大田区は、今年3月末に定年を迎えた二人の区職員と都職員を「一般職の任期付職員の採用に関する条例」に基づき採用しました。
 
 この条例は、高度の専門性を備えた民間人材の活用のために昨年秋に制定されたもので、今年4月に設置された観光課の課長を民間から採用するためと説明を受けています。
 条例設置の根拠は、地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する
法律(平成14年法律第48号)
によります。

 しかし、観光課長以外に、4月に3名の職員が採用されていますが、今年の3月に定年退職を迎えた二人の区職員と東京都の職員でした。

 2名の職員は、それまで行っていた業務を引き続き行います。
1名は羽田空港対策の統括係長として。もう一名は、障がい者の雇用の係長として採用されています。
 
 地方公務員が定年退職した場合には、再任用制度に基づき年収を低く抑えてその自治体に採用されるのが通常で、大田区の場合、再任用職員は、週に24時間、年収にして200万円程度が支払われます。

 ところが、今回の任期付採用の職員は、たとえば、係長では、これまでの年収とほとんど同程度の700万円から800万円程度が支払われるのです。
 
 民間の人材活用を目的にしながら、定年職員を採用することが、専門的な知識・経験を公務に活用することになるのでしょうか。
 たまたま、そのポジションにいたことで得た知識や経験を専門的知識・経験といってよいのでしょうか。
 他の職員に変えがたい場合でも、それは、区が職員の育成を怠ったことが原因であり、そのつけを、区民の税金の負担で補ってはなりません。
仮に、他の職員より優れた能力を持っていたとしても、大田区退職職員のための再任用(職員の定年等に関する条例:第四条参照
)
という制度を活用し、その間に人材育成すれば十分に足りるものです。

 他の定年退職者が、この再任用制度に基づいて4月から大田区内で働いている中、この二名だけが、民間の人材活用のために作られた制度である任期付採用を使って採用されることは、制度の本来の趣旨からも、また、他の職員との公平性から考えても区職員や区民からの理解を得ることは出来ないでしょう。
 
 総務省自治行政局公務員部公務員課に確認したところ、大田区の事例について適否を述べはしませんでしたが、官の中に無い知識経験を活かすための制度であり、定年延長のための制度ではないこと。法の趣旨に照らして判断してほしいというコメントを得ています。
 同時に、最終的な責任は、任命権者(大田区の場合には大田区長)にあるということです。

 東京都の区政課は、今回の大田区の任期付採用について「定年職員の再雇用はすでに地方公務員法による制度があり、今回の条例運用は現行制度をゆがめかねない」として2回にわたって区から聴取し「本来の趣旨に沿って運用してほしい」と電話で要請しています。

 一方、大田区では、あと1名、この4月から、任期付で東京都を定年退職した職員を採用しています。
 23区でこの制度を使い採用された職員は、現在、27人。
そのうち、東京都からは5名。国から12、3名が採用されましたが、これらの職員は全て、60歳の定年退職後に採用されています。

 制度本来の趣旨である、民間人材は、わずか10名。全体の1/3程度でした。

 こうした、現実の採用状況をみていますと、民間の人材活用と言いながら、現実には、国や東京都の天下り先になっている恐れがあります。

 法律制定から6年を迎えますが、大田区でも、昨年9月に条例化し、20年度から活用するように、まだ、条例化していない自治体も多くあると思われます。

 この制度は、選考という曖昧な方法で採用がおこなわれているところにも問題があります。
 定年延長が必要であれば、任期付採用制度ではなく、定年制についての議論をした上で、採用基準、期間、給与などについて明確にすべきです。

 今後、この制度が悪用され、大田区のように、公務員の定年延長制度とさせないこと、そして、地方自治体が、国や都道府県の天下り先とならない運用が求められます。

 
なかのひと