質問したところ、大田区は、生活保護が増え子ども手当が導入されたからとしたわけですが、生活保護で増えたのは130億、子ども手当で増えたのは110億で、増えた460億円と民営化の経費削減効果を何に使ってきたのかの説明にはなっていません。
【激変する社会構造と総花的政治課題、変わらない優先順位】
高度経済成長期には、社会資本=公共インフラを整えることが政治の大きな目的の一つでしたが、高度経済成長期をとっくに過ぎた今も、次々と新たな需要を作り出し、土木工事や建設工事に税金が投入されてきたのが、この10年の大田区政の判断であったと、10年間の区議会議員として活動していて感じています。
【東日本大震災・アベノミクス以前に、公共事業費は減っていたのか】
国の公共事業が無駄であると指摘され、東日本大震災やアベノミクス以前までは削減されてきましたが、それに連動する形で、地方では地域活性化交付金という名の公共事業費が生まれ、23区など都市部では自治体発の大規模な公共事業がおこなわれるようになったと分析しています。
たとえば、一昨年大田区では教育費が大幅に伸びましたが、その中身は大田総合体育館の建設費でした。 大田総合体育館は、当初の計画より大規模な体育館に変更されましたが、結果として出来上がった体育館の区民利用はわずか1/2にまで下がり、残りの半分は、民間事業者の収益事業のための施設になってしまっています。
区民の税金を当初よりたくさん投入しながら、区民利用は下がり、大田区にしかできない社会保障の課題が先送りされたとは言えないでしょうか。
【拡大する自治体事務と先送りされる社会保障;誤った分権の方向】
国は法律や制度を作ることはできますが、年金や医療以外のほとんどの社会保障のサービスを提供するのは、地方自治体の責務であり、それを支援するのが東京都です。
住民福祉の向上が責務の大田区が、国や東京都が行うべき大規模な公共工事を行えば、結果として、大田区にしかできない社会保障の課題が先送りされるのは当然です。
現在でも、大田区は、羽田空港跡地には産業交流施設という名の大規模な建物を建設しようとしていますが、その目的は海外企業と国内企業の連携だそうです。
海外と国内企業の連携となれば、基礎的自治体大田区の事業というよりむしろ国が取り組むべき事業であり、大田区の税金が投入されれば、それだけ、大田区にしかできない社会保障の課題が先送りされることにはならないでしょうか。
大田区は、まだ事業化されていない京浜急行とJR蒲田を結ぶ新線「蒲蒲線」に、昨年度に引き続き5億円の基金=貯金を積み立てましたが、建設により利便性を享受できるのは大田区民だけでしょうか。 私は、利便性の向上となれば東京都全体、周辺の県にまで及ぶ事業であり、なぜ大田区民の税金、現時点での試算180億円を主体的に投入しなければならないのか疑問です。しかも、京浜急行の連立立体事業のように、大田区内の駅、たとえば多摩川線の各駅は素通りする可能性も大きいのです。
大田区は、すでにある公共施設が大田区財政の大きな圧迫要因になっており、施設整備計画を変更しなければならない状況にも関わらず、こうした問題のある大規模な公共工事を次々と計画しています。 作り続けて維持管理も十分行わず、抑制した費用を新規事業に投入することを繰り返してきた大田区の姿勢がそのままここに表れています。
少子化、高齢化、労働人口の減少・・・。東京都も昨年から人口減少に転じています。 社会構造の変化に伴い生まれている新たな課題に対応するためには、これまでと同じ分野に同じように税金を投入していたのでは変えられず、優先順位を変えなければ、たとえ、いくら税金が上がったとしても、社会保障の課題は先送りされるばかりです。

【財政配分割合の見直し:都区財政調整制度】
一方で、23区の大田区側の優先順位の問題とともに、解決しなければならなのが、東京都と23区の間の特別な財政関係「都区財政調整制度」です。
これは、大阪都構想のもとにもなっている仕組みですが、少なくとも23区側にとっては、必ずしも良いとは言えません。
本来、23区固有の財源である固定資産税・法人住民税の約半分を東京都が明細も無く使っているからです。
日本で最も土地が高く大企業の本社が位置する23区の固定資産税と法人住民税は豊かで総額約1兆7000億。そのうちの8000億円を東京都が使っています。
毎年、年度末になると上下水道の工事があちこちで行われ無駄ではないかと感じられているみなさまもいらっしゃるかもしれませんが、その原資になっているのも本来23区の財源であるべき固定資産税・法人住民税の半分約8000億円からねん出されています。
世界各国の「市」が手を挙げるオリンピック事業に東京都が手を挙げているのは、東京都が昭和18年まで東京市だった名残ですが、その名残が財政関係においても残っていて、いまだに23区は東京都の内部団体的位置づけなのです。 東京都が平成18年から毎年1000億円づつ4年にわたり積み立てたオリンピック基金総額4000億円も23区の財源と言うべき法人住民税・固定資産税からです。
私は、少子化や高齢化、労働人口減少など社会構造の変化に伴い生まれた新たな課題に対応するためには、この東京都との財政配分割合を見直す必要があると考えています。
地方分権と言われ、保育事業が基礎的自治体の事務となりましたが、特に就労希望者が増えた都市部において、固有の財源の約半分を東京都が使っていることが、待機児問題を先送りしてはいないでしょうか。
政令市である横浜市の待機児対策が進んだことが大きく取り上げられましたが、23区と違い、固定資産税法人住民税総額を使える横浜市だからできたという見方もできるのではないでしょうか。
23区側にとっての争点は「東京都からの分権」という言い方もできると思います。