第三回定例会において、入札で選定された土壌処理を行う業者を議決し、工事が始まっています。
議決に当たり、区は、十分な飛散防止策をとった上で、土壌処理すると説明しましたが、先日、現地を確認したところ、水をかけたり、密閉したりするなどの飛散防止策をとらず、応札業者が土を掘り返していたことが判明しました。
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早速、環境保全課と施設管理課に連絡し確認したところ、飛散防止策をとらず土を掘り返したのは事実でした。
区の説明のよれば、
①応札した事業者が、トラックのタイヤに付着したアスベストの混じった泥を洗い流す場所の設置のため土を掘り返してしまった。
②本格的な工事が開始される前であり、区もこのことを把握していなかった。
③実際の土壌処理は、応札事業者が下請けに出す事業者が行う。下請け業者は十分なアスベストの知識があるので大丈夫。
とのことでした。
現在(10月22日の時点)、工事はストップしています。
アスベスト処理に係る知識が十分でない事業者が行うこの土壌処理工事は果たして安全に遂行されるのでしょうか。
第三回定例会において、このアスベストに汚染された土壌処理を行う事業者を決定する議案に、私は反対しています。
参考まで、以下に、反対した理由を述べます。
■アスベストにより汚染した土地を分割して発注する理由■
議案は、本来、この土地全体を一体的に土壌処理すべきところ、産業施設用地部分と出張所部分とに切り分け、前者はアスベスト処理として発注し後者は出張所建設工事として発注、その後、請負業者がアスベスト処理を下請けに出すという方法をとっています。
区は、専門家に相談しながらこの工法を決定したと説明していますが、土地を分割し土壌処理を別の業者に発注するのは専門家のアドバイスとは関係なく区の判断です。
飛散性アスベスト処理に係るこのような建設元請けへの一括発注は、安全性確保の点から国土交通省も問題視しています。建設を急ぐのではなく、まず安全確保を優先した土壌処理を行う必要があります。
■安全対策=飛散防止策第一の契約になっているか■
しかも、区は、競争入札でありながら、土壌処分先施設を特記仕様書の中で特定業者を指定しています。
アスベスト処分施設(特別管理型処分場)は、環境省のデータによれば、国内に60か所あり、処分場を特定する理由が見当たりません。
仮に、特別な技術を持った事業者であれば、随意契約を行うべきですが、元請け事業者は、区内の建設事業者や土木事業者などから入札により選定されていて、アスベスト処理に係る法令遵守以外にアスベスト処理に係る特別な処理能力を求めていません。
■汚染処理費用は誰が負担すべき?■
また、大田区は、土壌にアスベストが放置された原因について全く調査しようとせず、このまま、処理して終わらせようとしています。
しかし、元所有者である旧宮寺石綿は、経済産業省(当時の通商産業省)のアスベスト製品のJIS規格策定の際の委員会メンバーであり、業界内での取り扱い量や影響力は小さくなかったことが推測されます。
区は、工事説明会においても旧宮寺石綿と放置されたアスベストの関係を否定してはいません。
1977年改正の規格では、製品の解説の中で「石綿の粉じんを長期にわたって吸入し続けると健康に障害を起こす恐れがある」が「石綿は産業上極めて有用な工業資材であり使用を中止することはできず予防措置を講じて活用を図らざるを得ない」とまとめているなどアスベストの有害性を認めたうえで対策を促す記述が含まれています。
旧宮寺石綿が、JIS規格策定メンバーの一員としてアスベスト有害性や予防策について知りえた立場にいたことや当時のアスベスト製造業界内での位置付けから考えれば、大田区の調査は不十分であると言わざるを得ません。
■今後のアスベスト飛散防止のために■
また、同じ区画に隣接する旧宮寺石綿跡地の土壌にもアスベストが放置されている可能性が無いとは言えません。
区がこの土地の処理だけに終わらせれば、アスベストが土壌汚染防止対策法の対象物質で無いことから、隣地の今後の土壌活用によっては解体・建築などの際に飛散させてしまう恐れがでてきます。
原因を解明することは、結果として周辺にいる環境被害者救済を発展させる可能性もあり、今回の土壌処理によって全てを終結させようとする区の姿勢には問題があります。