経営効率化により解決できる課題、新たに生じうる問題

大田区は、第一回定例会において特別養護老人ホームに利用料金制を導入する条例改正の議案が提出され、賛成多数で可決しましたが、私は、以下の理由から反対しました。
 
 今日は、大田区の「特別養護老人ホーム」への利用料金制の課題について考えます。

 現在、大田区の特別養護老人ホームは
   ・区立が6施設 
   ・民立が5施設
あります。

 そして、大田区立の特別養護老人ホームは、施設の管理運営を、民間事業者に管理運営させる「指定管理者制度」を導入し、「社会福祉法人 長寿園」が管理・運営しています。

 今回の条例改正は次の二点です。
①これまで、大田区が、特別養護老人ホームの運営に当たり、委託費用として一定金額を支払っていたが、介護保険の報酬を直接事業者の収入とすることができるようにする「利用料金制度」を導入する
②入所の承認や取り消しを区長だけでなく、指定管理者にも権限を与える

【利用料金制とは】
 利用料金制は、「公の施設」の使用料(利用料金)を指定管理者の収入として
収受させることができる制度です。
 利用料金収入と経費支出の差額である余剰金を指定管理者の収入とすることができることから、経費の縮減を促進するインセンティブ効果が働き、サービスの向上が期待できるといわれています。
 
 確かに、区立特養は、区からの委託費で運営しているため、民立に比べ、経営的に恵まれている部分があるでしょう。結果として、非効率な運営をしている部分もあり改善の余地もあると言えます。

 しかし、区は、平成19年度の特別養護老人ホームの収入と支出の差額に1千万円上乗せした2億6千万円を予算計上すると説明しています。経営効率化を目的としながら、支出を上回る収入を確保しており、区が何をもって経営の効率化とするのか明確に示されていません。

 当初から、黒字が確保された上での経営などありうるのでしょうか。こうしたあいまいな委託料=すなわち実質は補助金の設定で、黒字分がすべて指定管理者の収入となってしまうとするならば、区民の理解は得られないでしょう。

【利用料金制で解決できること、できないこと】
 たとえば、区立特養は、これまで、ベッドに空きが生じてから、次の利用者の入居準備を開始していたため入居するまでに時間がかかり、利用率が低くなっていましたが、利用料金制が採用されれば、あいているベッドからの収入は見込めないわけですから、経営改善につながることが期待されます。

 しかし、現在、区立と民立の特養では、医療的ケアの必要な方の割合に大きな差があります。(区立特養では26%ですが、民立特養は14%で、その差は12%)
 また、身寄りのない方などの受け入れを民立が敬遠する傾向にあります。
 
 こうした数字の差が、人手が必要など効率性・経済性に起因したものであれば、利用料金制の導入により、大田区すべての特養で受け入れられなくなる可能性があります。

 区は利用料金制導入のメリットして、効率化とともに、サービスにおける創意工夫ができると説明しています。
 しかし、プールのようにサービス向上することで利用者数を増やし売り上げを更に伸ばせる事業と異なり、定員を増やすことができない現状の特養において、サービス向上や創意工夫は、すればするほど費用がかさみ経営の効率化とは相反する結果となります。
 仮に、自主事業を創意工夫と呼ぶなら、それは、利用者負担の増加にもつながり、区立特養としての在り方の検証なしにできることではありません。

【利用者の選別にならないか】   
 しかも、今回、区は、利用料金制を採用する変更だけでなく、区長が持っていた施設への入所・通所の承認・取り消し業務権限を指定管理者にも与える変更を行っているので、施設の判断で受け入れを決められるようになるのです。

 利用料金制を採用し、施設側に効率性を求めると同時に、承認・取り消し業務権限を与えれば、利用者の選別が始まり、困難な利用者を排除することにならないでしょうか。 
 特養の入所基準にも問題がある現状での利用料金制導入には、問題が多すぎます。

 利用料金制導入の前に、区立特養の位置付けや民立とは異なる役割について明確にしたうえで、適正に運用されるよう準備を行わなければ、厚労省のサービス提供を拒む正当な理由「(入院治療の必要がある場合その他)入所者に対し自ら適切な指定介護福祉施設サービスを提供することが困難な場合」が更に拡大解釈される恐れがあるのです。

【議会のチェックからもはずされ・・・】
 最も大きな問題のひとつは、指定管理者制度の利用料金制になることで、歳入・歳出から除かれてしまうため、議会の関与が及ばなくなってしまい、事業の透明性が著しく低下してしまうことです。

【区立特養の位置付けを明確に】
 区立・民立で大きく異なる、医療的ケアを必要とするかたの入所割合の原因がどこにあるか調査を行うことが必要です。
 そのうえで、民立特養に対する、大田区立特養の役割を明確にしなければなりません。

 現状の問題・課題を利用料金制度導入だけで解決できるというのは非常に安易であり、準備不足です。経営の効率化は図られるかもしれませんが、ケアの困難な利用者が排除される可能性が生じます。

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=私の議会での反対討論=

 
なかのひと

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