平成24年度大田区一般会計補正予算(第二次)に反対しました。以下に、反対の理由を述べます。


大田・生活者ネットワークは第86号議案「平成24年度大田区一般会計補正予算(第二次)」第89号議案 大田区積立基金条例の一部を改正する条例」について反対の立場から討論いたします。

 

地方自治法に、「普通地方公共団体の長は、毎会計年度予算を調製し、年度開始前に、議会の議決を経なければならない。」と記されているように、言うまでも無く、区長の最も大きな権限の一つが予算編成権であると言えます。

【補正予算とは】

一方で、補正予算は、当初予算成立後に生じた自然災害などの予見しがたい事態に対応するために編成される予算です。

東京大学名誉教授で地方財政審議会会長の神野直彦氏は

「財政民主主義からいえば、超過支出禁止の原則に基づいて、予算計上額以上の支出はできない。しかし実際は、予見し難い事態への対応として、予備費の計上が認められている。更に予備費でも対応できないような事態が生じる場合には、追加予算を編成することが許されている。こうした予算の追加と、追加以外の予算の修正を含めて補正予算と呼んでいる。補正予算を乱用することは、財政民主主義からいえば望ましくない。」

と発言しています。

私たちは、補正予算審議において、常にこの原則に立ち、補正予算計上が適正であるかどうかの判断をすべきです。

加えて神野直彦氏は

「しかし、現在の日本では、予見し難い事態というよりも、経済情勢の変化に対応するために、補正予算を編成することが常態化してしまっている。」

と評価しています。

この経済情勢の変化とは、国の補正予算における財政出動のようなものを意味するのかも知れません。

大田区の補正予算においても、この神野教授の指摘する、財政民主主義からは望ましくない補正予算費目がほとんどであることがわかります。

こうした、補正予算の濫用は、区長自らが予算編成権を形骸化し、予算編成権は区長にあるものの、予算の議決という議会制民主主義を軽んじていることにもつながります。

平成24年度予算審議の直後の第二回定例会に、予算審議の際には増税が必要であるという議論も説明も無かったにもかかわらず、特別区民税増税の議案を提出したことも、その表れと言えます。

特に最近の大田区議会における補正予算は、当初予算に盛り込むべき種類の計上が目立ちます。


内容の賛否はともかく、今回の補正予算に計上されている項目は

・共同支援施設の運営として計上されているボランティアの大型バス単価の急激なアップ。

・給食の放射性物質検査業務委託

・子ども家庭支援センター

・産学公連携事業

・プレミアム商品券

・舗装改良工事

・公園の維持管理

・新空港線整備基金積立

・密集住宅市街地整備促進事業

・借り上げ区営住宅建設補助

・糀谷駅前再開発

・オリンピッック招致機運醸成事業

など、どれも、状況がかわったり、ようやく調整がついたりしたのでという説明ですが、当初予算に組み込むべきもので、予算を軽視し、補正予算で計上すればよいという意識のもと、補正予算計上が常態化していることを示しています。

これは、大田区に限った事ではありませんが、日本の予算編成とその後の補正予算計上のいわば政治的テクニックと言えます。
利権配分機能に極端に特化した日本の政治において、補正予算計上が欠かせないツールと化していることが財政負担をさらに増していることを指摘しておきます。

その中でも、今回の補正予算において特に問題視しているいくつかの点を指摘します。

【新空港線:蒲蒲線の積立基金】

新空港線の積立基金積立金5億円は、議案の質疑の際にも指摘させていただきましたが、当初予算に盛り込むべきです。大田区は、第二回定例会で質問されたので積み立てたと説明しましたが、期の途中で一人の議員が質問したからそれに影響されて行う種類の事業ではありません。大田区が今年8月に出した調査資料に掲載されている試算で総工費は1080億円に及びます。しかし、概算事業費の積算根拠、想定輸送人員の算出方法、事業採算性の計算式、費用便益分析の根拠などは一切示されませんでした。

そもそも事業主体がどこになるのかも示されていない状況です。

一方で、大田区は。現時点における大田区の公共インフラを現在の大田区財政でどのように維持管理更新していくかという施設整備の全体像を試算していません。

【場当たり的大田区施設整備計画】
~相次ぐ公共事業を支えられるか~

今回の私の議会質問により、大田区の施設整備計画は、平成30年までの、極めて場当たり的な、区長在職予定期間に限定した公共事業計画にすぎなかったことが判明しています。このことにつきまして、委員会において副区長が同席する場においても指摘させていただきましたが、区道整備の全体計画は、持っていないという答弁も含めなんら反論はなく、大田区としての施設整備の無計画性が証明された形です。

こうした状況であるにも関わらず、大田区は蒲田・大森グランドデザイン、空港跡地整備羽田の防災まちづくりなどを行う計画ですが、当然これらの費用は施設整備計画や今後の財政フレームには入っていません。その上、今回の補正予算のしかも基金創設により蒲蒲線事業を予算上形づけるなど、区長は、財政持続性と区民サービスの安定的供給をどのように考えているのでしょうか。

【大田区消費税増税分=100億円=は社会保障の充実に使われるか】

消費税10%増税法案が可決し、解散総選挙がささやかれるこの時期に、計上することについて多くの区民が不安を覚えています。

なぜなら、多くの区民がこの消費税増税分大田区試算で年間約100億円は、政府が増税の際に説明してきた社会保障の充実のために使ってほしいと考えていますが、それが担保されるかどうか確証が持てないところに、景気対策のための公共事業という声が大きくなってきているからです。

既に大田区の公共インフラは、他の公共ニーズの適正な提供下において区民の税金では維持できない規模になっています。この既存の公共インフラを今後どうするのか示さずに新たな公共事業に着手すべきではありません。

【未だに東京市?だから、23区は内部団体?】

オリンピック気運醸成事業は、東京都に頼まれたが、宝くじ基金で100%補てんされるというのが大田区の説明でした。

しかし、オリンピックという事業そのものが「市」が行う事業で、これまで日本で開催してきたのも札幌市・長野市と市が開催しています。

本来、都である東京が手を挙げているのは、理屈に合いませんが、これは、過去に都が東京市だった経緯から手を挙げているということなのでしょう。未だに東京市が抜け切れていません。

その理屈でいえば、オリンピック事業は、都区財政調整制度のなかでいう、大都市事務として23区が拠出している財源45%からねん出すべき費用です。東京都に頼まれたからと言って安易に二つ返事で支出を承諾する種類の費用ではありません。

23区は基礎的自治体として位置づけられながら、未だに東京都の内部団体としての位置に甘んじているのでしょうか。

【公益財団法人東京都区市町村振興協会】

しかも、本来、地域振興に使われるべき宝くじの収益金の使い道が、税金の不足額を補う形で支出されていることも問題です。
これに限らず、首長たちが本来税で賄うべき費用を宝くじ拠出金を財源としているようですが(例えば、東京の後期高齢者広域連合のシステム費など)、そうした不安定財源によって区民の見えないところで区政が担われているのだとしたら大問題です。大田区が負担が0であればよいというものではありません。

前回の招致の際には東京都が各区に対して委託金として支出しています。今回は、財政負担できないということで、23区に支出を依頼したきたと大田区から説明を受けましたが、気運醸成のための費用すら支出できない財政状況の東京都にオリンピックが招致できるのでしょうか。それとも、こちらも消費税だのみでしょうか。

生活者ネットワークは、現在の日本の財政状況においてオリンピック招致はすべきではないと考えています。
また、オリンピックが東京に招致されたとしても大田区の財政状況と大田区のオリンピックの開催会場等の大田区の可能性を考えれば、大田区が自らが機運醸成費用まで負担して積極的に取り組むべき事業ではないと考えます。

【東京都の事業=オリンピック招致に23区が支出する根拠】

それでも、どうしても区長として支出すべきと考えるのであれば、少なくとも、地方自治法に基づき適正な手続きをもって支出すべきです。
東京都の事業に対して大田区が支出する法的根拠について区長部局にお尋ねしましたが回答できず、区長会事務局に聞くよう言われました。
そこで、今度は区長会事務局に問い合わせましたが、23区長会で合意形成したことを繰り返すばかりで、東京都の事務を大田区が肩代わりできる根拠については最後まで示していただけませんでした。

【民主主義の形骸化】

これまでも決して問題がなかったわけではありませんが、特に震災とそれに伴う原発事故という歴史的事態が、グローバル化や経済・金融状況悪化という背景でおきたことにより、政府も行政も法令という規範を失い、民主主義が形骸化しています。
雰囲気だけで確証の無い「いいことだから」を理由に、議会という民主主義の根幹にある決定機関を素通りし、決定権を持たない曖昧な組織やしくみが大切なことを決め税金投入されています。ここにも民主主義の形骸化という大きな危機感を覚えます。

【プレミアム商品券】

プレミアム商品券発行は今回で5回目になります。これまでに22億円分の金券が発行され大田区として2億6,850万円の税金が投入されました。

これからの高齢化社会を支えるための地域の個人商店の役割は少なくありません。

しかし、それでは、プレミアム商品券がその支援策でしょうか。
5000円が5,500円になるお得な商品券の恩恵を受けるのは区民ですが、大田区民69万人すべてではありません。

税の再分配の際に最も慎重にならなければいけない「現金給付」がここにはあるわけですが、税で回収した1億9,750万円を分配できるのは、たとえば一人が5,000円のプレミアム商品券1枚だけ買ったとしても40,000人の区民しか恩恵を受けることができなかった計算です。1回の商品券発行の恩恵にあずかれる区民は最大で見積もっても1万人で各回リピーターもいますから区民でこの商品券を買ったのは4万人を大きく下回るはずです。

今回、個店の売り上げが伸びるようにということで、各商店街に限定した地域商品券にかわりました。

これまで発行した22億円のうち、3割は大型店にいき、7割の15億4千万円しか個人商店に還元されなかったという説明がありましたが、そこを改善するために、今回発行分は、販売ルートも利用場所も各商店街に限定されていて、区民の利便性からみれば後退しています。

しかも、プレミアム商品券の発行については、不正利用が指摘されてきましたが、販売ルートも利用場所も各商店街に限定してしまったことで大田区の金券としては更に不透明になってしまいました。

これまでの発行で、個人商店15億4千万円の売り上げのために約2億円をかけた計算になります。過去の答弁の中でも大田区は効果については明言しておらず、何か商店街に対して景気対策をしなければならないがほかに良い方法も見つからないのでとありあえずこれをしているというのが実態ではないでしょうか。

【求められる商店街振興策】

本来大田区がすべき商店街振興策のひとつに、商店街に個店を集積させるまちづくりがあると考えています。アメリカが自由で規制が無い国であると思われていますが、たとえば商店街の開発において、1階には個店を置かなければならず、そのために、個店を置くと固定資産税を減免するなどのしくみを作って個人商店を守っている地域もあると聞いています。

本来すべき商業振興策は必ずしも産業経済部だけの問題ではなく、まちづくりも重要であるにも関わらず、大田区のまちづくりにこうしたセンスがありません。

【被災地ボランティアバス契約単価大幅アップにみる契約の重み】

また、被災地ボランティアのバス一台当たり単価が、これまでの一律約13.6万円から昼で約16.8万円夜で約26.3万円に大幅に上がったことも問題です。

震災直後という事情から単価が安かったが平常に戻したというのが区の説明ですが、その後の契約に、区が契約しているという感覚が抜け落ちています。

バスの運行事業者を決定した際に、相見積りをとり、随意契約で行ったことも問題がありますが、震災直後という特殊事情を配慮すれば、平成24年度予算策定の在り方に問題があったと指摘しなければなりません。

そもそも、相見積もりで出された金額を、事情があるから変えてほしいと言われて変えてしまう契約のあり方、しくみに問題は無いでしょうか。

しかも4月には増額した金額で契約しており、仮にやむを得ない単価の増額だとしても、第二回定例会対応できたはずで、第三回定例会の補正予算とすること自体問題です。


現在の日本では、予見し難い事態というよりも、経済情勢の変化に対応するために、補正予算を編成することが常態化してしまっている。と神野直彦氏は指摘していますが、経済情勢を超え、業者の都合がまかり通る大田区の契約は、根本的に考え直すべきです。

予算の議決までした契約単価が事業者の都合で簡単に変えられてしまうとなれば、議会として、示された案についてこわくて賛成できません。

【道路改良費用大幅増】

道路改良費も震動がひどいという区民の要望にこたえたというのが説明ですが、区民の要望は今回の補正予算策定直前に始まった事であるはずもなく、当初予算各地域1カ所ずつの4カ所2億9,892万6千円はなんだったのでしょうか。

区道総延長791キロメートル全部性するのに320年かかると発言しましたが、交通量の多いバス道路などは4.5年で改修していると聞きます。生活道路などは下水道整備の時にするからいいという主旨の発言でしたが、23区が拠出している財調45%の上下水道費用は、道路工事費用だったのでしょうか。

仮に決算が確定し余裕ができたからその声にこたえるのであれば、道路だけでなく、待機児対策はじめとした子育て支援・施設整備や在宅支援などの高齢者福祉・障がい者福祉・環境対策など優先すべき課題は他にもあります。補正予算計上は、こうした優先順位をより見えなくするという意味でも大きな問題があります。

以上の点から内容においても、また、補正予算という位置づけからも問題が大きすぎ反対いたします。