8月12日に事業者募集の始まった国家戦略特区ですが、今日は、国家戦略特区の政策的な論点について考えてみます。 *個別の規制緩和の評価については、今後、順次お伝えしていきたいと思います。

【国家戦略特区、今後のタイムテーブル】
事業者募集の始まっている国家戦略特区は、今後、下記のように進められていきます。
◆事業者の第一次提案募集締め切り(9月11日) その後、選考作業に入りますが、仮に事業がすぐに選定されたとしても、すぐにその事業が執行されるわけではありません。
◆法令整備 国会・地方議会等での審議・議決
国家戦略特区は、根拠法が無いとお伝えしていますが、今後、選定された事業提案に必要な規制緩和について、法令整備を行わなければなりません。
たとえば、総合特区における、建築基準法・漁業法・通訳士法などの規制の特例措置も、課税の特例措置も、利子補給も、総合特別区域法にその内容が盛り込まれています。

国家戦略特区での規制緩和策を、それぞれの法律の改正で行うのか、あるいは、一括で審議するのか、検討中ということですが、いずれにしても、何らかの法令上の整備が必要になり、国会、地方議会などでの審議が行われることになります。
内閣総理大臣主導といわれる国家戦略特区ですが、私たちが選挙で選んだ議員たちが、今後、この法令整備について審議することになります。
民主主義は、投票したら、その後の政治判断は選ばれた議員たちに白紙委任、というわけではありません。陳情・請願など法で認められている権利もあります。
今後、行われる審議において、私たちは、どのような論点をもって見つめていけばよいでしょうか。


 国家戦略特区を次の3つの論点から考えてみました

国家戦略特区の論点  
1.政策本来の目的と規制緩和    
2.総理主導と民主主義、   
3.法治国家における行政の継続性


 

1.政策本来の目的と規制緩和    
 国家戦略特区は、「民間投資の喚起により日本経済を停滞から再生へ」導くこと、が目的で、その手段として大胆な規制改革をするとされています。
 規制緩和により、国際競争力を強化し、日本を世界で一番ビジネスしやすい環境にしようというふうに読み取れます。
たとえば、医療の分野では、
・混合診療 ・外国人医師が日本で診療できるように ・病床規制の見直し ・高度医療を集中させる 等々
と言った提案がされています。
詳細は別の機会にふれますが、これらが進むことにより、
医療保険会計が悪化?→医療保険で担保する範囲が少なくなる?                 →医療保険の自己負担が上がる?                             →民間医療保険加入の必要性?                                                ⇒医療費の負担が増加?
といった可能性が出てきます。

提案された規制緩和により、高度な医療を利用する人が増えるなどの経済効果は期待できるのかもしれません。しかし、一方で、医療は、経済だけの問題ではなく、国民の健康をどう守るという大きな役割を担っています。
政府は、国民の健康を守るための医療制度をどうしていくかという議論はできているのでしょうか。

国家戦略特区の事業者募集は、8月12日でしたが、その直前の8月6日に、「社会保障制度改革国民会議の報告書」が公表されました。
社会保障制度改革国民会議は、今後の医療や介護の方向性を示す非常に重要な議論の場ですが、混合診療も病床規制の問題もふれられていません。

それでは、国家戦略特区における医療分野の規制緩和により、医療業界の国際競争力がつき、法人税が好調で、私たちの医療保険制度に還元されるといった図式は示されているでしょうか。
規制緩和が単なる経済政策でしか議論されなければ、医療保険会計が悪化し、医療保険負担、医療費の個人負担が増え、健康が経済力に大きく左右されると言ったことにはならないでしょうか。
国家戦略特区は、この医療の問題だけでなく、介護も、教育も、公共インフラも行政改革も税制も、国民生活への影響という視点からではなく、「GDP」あるいは、「民間投資」という経済的な指標で評価され、規制が取り払われるところにその論点があります。