区民住宅賃料の値下げについて~企業オーナーの区民住宅家賃を下げられない問題とその理由~

区民住宅賃料値下げの報告がありました。
民間賃貸住宅の家賃が下がっていることへの対応で、それだけ聞くと良いように思うかもしれませんが、区民住宅の場合、次のような背景があり、公平性・税金の適正な使い方などの視点から問題が残ります。
みなさんはどのようにお考えになりすか?


区営住宅が低所得者向け住宅であるのに対し、区民住宅は、バブル崩壊後にできた「建設型区民住宅 特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」に基づき「大田区民住宅条例」によって運営されている、中堅ファミリー世帯(区営住宅より高い所得者層)のための優良な賃貸住宅です。
優良な賃貸住宅と言われているように、その内容については、国土交通省が定めた基準に従い建設されています。
大田区は、周辺民間賃貸住宅家賃が下がり、区民住宅の空き住戸が増えていることから、この区民住宅の一部の家賃改定を昨年行っています。
一部と言っている通り、大田区には、大田区が建設した区民住宅と民間が建設した区民住宅の2種類の区民住宅があり、そのうちの大田区が建設した区民住宅だけの家賃改定だけが行われました。
これは、、
①入居者間の不公平(民間のオーナーの区民住宅家賃が高いまま) ②区民住宅オーナーに不当な利益供与となっていないか
という点で問題があり、改定すべきと言ってきたところ、今回の改定(住戸によりばらつきがあるが1住戸¥5,000程度値下げ)になりました。
しかし、家賃は改定されたものの、オーナーとの合意が取れていないため、差額を大田区が負担する形になっています。
これは、区民住宅のしくみにその理由があります。
区民住宅は、民間オーナーの場合、大田区が建設費補助も行い、民間が賃貸住宅を建設します。その賃貸住宅について20年間区民住宅として使うという協定を提携つします。住宅の家賃は、入居しているいないにかかわらず、その9割以上を大田区が保証するというしくみです。
これにより、
③大田区が行う差額の支出も税金の使い道として適正か
という視点での検証が必要になります。

建設時の協定書には周辺相場とのかい離が生じた場合協議を行うとされています。しかし、家賃が下がり、現行家賃で入居者が減っているにもかかわらず、家賃を下げることは、建設費負担から考えうけ入れられないというオーナーの事情が通ってしまうなら、この協定が果たして適当だったかという問題にもなるでしょう。
*ちなみに、大田区は、平成5年にできた法律で、その直後に多く建設されていて協定は20年ですが、今回の協定期間終結をもって協定の更新は行わない方針です。

以下、背景を見ているとバブルの後始末的位置づけの事業のように感るのは私だけでしょうか。

更に加えて言うなら、住宅困窮者が多く、現行の低所得者向け区営住宅が足りなくて、毎回30倍~60倍程度それ以上にもなる状況で、果たして、優良賃貸住宅に公が介入する必要があるでしょうか、また、バブル崩壊期にあったと言えるでしょうか。 確かに優良賃貸住宅の整備は必要ですが、求められるのは、民間賃貸住宅ストックを優良化させるための誘導策であり、税金直接投入による『箱モノ』ではないでしょう。


大田区の区民住宅の背景・現状など
①民間が建設し、その建設費の一部を大田区が補助している。
②家賃は、建設費を元に設定されていて、民間建設者は入居者の有無にかかわらず、その定められた家賃の一定割合(大田区の場合9割以上)が入る借り上げ方式で運営されている。 そのため、入居者が入らない場合、大田区の支出は変わらず、大田区の収入が減ることになる。
③入居者は、当初数年間、周辺家賃より低い家賃設定(家賃補助)がされるが、その後、段階的に家賃が上がる仕組みとなっている。そのため、設定家賃が高い場合、周辺家賃より高い家賃を支払わなければならなくなる。
④法律の施行が平成5年であることからわかるように、この法律はバブル崩壊直後に作られている。
⑤「③④」のため、当初は安い家賃で入居できても、その後家賃があがり入居者が減るとともに、周辺家賃が下がっているため新たな入居者も入らず、このところ空き住戸が増えている。
⑥そこで、昨年、区民住宅の一部についての家賃改定を行った。  大田区は、大田区建設と民間建設の区民住宅の2種類の区民住宅があり、前回家賃改定したのは、大田区建設の区民住宅。
⑦大田区は20年でこの協定が切れることから、20年をもって協定更新は行わない方針。