高さにかかわる建築紛争を予防するためとした大田区の絶対高さ制限の検討ですが、予防にならないのではという質問に、大田区も建築紛争は高さだけでないと、高さにかかわる予防にならない高さ制限であることを半ば認めた形です。 それでは、大田区の絶対高さ制限導入は、いったい誰のためでしょう。

  

 今日は、大田区の用途地域ごと、絶対高さ制限案の数値をもとに、絶対高さ制限を導入した場合に、どのような「効果」「影響」があるのか考えてみたいと思います。
【規制緩和後の高く建てられる数値が基準】
 用途ごと容積率ごとの高さ案を一覧表にしましたので、大田区の用途地域図を参照にお住まいの地域の用途や容積率(○内上の数字)を確認しながらお読みください。  
 先日、報告した通り、大田区の絶対高さ制限導入の考え方は、建築基準法改正後の、共有部分の容積率不算入(階段や廊下、エレベータなどを容積率に入れなくてよい)により建築可能となった高さをもとに計算されています。
 建築紛争を防ぐために高さ制限を導入するとしていますが、基準法改正後の平均高さを元に計算していますので、仮にこの高さが絶対高さとなると、この高さまでは建てて良いということになり、行政がお墨付きをあたえるようなものです。

【紛争予防にならない「紛争予防のための」絶対高さ制限】

 実際、この部分について、説明会で大田区に、「環境悪化と高さに伴う建築紛争を未然に防ぐのが目的としているが、この絶対高さ制限では、規制緩和後の更に緩和された数値が基準になるため紛争予防にならないのではないか。どう建築紛争を予防できるか」と確認したところ、「紛争は高さだけではない」と、建築紛争を予防する制限であると答えられませんでした。
【うまらない規制緩和前と後の建築物の高さのギャップ】
大田区の高さ制限の案では、建築基準法改正前に建てられた建築物との高さのギャップはうまりません。
実際に、大田区が検討している用途地域ごとの高さを計算する基準となっているのが表、左の「理想的な値」です。この数値は、基準法改正後10年間の標準的けんぺい率から割り出した建築可能階に標準階高をかけ2割増ししたものです。2割増しは、容積率不算入の規制緩和によりそれまでより2割高い建築が可能になったからだと大田区は説明しています。 しかも、標準階高は、住居系で3.04と計算していますが、商業系で4.04を採用しているため、商業地域に共同住宅が建設されれば、更に高い建築が可能になる計算です。
【残る戸建て住宅と共同住宅の最高2倍以上の高さのギャップ】   ここで、注目しなければならいのは、共有部分不算入のメリットを受けられるのは、共同住宅を建築する時だけということです。 個人住宅は、当然ですが、共有部分などありませんので、規制緩和により高く建てられるわけではありません。2割り増しは、共同住宅建築者のための数値です。
しかも、大田区は、この「理論的な値」では、容積率と高さの逆転や地域の実情とのかい離が生じるため、そのかい離をうめるためにさらに「基準的な値」を計算しています。 「地域の実情のかい離」という言葉から、既存不適格(違反建築)にならないように、実態に合わせて高くしたものと推測できます。
この数値を建築基準法改正前の高さと比較してどのくらいの割合になっているのか、区のデータをもとにおおよその計算をしたのが赤字の部分です。   たとえば、容積率200%の住居地域22mの高さ制限案は、規制緩和前の1.76倍の高さの建物まで建てて良いと言う数字です。
   【調和した街並みを望めない余裕のありすぎる高さ制限と共有部分容積率不算入】 
規制緩和により、異なる土地利用の制度が同じ用途地域に混在するようになりました。
共有部分不算入が戸建住宅との高さのギャップをうみます。しかも、高さ制限がゆるければゆるいほどそのギャップは広がります。
共有部分不算入という投資資産の不動産価値を高め、投資を誘導した政策の功罪についても考えなければなりませんが、いま、私たちがまちづくりとしてなすべきは、共同住宅と戸建住宅とのすみ分けであり、調和したまちなみをどう作るかでしょう。
規制緩和がまねいた影響を全体でみまわし、改善できるのは、区民ではなく行政です。 区は、地区計画で解決することは困難だから絶対高さ制限を導入すると言っています。区でなければ解決できないことを区はわかっているのです。 であれば、なおさら、区域ごとの丁寧な土地利用の可能性の点検のうえの高さ制限が求めらえますが、大田区は、高さの制限を用途地域で一律に定めるという乱暴なことをしています。
規制緩和のつけを区民にまわさない対応が区に求められます。
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ここで、私は、疑問につきあたりました。
大田区は、なぜ、絶対高さ制限を、今、導入しようとしているのか。
建築紛争を予防すると言っているが予防にはならない。
余裕のある制限である。建てたい人にとってもさほどの影響はでない。 しかも指定対象除外区域も設けている。
それでも、大田区が絶対高さ制限を、今、導入しようとしているのはなぜなのか。  絶対高さ制限を導入したということで、環境に配慮した(ように見せることができる)。 あえて言うなら絶対高さにすると、ここまで建てて良い高さが確定し、住民が異を唱えられなくなる可能性がある。(紛争が面倒な区や業者にとっては効果かも。)
かもしれませんが、
【固定資産税評価額と絶対高さ制限】
私は、固定資産税に影響するのではないかと考えています。 固定資産税に影響するということは、賃料に影響するということでもあります。
東京都の固定資産税を評価する方法をみると、利用上の「法的制限などの状況」に応じた各地補正率とあります。高さの制限は、その土地を良くする評価と位置づけられていますので、固定資産税評価が上る可能性があります。
居住用資産としてすみ続けようとする区民にとって、絶対高さ制限の導入は、建て替えるときに大きな建物を建てられるようになるわけでもなく、なんら変化はありませんが、固定資産税や賃料が上がる可能性があるということです。しかも、周囲では、地域によってはそれまでの高さの2倍近い建物が大田区のお墨付きを得て建つ可能性が出てきます。
固定資産税評価がかわるとすると、最終的にメリットを受けるのは、固定資産税の入る大田区と東京都ということでしょうか。
固定資産税の評価替えは、増税と言わなくても出来る税収増の一つです。 オリンピック招致が決まり、不動産がバブルの様相を呈してきました。土地の評価とともに、建物の評価も上がるということで、ここにも固定資産税収増が見込まれます。
その視点で言えば、絶対高さ制限の除外地域の住民は、固定資産税の上昇要因がないというメリットがあると言えるかもしれません。
区域をみると、再開発の既に行われているところやこれから予定されているところ(①②③)や既に、高層建築が建っているところ(⑥⑦)に加え、都営住宅等東京都の施設とその周辺(④⑤⑥)、民地でも大規模開発が行われる可能性のある土地(⑤⑥⑦)などが適用除外となっています。
①蒲田駅周辺地区 蒲田駅前東西 グランドデザイン有 ②大森駅周辺地区 大森駅東西 グランドデザイン有 京浜急行駅前再開発のうち西側 ③糀谷駅周辺地区 京急駅前再開発 ④大森東地区 内川の河口北の区営住宅都営住宅及び公共施設の集中する区域と南の一部の区域  ⑤東糀谷地区 都営住宅及び区の公共施設とその周辺 ⑥下丸子地区 多摩川沿いのマンション建設地および民間企業の土地、都営住宅 ⑦大森北地区 イトーヨーカ堂及びその周辺
一種低層の10m高さ規制以外の指定区域除外地の指定理由やにも注目していく必要があるでしょう。