「建築家の職能と改正建築士法の問題点:講師河野進さん」

 耐震偽装事件を契機にして「建築基準法」が改正され、昨年から施行されています。改正に起因する建築確認の遅れによる着工件数の減少など、現場では大きな混乱が起きています。
 今回の神楽坂サロンは、「建築家の職能と改正建築士法の問題点:講師 河野進さん」。建築基準法とともに改正され、11月から施行となる「建築士法」について、㈱河野進設計事務所。国土交通省社会資本整備審議会建築分科会建築士制度委員で日本建築家協会元副会長の河野進さんから「建築家の職能と改正建築士法の問題点」についてうかがいました。
 
 
【講演の要旨】
 
◆姉歯以前
 現在の建築士法は、明治以降に西欧の技術と共に建築士という職業の考え方が持ち込まれ建築士法を作ろうという動きは有ったが、成立したのは昭和25年。戦後復興のための技術者養成として成立。人の法(建築士法)と物の法(建築基準法)とがセットでつくられた。
 
 建築士の資格が、構造と設備に分かれている西欧と異なり、日本の建築士はトータルな資格として位置づけられている。

 耐震偽装の姉歯の事件でも、構造計算は姉歯に外注している。外注先である姉歯は一級の資格を持っていたが、一級でなくてもできるのが今の日本のしくみ。
 
 元受に資格を求め、元受に全ての責任があるが、実務は外注先が行っている。

 業務の内容と責任が一致しない。こうしたしくみをつくった国交省の責任は重い。

◆今回の士法改正の要点
 
 一級建築士のレベルアップを計っている。
  
 しかし、既存建築士に対し、講習を義務化したが、考査に受からないと再試験としながら受からなくてもぺナルティーは無く、講習は、形式的。

 また、一級の中で5年以上の経験があるものに対して、構造一級建築士、設備一級建築士の資格を新設し、ある規模以上の建物は、これらの専門家がいなければダメとした。一級建築士に、上乗せ要求をしていて資格がわかりにくくなっている。

 日本に一級建築士は30万人。設計に係わっている一級建築士は多くて6〜7万人。日本の建築士は世界に比べて多すぎる。一級建築士の中で設計をやっている人は、ほんの一部であり、建築士が何をする人なのかが社会から見てもみえないその他の建築士が大勢いいる。その他大勢の建築士の責任が未整備のままである。

 相当高度なこともできないと一級建築士ではないと言っているが、基礎的素養か高度な資格なのかわからない。

 建築士と建築事務所の関係を、病院の経営者(理事長と病院長)の関係でみてみると、問題が見えてくる。
 医療事故の責任は、病院長が負うが、設計の責任は建築事務所が負い、建築士が負う関係になっていない。

 これまで、建築士の罰則は、刑事事件なら一部あったが資格停止はなかった。これが厳しくなっている。国交省は建築士が悪いとしている。建築士は、処罰強化で責任を負わされ、社会的に弱い立場になっている。設計の責任は開設者と管理建築士が分離している場合には不明確であり、〈管理建築士は開設者に対し、技術的観点からその業務が円滑かつ適正に行われるよう必要な意見を述べるものとする。〉
となっているだけで、はっきりしない。

 国立市の明和マンション。弁護士は、裁判所(公平な第三者)が、決めてくれるが、建築士はどうして建てるのかといわれる。公益・公共とクライアントの利益の間でマタサキ状態。公平な第三者に決めてもらうことなどできない。これは、ルールが無いのがいけなくて、つくってこなかったのが(住民も含めて)いけない。良心だけでは答えは出ない。

 
 偽装の背景に、建築士の有り方=建築士法の問題のあることがわかります。
 欧米に比し、建築士の権限と責任があいまいなことが、偽装を招いた遠因になってきました。
 
 今回の建築士法の改正についても、建築基準法改正と同様、実務との乖離による様々な混乱が予想されると河野進さんは指摘しています。

 
なかのひと