大田区として建築確認をおろしていながら、耐震計算ソフトを持っていなかったと聞くと、一体、どのように確認をしてきたのか驚いてしまいます。
今回の耐震偽装の問題の背景には、診断ソフトの不備の問題があると言われています。
建築確認審査は、建築士あるいは、設計事務所側が、市販のソフトを利用して耐震強度を計算し、その結果をプリントアウトしたものと設計図面を提出しています。
このソフトの不備のひとつに、前提の震度をシュミレーションできることがあります。
計算ソフトは、建築基準法に定められている以上の強度を持たせることができるかどうかをシュミレーションするため、震度5とか6とか入れ替えることができるようになっているのですが、そこに、基準以下の2とか3と言った数値を入れた結果を申請の際に提出するということができるのです。
実際には、基準値以下の数値を前提に鉄筋の数などを入力しても、ソフトが持っているID番号が出力されず、そこで一般には偽装が見抜けるはずなのですが、外にも巧妙な偽装が行われていたようです。
こうした流れの中、自治体では、民間の建築士や建築事務所を信用し、詳細にチェックすることなく確認申請書類を受理してしまえば、偽装が通ってしまうことになります。
姉歯設計士が一番最初に偽装したとされる「グランドステージ池上」が、提出された設計図書の段階で偽装されていたのか、その後の施工の段階でいわゆる手抜き工事がなされたのか不明であるため、大田区では偽装であったことを認めていません。(HP上では、国土交通省に合わせた表現にするため、偽装物件として掲載されていますが。)
システム化、機械化されてしまうと、人のチェックがおろそかになります。
悪意の偽装に対抗することは困難ですが、耐震診断ソフトを全面的に信頼してしまうとするならば、許認可権者としてのチェックの責務はどこにあるのでしょう。
今回、補正予算で購入した耐震ソフトは、これまでできなかった何をするために購入したソフトであるのか是非明らかにしていきたいものです。