動画付き 84億円かけて効果を示せない呑川合流改善 シールドトンネル工事で陥没の心配も

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私たちの生活排水は、下水管を通って、処理場に行き、浄化されて海や川へ流されていると思っている方も多いと思いますが、都市部の下水管は、雨水も一緒に下水に流れるので、たくさん降ると、マンホールからあふれ出ないよう、たとえば、大田区だと、呑み川に流すことで、「内水氾濫」を防いでいます。

 

汚水と雨水を分ければよかったのですが、「コストがかかるから」という理由で、下水整備を急いだ結果、今の、雨が降って下水管がいっぱいになったら、汚水が、呑み川から、海に流れでるようになっているのです。

 

そのため、流れが緩やかになり、潮の満ち引きの影響を受ける河口近くでは、汚水がたまって、嫌な臭いがでたり、酸欠で魚が死んで浮いたりするなどの問題がおきています。

この、臭いや魚が死んだり、スカムと言って、汚濁物が浮いたりするのを防ぐ目的で、84億円かけて、呑み川に流れ出る一定量の汚水を、貯留管を作って溜める事業が行われています。

 

最初は縦に掘って、そこから、シールドマシンで横に掘り進み、直径2.4~3mの円筒形の貯留管を造って溜める計画です。

昨日、リニアの岐阜工区で、地盤沈下があったそうです。
シールドトンネル工事は、地盤の固さとか、シールドマシンの操作だけの問題ではなく、

今回、呑川合流改善で指摘した雨水の地下浸透や、

前回、熱海の事故の前に指摘した、表層地盤との関係をきちんと解明すべきだと思います。

【盛り土】は豪雨だけでなく振動をにも弱い? 東京都土木技術研究所の調査が活かせない日本の開発 – 大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から!

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以下、呑み川合流改善についての質問です。

呑み川の悪臭などを改善する目的で、84億円かけて貯留槽を掘り始めますが、どれだけ良くなるか答えられませんでした。

掘って汚水交じりの雨水をため、悪臭も、酸欠で魚が死んでしまうのも、川面に汚濁物質が浮くのも、良くなるかどうかわからないのです。

調べると、汚水が呑み川に流れ出た回数と、においや酸欠で魚が死ぬなどの影響は、必ずしも比例せず、それ以外の天候や地理的要因が深く関係していることがわかります。

シールドマシンで穴を掘って貯める対症療法には、限界があるということです。

そもそも、雨水が、下水に大量に流れ込むのは、都市の開発が進み、地下浸透しないからです。

建物や道路などの開発で、地面にコンクリートでふたをする建物や道路などの開発が

地下浸透を阻害して及ぼす影響について、温暖化や陥没との関係などともあわせ、目を向ける時です。

 

決算特別委員会で取り上げました。

以下は、質問の原稿と簡単な補足説明です。

 

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フェアな民主主義奈須りえです。

 

下水の越流を防ぎ
良好な環境創出する呑み川合流改善事業

呑川合流改善事業は、その目的や効果として、

・雨が降って、下水管に収まらず、河川=呑川や海に流れ出ていた
・いわゆる越流による、降り始めの特に汚れた下水を、
・シールドマシンで掘って作った貯留管に貯めることで、

良好な水環境を創出すると説明されています。


大田区環境保全課、対策課では、長年にわたり、連日、呑み川に行って、

「越流の有無」
「スカムの発生」
「魚の浮上」などを目で見て確認し、
「臭いを実際にかいで」

記録しています。

臭気やスカムや魚のへい死は
84億円でどれだけ改善される?


大田区の環境調査報告書の、令和元年の、この呑み川パトロールの報告(8枚目p98 )
をみると、
越流は4月から11月の8か月で53回、
臭気を感知した日数は47日で、

臭気の内訳は、腐敗臭20、硫化水素臭12、下水臭22、スカム発生日数は70日、魚のへい死は7回と記録されています。


【質問1】そこでうかがいます。

貯留管を作ることで、越流回数は7割減ると大田区は答弁しましたが、84億円かけて7割減らし越流が3割になったら、
腐敗臭や硫化水素臭や下水臭、スカムの発生や魚のへい死は、合流改善でどのくらい改善されますか

 

 

越流回数は減っても
大幅に増える臭気やスカムや魚のへい死

 

令和5年の呑み川浄化対策研究会のグラフ(32枚目 28ページ)に、令和5年度の現地調査として、越流と魚のへい死と臭気とスカムの回数が掲載されていたのを見つけ、先ほどの、令和元年の現地調査(8枚目、98ページ)と比較したら、興味深いことが見えてきました。

令和元年の呑み川の越流回数は48回。それに対し、令和5年は27回で、令和元年の56%しかありませんでした

ところが、令和5年の越流は少ないのに、臭いを感知した日は86日で、令和元年の2倍超でした。

 腐敗臭だけは、令和5年のほうが少なかったのですが、

 越流は令和元年の56%しか起きていないのに、硫化水素臭も下水臭も、令和5年のほうが6割も多かったのです。

 

 スカムが浮いた日数も令和元年は70回でしたが、昨年は87回魚のへい死令和元年は7回でしたが、昨年は30回もありました。

 

 高濃度酸素水を設置する前の、令和元年のほうが、硫化水素臭を感知した日も、スカムもへい死もデータの取り方が変わっているのかもしれませんが、少なくて驚きました

 

「気候」や「地理要因」が河川環境に大きく影響

 

だからと言って高濃度酸素水の効果が無かったと言いたいわけではありません。

 呑み川合流改善に関わり、気象庁の過去の降雨のデータや大田区や東京都の調査や関係資料を調べて感じたのは、越流回数だけでなく、季節や気温、雨の降った日数や降雨量や降り方、潮の満ち引きとの関係などが、臭気やスカムや魚のへい死に大きく影響しているということです。

 

実際、令和5年の浄化対策研究会の報告書や調査の知見を読むと、

 

雨量・気温

 

・令和3年4年は、河床整正と高濃度酸素水の効果でスカムの発生が抑制されたと評価していますが、令和5年に硫化水素やスカムが多かったのは、雨が少なく気温が高いことを理由にしています。

 雨量や気温と言った気象や自然や地理などの影響が大きいということです。

河床・台風

川底に堆積していた汚濁物が下流まで流されたため台風による大出水後にスカムはほとんど発生しない

という記述は、雨が多いほうが、汚濁物や臭気の影響は小さいように思えますが、

 

海と川の地理的要因

 

雨水の流入により河川水が混合し、硫化水素を大量に含んだ底層水が巻き上げられ大気中硫化水素濃度が高くなる

とあり、海水と淡水の地理的な影響を受けていることもわかります。

 

初期汚水対策だけで、汚水の河川流出は防げない

 

初期汚水という言葉は、汚水が、雨の降り初めしか、呑み川に流れ出ない印象を与え、初期の越流水を貯留管に貯めれば、問題は解決する印象ですが、貯留管いっぱいになったあとも、3ミリを超える雨が降り続けば、越流は続き、呑み川に汚水は流れ続けます。

 

照っても降っても、生活排水1260㎥/時間

 

汚水は、今回の計画ルート内を一秒当たり0.35㎥、1時間あたり1,260㎥下水に放出されています。雨が降る間も、トイレも洗濯も生活排水は排水されますから、越流が続けば、1,260㎥の汚水の一部は、下水管をあふれ、呑み川に流れ続けるということです。

 

1時間9mmの雨対策=84億円なり

 

今回の事業経費総額、84億円かけても(下水管で3ミリ、貯留管で6ミリ)1時間9mmの雨までしか対策することはできません。

 

豪雨化する都市の雨

 

50ミリを超えることもありますし、近年、雨の日は少ない年もありますが、豪雨が増えてきています。

 

【質問2】そこでうかがいます。

越流対策として、すべての越流水を貯留管に貯めれば、臭気もボラのへい死もスカムも改善されるでしょうか。財政的にも、技術的にも限界があるのではないでしょうか。

 

都市河川の問題の原因は
土をコンクリートで蓋の都市化

 

私は日ごろから、
土をコンクリートでふたをすることが、温暖化の一因ではないか
地中に浸透水が減っているのではないかと思っているのですが、

 

調べたら、1997年の日本水文(すいもん)科学会誌第27巻第三号に掲載された、高村弘毅立正大学名誉教授の「都市部における雨水浸透疎外と見かけの地下水位」という論文をみつけました。

 

開発が雨水浸透を阻害

論文は

「都市における建物や舗装道路などの非透水性物質の地表被覆は、雨水が地表から浸透するのを阻害するばかりでなく、河川への直接流量を高め、地表、植物からの蒸発散量を減少させ、水の循環に大きな影響をもたらしている。特に雨水による地表からの垂直方向への浸透の減少は、単に地下水の涵養量を減少させるばかりでなく、地中水の挙動に大きく影響する」

と、と指摘しています。


また2001年の東京都環境科学研究所ニュース No32には、


23区の82%は既にコンクリートで蓋


1991年の東京の被覆率は区部では82%とあり、

「林地や畑などの状態では地表面に到達した雨水の約半分が蒸発散により、大気に戻り、残りの大半が地下に浸透して地下水を涵養していました。しかし、地表面がコンクリート等で被覆されると、地表面に降り注いだ雨水の大部分が川や海に直接流出して蒸発散は激減し、地下水への涵養がゼロになります。」

と書かれています。


コンクリートで蓋が
越流、温暖化を招く


コンクリートで地表にふたをしてしまったから

・下水へ流れ込む雨水量が増え、越流水の問題が起きていますし、
・地表、植物からの蒸発散量が減っているから、
・気温が下がらない

こともわかります。

 

下がらない都市の地下水位のカラクリ


降った雨が地中に浸透しないのですから、地下水位が下がるはずですが、下がっている地点がある一方で、東京駅など地下水位が上がっている地点もあり、減っている湧水と合わせ、どうしてかという疑問に、高村教授はこう論考しています。


地下水を含む地層が
コンクリートに置き換わる都市部の地下


地下水位が下がらないのは、開発前まで土壌水分と地下水を含んでいた地層が取り去られ、代わってコンクリートの地階空間が同じ容積で占領するので、地中水や地下水が容量的に減ったにも関わらず、井戸の水位は開発前と同じ位置にある。


バブル期の開発で
1041万㎥の地下水量が消滅という試算


バブル時期を含めた1995年までの10年間に地中水分にして2082万㎥の土砂(建設残土)が排出され、地下水相当量にして1041万㎥賦存量つまりは潜在的な地下水量が消滅して、それに相当する地下における水循環の容器が消滅した、と指摘しています。

 

今も止まない開発、1041万㎥からさらに失われる地下水

 

その後も再開発などで、都心部の超高層ビル建設はさらに増え今なおやみませんから、
ふたをして、降った雨が地下浸透せず、地下水は徐々に失われていても、
その分、ビルや鉄道などの構造物で埋められているので、

見えにくくなっているというわけです。

 

地下水分量の減
陥没の隠れた原因

 


外環道、相鉄東急新横浜線と陥没事故が続き、9月の27日には広島でシールドマシンの事故がありました。リニア中央新幹線は、安全確認の調査屈伸さえ未だに終わっていませんが、これらの事故が、シールドマシンを操作する技術の不足と指摘される一方、区部や市街地の地中は、水循環が失われ水分量が減っていて、だから、シールドマシンで掘ると振動が地表に伝わって陥没が起きるという見方ができるかもしれません。

 

実は、えている道路陥没

 

掘らなくても起きた先日の矢口の道路陥没も、
令和4年度に特別区だけで205件、
日本全国で9967件起きている道路陥没も、

 


こことの関係は触れられませんが、十分な解明が待たれるところです。

 

越流対策に雨水浸透

 

そこでうかがいます。

 

【質問3】
このまま、越流の根本的な原因である地下浸透に目をつぶり、貯留施設だけの越流水、雨水対策でよいのでしょうか。呑川水質浄化対策研究会の所管事項は総合的な水質浄化対策の計画及び実施です。座長であり、最下流部の大田区として、あるいは、研究会の構成員である下流域の他2区目黒区世田谷区にも働きかけ、下流域3区の声として、東京都に、雨水浸透についても提案していくべきではないですか。