昨年、大田区大森南4-9でアスベストを扱っていた工場の跡地周辺の住民と元住民にアスベストが原因とされる症状の患者がでていることが明らかになり、大田区では、20年2月から3月にかけて健康調査を行いました。
 
 区は、専門委員会を設置し調査を行ってきましたが、先日(5月12日)、専門委員会の提言書が公表されました。

【提言書】

1.労災認定や、石綿県境管理手帳の交付など国からの救済を受けられない場合で、胸膜プラークの所見が認められる区民については、定期的な受信の機会が設けられることが望ましい。

 これは、今回の検診により、胸膜プラークの所見が認められた43名について引き続き検診をするということです。
 区の健康調査に申し込んだのは916名。うち調査した方は893名でした。
 この893名のうち、43名が胸膜プラーク(=アスベストを吸ったことのある人に見られる。胸膜プラークがあるということは過去にどこかでアスベストを吸っているとみなされる)があったという結果になっています。

 区の提言書は、「今回、健康調査をしていない人」「今回の調査では発症していないが将来発症するかも知れない人」への対応については触れていません。

 

2.今回の調査結果からは環境ばく露による可能性のある胸膜プラークの有所見率はそれほど高くはなかったが、解く場綱アスベスト検診の実施について、今後、国の動向も見て対応することが望ましい。
なお、相談窓口の充実、医療機関における読影技術の向上などに積極的に取り組むことによって、区民のアスベストへの不安解消を図っていくことが望ましい。

 提言書で、有所見率が高くないとしているのは、他の地域で検診を受けた人のうち、どれだけ胸膜プラークが見られる人がいるかという割合によっているそうです。
 鶴見のA&Aマテリアル周辺のアスベスト問題で、319人が検診して胸膜プラークが36名という結果などと比べて受診者中の胸膜プラーク所見のある人の割合が少ないということでしょう。

 有所見率でみるのか、胸膜プラークの見られる人数で見るのかという問題。
 分母となった受診者数は、周知やマスコミの取り上げ方にも影響されるのではないでしょうか。

 また、今回調査した結果には、当初、大森労災病院が大田区に報告した中皮腫の死亡者1名と胸膜プラークの7,8名が含まれていません。

 
3.石綿健康被害救済法など国の救済措置について広く周知することが望ましい。

 今年の8月以降に、環境再生保全機構が、過去に中皮腫で死亡した方のデータを発送する予定です。
 アスベストが原因と言われている中皮腫で亡くなった方の中には、原因がアスベストであることをご存じない方も多くいらっしゃいます。
 国は、そうした方たちの救済措置として、死亡補償費用を予算計上していますが、1/3しか支払われていません。
 死亡データが送付された場合、過去にアスベストを扱う職業についていれば労災認定され、労災保険で補償されますが、環境被害の場合には、補償額も異なります。
 地元自治体として、死亡データを受け取った方たちが補償申請できる状況を作るための聞き取り相談体制を作っていくことが必要になるでしょう。

 2009年3月までの時限措置のため、早急な対応が求められます。

4.健康調査において、区外居住者への周知や対応、有所見者の救済措置等で区単独で行うには限界があることが明らかになった。
今後は健康調査の結果なども踏まえ関係機関と連携を図るとともに、国に対しては救済措置の充実など働きかけていくことが望ましい。

 アスベスト被害は、アスベストを吸ったことと中皮腫や肺がんなどの疾病との因果関係の立証に認められていない部分もあり、立証が困難で、救済措置にはまだまだ不十分なところがあります。
 今後は、「ぜんそく」などと同様に、公害認定していかなければならない問題であり、今回の提言所の通り、一自治体で対応できる問題ではありません。

 クボタの被害者とその周辺の支援者の運動が、クボタという企業を動かし、公表につなげ、アスベストの環境被害が認められました。
 企業の工場での使用状況と周辺被害者との関係が明らかになったからこそ、環境被害という現実を国が認めざるを得なくなったのです。
 
 大田区で認められた環境被害の実態をアスベスト救済につなげるために、環境省が行っている健康リスク調査をする必要についても検討していかなければなりません。

 鶴見のA&Aマテリアルのアスベスト被害に伴い、横浜市は、環境省に健康リスク調査を要請し、アスベストと被害者との関係について詳細な調査を行っています。 


なかのひと