■大田区中小企業融資基金■
これは、大田区中小企業融資基金条例に基づき、区内の中小企業者に対して事業経営に必要な資金の融資を円滑に行うことにより、その経営の安定及び改善並びに企業体質の強化を図るために設置された基金で、区は、現在50億円を、利率0で区内に店舗を持つ25の金融機関に、その融資残高に応じて900万円から13億2200万円にわけて預け入れています。
■信用補完制度とは■
昨年度末の大田区の融資残高は、535億円ですが、このうち、507億は信用保証協会の保証付き融資で、区独自のあっせん審査会を通じた融資は28億円余となっています。
信用保証付き融資は、国や東京都の預託金や信用保証制度、それに加えて、日本政策金融公庫の保険によって成り立っている信用補完制度と言われる融資制度で、大田区が制度を支えているのではありません。
企業からの返済が不能になった場合には、信用保証協会が金融機関に対してその債務を肩代わり(代位弁済)し、信用保証協会に対しては、その肩代わりした債務の一定割合が日本政策金融公庫から保険金として支払われることになります。
景気が悪化すれば、返済不能による信用保証協会の代位弁済額が増加しますが、政府の二次補正予算に日本政策金融公庫を通じ信用保証協会に対し1兆円の資金支援が行われると先日の新聞報道にあったように、信用保証補完制度のしくみの中に、大田区は介在していません。信用保証協会の審査・調査により、保証が承諾されるか否かが決まるのであり、大田区が預託するかしないかが、保証の承諾や金融機関の利率や貸し付け決定に影響することはありません。
■23区の金融機関への預託状況■
23区の預託金の状況をみてみると、大田区の預託額50億円は23区の中でも一番多くなっていますが全く預け入れていない区が12区とほぼ半数に上っています。
全く預け入れていない江戸川区の貸付残高が23区中一番多く同じく預け入れ0の練馬区が二番目になっています。大田区が、昨年度行った緊急融資0金利により、融資が増えたように、借り主への利子補給や信用保証料補助などが融資額に影響するのであって、金融機関への預け入れ額を増やすことが、貸出金利を下げることや貸出枠の拡大につながらないことがわかります。
預託は、資金調達が困難な時期には、資金調達力によって歓迎する金融機関もあるのかもしれませんが、結果として、大田区の融資が借主=つまりは中小企業者にとって有利にならなければ効果とは言えず、ましてや、金融機関の金余り、調達金利の超低金利の現状において、基金の積み増しは大田区の中小企業者への融資政策への意欲は示せるものの、実効性に欠ける施策であると言わざるを得ません。
■基金の有効活用■
仮に、現在の基金50億円を年利1%で運用し年間5000万円を今回の「ものづくり経営革新緊急助成」に上乗せしたり、利子補給を増やしたりと他の施策に活用することができるのではないでしょうか。
あるいは、本旨にかえり、大田区のあっせん融資のための基金に特化し、預け入れの見返りに、あっせん融資の貸し付け金利について金融機関と特段の低金利へむけて調整するなどという考え方もあるかも知れません。