ドイツの都市計画家水島信さんが来日されるたび、ドイツと日本のまちづくりの違いを勉強させていただいています。
6月にいらしたときにうかがった話で印象的だったのは、ドイツの法律も日本の法律も法文を読む限りその内容にはほとんど違いがないと感じるということでした。しかし、日本とドイツのまちなみは大きく異なります。

ドイツの建設法典にうたわれている趣旨とほぼ等しい日本の建築基準法や都市計画法の趣旨はどこにいってしまったのでしょうか。

今日は、大田区の建築審査会に提出された建蔽率緩和の要件に対する審査請求が棄却となった事例から見る「形骸化した法令の趣旨」について報告します。


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豊かな緑に恵まれた閑静な住宅地にマンション建築が計画されました。

図面を見たところ、建ぺい率が60%のところ70%で計画してあることに気づき、大田区の担当に尋ねたところ、角地における建ぺい率の緩和により、10%の上乗せがされていることがわかりました。

角地の建ぺい率が緩和され、10%の上乗せが認められているのは、見通しなどの安全面や、採光、通風などの環境面において、敷地の一方だけが道路に接している土地よりも確保できることからきているものと思われます。

それでは、どのような道路であっても角ができていればよいのでしょうか。

今回のケースの場合、角地となっているのは、約5mと約56mにはさまれた部分です。5mの「道」はそれで行き止まりになっています。

果たして5mの道路が角地緩和の道路となるのでしょうか。

一方で、東京都建築安全条例は、「建築延べ面積が3,000㎡を超える敷地は10m以上道路に接していなくてはならない」としています。
このケースの場合、敷地面積が3,000㎡を超えていますので、10m以上道路に接していなければなりません。

そこで、近隣の住民は、敷地が大きい場合の道路は10m以上でなくてはならないと言っているのだから、角地についても、10m以上の道路と10m以上の道路が交わっていなければならないと考え、大田区の建築審査会に、10%の容積率緩和は違法(東京都建築安全条例を満たしてない)と審査請求しました。

しかし、大田区の建築審査会(そして多分、東京都も)は、角地の要件は、一方が10m以上道路に接していればよくて、もう一方は、建築基準法の定めている道路に2m接していれば建物を建てられるという解釈で、審査請求を退けました。

道路を規定している建築基準法の解釈が基本にあり、それに、東京都の建築安全条例が上乗せされているという解釈であるというのが、現在の考え方のようですが、法や条例の趣旨はどこに有るのでしょうか。

*自治体によっては、角地緩和のそれぞれの道路の長さを定めているところもあります。

緩和は、貢献に対する対価というのが私の考えですが、運用上は、貢献の実態は問うていないのが現状のまちづくりであると感じる場面がこの事例に限らず多く見られます。

結果として、同じ趣旨をもった法令でありながら、日本とドイツ等のまちなみは大きく異なっています。

まちなみは、単なる景観にとどまらない大きな問題です。

投資行動を変え、雇用形態を変え、人口構成を変え、経済や福祉に大きく影響します。これらを、一定面積から床面積をどれだけ大きくとれるかというほとんどそれ一点に特化した価値基準で進められてきたのが、これまでの、まちづくりに伴う建築行政の考え方です。

角地の緩和の事例をみておわかりの通り、建築関係の法律はその解釈で、大きく実態の異なることがわかります。法律や条例は、議会の議決が必要ですが、運用の解釈は、議決を必要としない行政内の手続きで決められていきます。

法律を骨抜きにしてきたのは、議会ではなく、行政の内部決定であるという見方もできます。

しかし、そうした、行政の解釈を許してきたのが、議会であることもまた事実です。