一方で、また、コスト面からの検証も大切です。
環境省の補助金資料によれば災害廃棄物のトン当たり処理単価は、1995年の阪神淡路大震災の時で22,000円。2004年の新潟県中越地震で33,000円。2008年の岩手宮城内陸地震で15,000円でした。(資料⑦)
11月17日の産経新聞によれば、今回は、当初の見通しで岩手県で総額3千億円でトン当たり阪神淡路の3倍弱の63,000円。宮城県で総額7,700億円でトン当たりは阪神の2倍超の約5万円と阪神淡路大震災の際の処理単価を大幅に上回っています。(資料⑧)
新聞報道のあった当時で処理費用総額は1兆700億円ですが、処理単価はさらに高くなるという指摘もあります。
処理単価が高い理由として考えられるのは放射能対策ですが、広域処理にすることにより、現地と処理自治体とで二重に費用がかかります。そのうえ、コンテナやトラックなど運搬の経費もかかるのです。処理費用だけでなく、受け入れ自治体には、事務費として受け入れたごみ処理事業費の金額に応じて1.5%〜4%が支払われます。
私も、現地に行き、うず高く積まれた瓦礫の山を前に言葉を失うほどの衝撃をうけました。映像の与える影響は非常に大きいものがあります。しかし、映像は全体像をみえにくくしてしまうことがあります。
冒頭で申し上げたように、災害廃棄物に占める広域処理分は報道から十数%です。
宮城県に聞いてもだしていただけませんでしたが、岩手県は災害廃棄物全体のごみ種別内訳と処理方法を出してくださいました。(資料番号⑨)
1月末現在、岩手県の災害廃棄物総量は435万t。そのうち171万tはコンクリートや土砂などで、復興資材として宅地造成の埋め戻しに使われます。土砂にまみれたつなみごみを、ふるいにかけたのち落ちた土砂80万tは、太平洋セメントがセメントの原料として逆有償で引き取ります。有価物が75万t。残りが焼却される分ですが、現在の焼却施設と仮設焼却炉で52万tを焼却しほぼ同量57万tが広域処理の予定です。
この内訳をみると災害廃棄物のかなりの部分が埋め立てに使われることがわかります。現地では地震により、地盤が下がっていて、宅地造成のために必要なのです。
岩手県に災害廃棄物が置かれている面積を岩手県の担当に計算していただいたところ約2.3㎢、そのうち広域処理分は(約30万㎡=)0.3㎢です。
視察した宮古市では、災害廃棄物は港湾施設でこれまでも未利用だった県の土地と、被災し再開の見込みのない工場、そして、海沿いに作られた野球場などに仮置きされていました。今後、土地利用計画が定まれば、埋め戻しなどが行われるとともに8割の災害廃棄物の山、岩手県だけに限れば9割近い廃棄物の山が撤去されていきます。
女川町の土地利用計画を拝見しましたが、海岸部から一定地域を段階的にかさ上げする計画になっていました。海岸部から焼却するために広域処理される災害廃棄物ですが、安全性を考えれば、焼却は難しく、可燃物のため宅地などの利用はできませんが埋め立てることもひとつの選択肢です。
岩手県岩泉町長は朝日新聞の取材に「もともと使ってない土地がたくさんあるのに、どうして急いで瓦礫を全国に拡散するのか?10年、20年と時間をかけて処理した方が雇用確保し、地元に金も落ちる。」と答えています。
国立環境研究所が宮城県内、宮城県福島県内、東日本内処理の3つを想定した場合、期間を長くすれば、地域内処理も可能でコストもより安くなると試算しています。
1兆700億円もの税金が投入され災害廃棄物が処理されますが、国の税金投入は平成23年度6、平成24年度3、平成25年度1の6:3:1の割合だそうです。岩手県担当者は、補助金の支給期限が平成26年3月なので、それまでに処理しなければならないとも話しておられました。
補助金の支給方法に問題はないでしょうか。
広域処理は、自治体の善意ではなく、国から補助金のおりる事業です。焼却した分の費用だけでなく「事務費用」が上乗せされるとともに、清掃工場にも補助がでます。お金が落ちて潤うのは、清掃工場に余力のある地方自治体と廃棄物処理業者、運輸業者、放射能測定業者等ですが、地元への経済効果や雇用創出は望めません。余力のある焼却施設が全国にこれほどあることに問題はないでしょうか。清掃工場維持のための施策とも受け取れないやりかたです。
④そこで、うかがいます。大田区長として広域処理についてどう判断なさったのでしょうか?大田区松原忠義区長自らの判断で受け入れを決定したのですか。国や都が決めたのでそれに従っただけですか。こうした状況を総合的に判断すれば、災害廃棄物の広域処理は見直すべきと考えますが区長のお考えをうかがいます。