ちょうど一年前の第四回定例会において、図書館14館の指定管理者の指定が行われました。
私は、サービスを「登録者数」と「貸出札数の増加」と「モニタリング」により評価しているが
・登録者数や貸出札数の伸びだけで評価できないこと
・モニタリングが不十分であること。
・図書館のあり方、方針が無いこと
・事業者の指定が短期間でかわるためスキルや経験が蓄積されないこと
・競争性が著しく低下したこと
・事業者説明会への参加を義務付けているが見方によれば談合を誘発しかねないこと
などを理由に反対いたしました。
今回の入新井図書館の指定管理者指定はどのように行われたのでしょうか。これらは改善されたと言えるでしょうか。
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■先送りされた図書館指定管理者選定の課題。
改善されたのは「モニタリング制度」だけ■
私の提言後の本年2月、区は専門家をいれたモニタリング委員会を発足させ、モニタリングの改善に努めました。
今回の図書館は、初めて指定管理者を導入する施設で、モニタリングは直接事業者選定にかかわりませんがこのことは評価いたします。
しかし、昨年私が図書館14館の指定にあたり指摘した他の部分について改善されなかったことは問題です。
■指定管理者制度だから必要な意思決定過程の情報公開■
指定管理者制度は、契約ではなく「行政処分」のひとつである「指定」で相手をきめるため、区と業者との関係は、対等ではありません。実際に行われるかどうかは別にしても期間途中での区からの一方的な指定の解除もありうるなど、極めて自治体側に使い勝手のよい制度です。だからこそ、自治体が恣意的に指定することの無いよう、他の委託契約とは異なり、指定に議決を必要とするのです。
しかし、この図書館や本委員会に付託された母子生活支援施設など、今回の第四回定例会において、指定管理者の指定の際に委員会に示された情報のほとんどは、結果の情報であり、意思決定過程の情報はありませんでした。
審査項目や配点、審査内容は、議案審議における重要な情報であり本来であれば、委員会審議の際に、示されるべきです。
■図書館だけ明らかにされなかった審査項目や配点など■
それでも、個別に資料請求したところ出していただくことができた施設が多かったのですが、図書館の指定に関してだけは、事業者募集の際に、公表された資料と結果情報しか提示されませんでした。
特に今回の選定では、事業計画内容における得点が0.5点しか差が無いため、評価項目とその配点が適正だったのか調査が必要であると考えましたが、明らかにはされませんでした。図書館に指定管理者制度を導入した第一回目の指定の際に、事業者名は出さずA社B社C社としてあったもののプロポーザル資料まで公開されたのに比べ、情報公開が大きく後退したと言わざるを得ません。
■競争性の無い特命随契は公開し複数応募は非公開■
図書館以外の施設は、男女平等推進センターを除き特命指定。男女平等推進センターは応募が1社しかありませんでした。特命指定と1社しか応募しなかった施設の指定については情報が開示されるが、複数応募した図書館だけは選考過程が公開されないのでは、選考過程に何があったのかと区民に疑念を持たれかねません。評価項目と配点さえ出せないとする教育委員会の姿勢には疑問を持ちます。
これでは、指定管理者の指定を議決事項とした主旨をかなえておらず、議会のの関与は形式的なものにしかなりません。
■失われつつある大田区図書館の遺産■
過去における大田区の図書館行政は質・量ともに定評がありましたが、指定管理者制度を導入したことで各図書館が持っていた評価や特色も消えつつあります。入新井図書館は児童書に定評がありましたが、募集要項には児童書について言及はありませんでした。
区民の文化や教養に関わる図書館が単なる貸本屋になることを危惧するとともに、事業者選定における透明性の確保を求め反対といたします。