周辺区民が体育館隣接地を不当に高額に取得したとして大田区を相手に起こしていた住民監査請求が、昨日5月24日棄却されました。(5/24付読売新聞・産経新聞都民版に掲載)
 区は、何をもってこの土地取得を違法もしくは不当ではないとしたのでしょうか。

 今日は、今回の監査結果の問題、そして、監査制度そのものの問題・限界について考えます。

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■監査請求の内容■
 区は、大田区東蒲田1-17-10の宅地653.92㎡を3億9,867万9千円、建物1,288.31㎡を1億1,584万7,550円で購入し、また、その解体費用3,990万円も区が支払っています。
 また、マンションには区の補助金を受け購入した自治会館が含まれているが、売却したのであればその補助金を返還していません。

 このことについて、周辺住民約60名は、以下を理由に不当であるとしてうったえていました。

①必要性の無い土地を購入
 土地取得前と取得後に何ら設計変更はなく、体育館建設に必要と言えない

②高額に購入
 ・周辺の取引事例から高額
 ・土地取得が目的であるにもかかわらず、取得直後に解体し全く使用しない建物を高額で購入
 ・通常、売主負担である上物解体費用を区が負担

③結果として、住民から提出されている「要望書」に沿った価格・条件で購入していること

④マンションには区の補助金を受け購入した自治会館が含まれているが、売却したのであればその補助金を返還すべきではないか

■監査結果とその理由■
 これに対し区は、請求を棄却しました。

 以下が、区の棄却した理由です。

不当な財産の取得でない理由
①建物の設計については、土地・建物の取得が遅れたため直接的に影響を及ぼすことはできなかった。
しかし、
②体育館の利便性の向上と多目的な運営の確保。
③周辺地区の防災機能や交通安全性の向上などについては、相当な効果・影響があると認められる。

不当な公金支出でない(=高くない)理由
①流通性が認められ財産価値が大幅に低下しているとは言えない
②更地取得が多かったことは事実だが合わせて建物を購入することを区の規程などで特段制限されているものではない。体育館使用の利便性向上や周辺地域まちづくりへの寄与などの明確な購入目的があり、一般の土地・建物の取引として区分所有者と区の契約条件を掲げ交渉した結果、売買契約が成立したものであり正当
③売り主側が希望として述べた要望に沿った価格ではなく、不動産鑑定士による鑑定評価を参考として「大田区財産価格審議会」に諮問し答申された価格
④議会で議決・承認されている

 区民が指摘した不当性に対し、監査委員は、これまで行政が示してきた、あるいは、住民が情報開示により明らかにしてきた内容をもって、その正当性を主張し、請求人の請求を却下しています。監査委員による、独自の調査も、また、専門的な知識による判断も全くないまま、 行政の主張を全面的にみとめているのです。

 監査請求した区民が求めたのは、必要だからと言って周辺の取引事例や、これまでの区の慣例を超え、売主を優遇する形で土地を購入することの是非です。
 そのための根拠となる、区の意思決定過程の記録や不動産鑑定結果。財産価格審議会に諮問した資料や審議の内容、議事録、答申であり、必要とするなら、その購入の要件です。
 
 今回の監査結果をよしとすれば、区内に、区が購入すべき土地は数え切れないほど出てくるでしょう。
 東蒲田の事例では購入しながら、それらを、購入しない理由を区はどのように説明するのでしょうか。

 また、監査委員は、町会会館補助金返還の件については、全く回答していません。

■監査委員制度の問題■

 地方分権推進会議の中でも取り上げられていますが、現行の監査委員制度は、様々な問題があります。
 特に、今回のような住民監査請求に対しては、委員が首長から選任されており、また議会の議員が委員となっていることなどから、行政の決定事項に対してそれを覆す結果をだすことができす、形骸化しています。

 また、今回の土地取引適否の判断という専門性を要する監査の結果からもわかるように、公認会計士と議員という全く専門外の委員によって、しかも、積極的に調査することもなく、請求人の提出した資料だけで判断されているというのが、現行の監査の実態です。

 新聞報道には、訴訟という言葉もありましたが、税金の使い途の判断を、議会でも行えず、監査制度でもだめで、訴訟に至らなければならないのだとすると、私たちの税金の使い途の決定方法には大きな問題があると言わざるを得ません。


なかのひと