「アスベスト被害と自治体行政」②

【アスベスト被害者の補償のかかわる問題】
 
 今年、3月にアスベスト新法が施行され、労災対象外の人が石綿が原因で中皮腫や肺がんになったと認定された時には医療費や療養手当てが支払われ、遺族には弔慰金として280万円が支払われることになりました。しかし、この内容は「労災保険」や「公害健康被害補償法」に比べて大きな差があります。
 
 それは、この法律が「補償」ではなく「救済」という概念からきているためです。
 「補償」させるためには原因責任を負うものを特定しなければならないがそれが現時点では判然としてないというのがこのアスベスト新法の根底にはあります。
 自治体政策研究会のプログラムの中に、疫学調査や原因と発症との因果関係についての報告が行われているのもそのためです。
 
 仕事に起因した発症であれば使用者が責任を負うにもかかわらず、事業所周辺の住民の被爆は、その会社が既に存在していないケースや、一般の空気中に存在するアスベストによる被害なのか、その事業者からのアスベストによる被害なのかの区別が疫学的にしかつけられないことから「救済」になってしまっているという非常にもどかしい現状がここにあります。

 現在の不十分な被害者への「補償」を十分なものにしていくためには、「救済」ではなく、「補償」を制度化していくことが必要です。

 現在、周辺の被害者への救済金の額が、企業により格差があることも問題になっています。クボタ2500〜4600万。ニチアス1500〜3000万。竜田工業1000〜2000万。
現在の救済金が最低限の救済として不十分な上に、企業間の救済金に企業の体力の差が表れる状況もあり、この救済制度の見直しが求められます。
 
 尼崎市議会では、昨年の7月と12月に国への意見書が、そして同時期に市長から要望書が提出されています。これらの中で、アスベスト被害の因果関係特定の困難であることを視野に入れて「公害健康被害保補償法(公健法)」を例に挙あげて公害としての対処を求めるよう提案して取り上げられ、同様に兵庫県も「公健法」の適用を要望しています。
 
 国では、聞き取り調査などを整理すると

1.アスベスト被害の範囲が「公健法」にいう「相当範囲にわたる著しい汚染」の「相当範囲」該当しない
2.原因責任を負うべきアスベスト試用企業の中に既に存在しない企業がある
3.アスベストは一般に広がっており、自宅の建材のアスベストで発症したようなケースは「公害」とはいえない

を理由に適用しないといっています。

 暴露から発症までに数十年という長い時間がかかるうえに、中小零細企業などからの飛散による暴露は企業が存在しないなど特定しにくいという問題もあります。
 また、今後予測される、自宅などの建材からのアスベストによる発症は果たして個人の問題として受け入れるべきものでしょうか。
 アスベストの被害は、既に諸外国で認識されていながら、国として採るべき方策が遅れ発症を招いたとするならば、アスベスト被害は、ぜんそくなどと同様、公害として認定すべきものではないでしょうか。