社会教育施設としての課題と選定の問題点

 平成19年に導入された大田区立図書館の指定管理者ですが、指定の3年間を経過し、新たな事業者を指定する議案について第四回定例会において議決しました。

 私は、3年前の導入当初から、図書館の指定管理者には反対してきましたが、3年を経過した現在の図書館指定管理者は改善されたでしょうか。

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 図書館は、当初から指定管理者を導入できた施設ではなく、その後、文科省が導入できるとした施設です。

■図書館指定管理者の課題/国会での文部科学大臣の答弁より■

 しかも、昨年の図書館法改正の際の国会の議論において、当時の文部科学大臣が

 (自治体での)指定管理者制度の導入率が低い。指定期間が5年くらいと短期であるため長期的視野に立った運営が難しい。職員の研修機会の確保や後継者育成の機会が難しいという問題が指摘されている。指定管理者は図書館になじまない。
 自治体が判断することであり、国が、やれとかやるなとかいうことではないが、量で測れない住民サービスや職員の質向上、後継者育成などへの懸念が払しょくされて導入されるべきである

と答弁しています。

それでは大田区図書館の指定管理者は、こうした懸念を払拭できているでしょうか。

■大田区の図書館は、登録者数と貸出冊数が評価の基準■

大田区は、図書館指定管理者の募集要項において、サービスを登録者と貸出冊数の増加とモニタリングの結果により総合的に評価し選定の際の加点項目とするとしています。

しかし、現在の大田区のモニタリングは、アンケートも施設に回収をまかせているため、指定管理者に好ましくないアンケート結果を削除している可能性も否定できず、客観性を確保した評価に値するツールとしては不十分です。

また、図書館の良し悪しは、登録者数や貸出冊数の伸びだけではかれるものではありませんが、あえて、他の評価事項は掲載していないなかで「登録者数」と「貸出冊数」を評価項目としてあげているため、人気のある流行小説など貸出冊数をかせげる本を置き図書館の評価を高めようとするなど選書に影響する可能性があります。

選書のしくみをみても、第一次選書は指定管理者である各館からあげられてくるため、最終的な決定は直営である大田図書館が行うものの、貸出冊数がかせげるか否かを選書の基準にすることも可能です。

■唐突な図書館の目標■

 また、大田区は今回の事業者選定にあたり、目標を「広く活用される図書館」としていますが、図書館のあり方の方針も指針もないなか、あまりにも唐突な目標です。

 こうしたことから、図書館が単なる貸本屋に過ぎず、社会教育としての位置付けに著しく欠けていることがわかります。

■職員の質向上/研修・後継者育成■

 職員の質向上についても、今回の事業者選定で14館のうち6館は事業者が交代し、わずか3年で職員が入れ替わることになります。
 これまで経験を積んできた職員のスキルは来年度からの図書館運営に反映することはできません。

 しかも大田区は「大田区立図書館指定管理者管理運営の基準」の中で研修・訓練にかかわる費用は指定管理者の負担としています。研修内容も業者まかせになっていて、研修してもしなくても、事業者の評価にはかわりないため、指定管理者導入図書館のスキルの水準を一定以上確保できる保証がありません。

 引き継ぎ費用も指定管理者側の負担としていますが、事業撤退する事業者が利益に繋がらない引き継ぎを十分行えるかどうかは、不安の残るところです。

■選定の競争性は確保されているか■

 事業者選定も、応募事業者が前回の11社から6社に減り、競争性が著しく低下しています。
 昨年4月現在で全国の図書館のうち指定管理者を導入しているのがわずか7.1%にしか過ぎないことも競争性確保に繋がらない一因かもしれません。

 個別の図書館でみると、一見、数社間で競争しているように見えますが、一社が5図書館まで応募できるルールになっており、見掛け上の競争性は確保されているものの実質的な競争性ある選定になっているかは疑問です。 

 そのうえ区は応募資格として「応募予定者説明会」への参加を義務付けていますが、見方によれば業者間の事前協議の場を区がわざわざ設定したともとられかねない状況で、談合防止のため電子入札を導入した流れに反することです。

 図書館の指定管理者の導入は、社会教育の視点や業者間の競争性の確保も乏しい選定であり反対しました。
 

なかのひと