政府の税制大綱で、
所得税の壁は引き上げられましたが、大田区長などが蒲蒲線などの財源を確保するため、住民税の壁は据え置かれたのは、ご存じでしょうか。
引き上げられた所得税の壁まで働くと、所得税はかかりませんが、
住民税の負担が生じます。
決算議会で取り上げました。動画と質問原稿を掲載いたします。
フェアな民主主義 奈須りえです。
一般質問で、所得税の壁は引き上げられたのに、個人住民税の壁が据え置かれたので、住民税の壁も引き上げるよう、区長が声を上げるべきと考え、質問させていただきました。区長も一員の市長会の声明で、住民税の壁が据え置かれたからです。必要に応じて国に要望していくというのが、ご答弁でしたが、そうなりますと、区長は、今回の住民税の基礎控除は、引き上げる必要を感じなかった、ことになります。本当に必要なかったのでしょうか。
基礎控除の引き上げは、課税対象所得を減らしますので、納税者の手取りを増やします。壁問題が、減税、物価高対策、と言われたのも、そのためで、政府の税制大綱で所得税も住民税も引き上げるべきと決めたのを覆したのです。区民は区長に手取りを減らされてしまったということです。
しかし、基礎控除は、それだけでなく、最低限度の生活を維持するのに必要な担税力、つまり税負担能力をもたない、課税してはならない部分で、憲法25条の生存権のあらわれと言われます。
住民税の基礎控除は、非課税世帯とほぼ同じ意味ですから、非課税世帯を狭め、
・高額療養費の自己負担限度額や、
・特別養護老人ホームの使用料の減免や、
・一人親家庭への給付や、
・この間、繰り返されている減税や減税と言う名の現金給付の対象者を狭めることになります。住民税の壁の据え置きは、憲法が保障する健康で文化的な最低限度の暮らしの水準を下げたことになるのです。
そこでうかがいます。
区長は、住民税の基礎控除を据え置くことが、
・最低限度の生活を維持するのに必要な、税金を負担する能力を持たない部分まで課税することになることや、
・社会保障などの負担軽減や住民サービス提供が必要な区民の対象がかわり、必要な区民に届かなくなることになる、と知っていて、声明に名を連ねたのですか?
それとも、個人住民税の基礎控除の位置づけをご存知なかったのでしょうか。
確かに、税制調査会で、総務省が言う通り、昭和35年の政府税調の答申を受け、所得税の控除に対し、個人住民税独自の基礎控除が創設され、所得税の控除と個人住民税の控除の額は、必ずしも同額ではなく、個人住民税が、1~2割低いかたちで推移してきています。
ところが、今回、所得税の控除は48万円から95万円に倍近くに引き上げられましたが、個人住民税は43万円のまま据え置かれ、所得税との差は、1~2割減どころか、半分未満になってしまいました。今の急激な物価高は、所得が連動しないため、区民に深刻な影響を及ぼしていますが、自治体の中でも、大田区は特に物価が高いですし、控除の少ない単身者も多いですから、据え置いたことが区民に及ぼす影響は、他自治体に比べても深刻です。
急激な物価高に所得が連動しない状況下で、所得税が大幅に引き上げられながら、財源を確保したいから、という理由だけで、十分な根拠なく、憲法25条の生存権に関わる住民税の基礎控除を据え置くことは許されるでしょうか。
実際、総務省自治税務局市町村課税課に確認したところ、住民税の基礎控除を据え置いた理由は、
住民税は、住民の負担を分かち合う自治体の会費的位置づけで、多くの住民にご負担いただくことをよしとしていること。
そして、行政サービスを提供するための財源として必要だから、という二点だけで、
憲法25条の生存権に関わる社会保障関係の給付の水準として、どうあるべきかの検討はしていないと言うのです。
しかも、区の答弁から、基礎控除を据え置いてでも、財源を確保し、新空港線や羽田空港跡地開発などの都市基盤整備を行うことが、区民生活の質の向上になると、区長が考えていることがわかります。
そこでうかがいます。
最低限度の生活を維持するのに必要な、担税力を持たない部分にまで課税して、
大田区として、区民の生活を、どう良くするのですか?
蒲蒲線などで、最低限度の暮らしや生活水準を向上させることはできますか?
区民の皆さんも、この議場にいらっしゃるみなさんも、ここまで聞いたら、区民を苦しめることにしかならない住民税の基礎控除の据え置きを何故したのだろうと思うのではないでしょうか。しかも、政府ではなく、地方六団体の声明という民意に動かされる形をとっているのです。ただ、声明が出たら、すぐ、個人住民税は壁の対象から除かれましたから、最初からそのつもりだったことや容易に想像できます。なぜか区長はご存じですか?
減税、物価高対策と言う印象で進んだ、今回の所得税と個人住民税の壁問題の目的は、国会や税制調査会の議論から、経済対策としての就業調整、つまり、労働力確保のためだということがわかります。所得税の基礎控除だけ引き上げれば、労働力を確保しながら住民税と言う税収も、社会保険料もしっかり確保したわけです。しかも、それだけではないと私は考えています。区長はその先をご存じですか?
令和7年度に入った直後から、税制調査会専門家会合では、ゼロ税率、税額控除と言う名前の、現金給付=いわゆるベーシックインカムの議論がはじまっています。
来年度になると、こども保険料の医療保険料への上乗せ徴収が始まります。所得税の壁が引き上げられたことで、160万まで働いた方たちは、住民税や社会保険料の負担で、思ったより手取りが増えません。公共インフラ投資額はさらに増えて物価高も加速します。そうなると、多くの方たちが不満の声をあげるようになるでしょう。そこに、この、税額控除を現金給付やベーシックインカムという名で提案すると、まるで救世主のように聞こえるかもしれません。時は、統一地方選挙ですから、政策に掲げる政党も増えるでしょう。私の声などかき消されてしまうかもしれませんが、区民の皆さんには、ベーシックインカムは、資本主義経済における、税や賃金や法定福利費と言うコストの最小化でしか無い可能性が高いことをぜひ知っていただきたいと思います。
国会も総務省も税制調査会も地方六団体も、憲法25条の生存権も、社会保障給付の水準の議論も行っていませんから、生活水準が上げるはずがないのです。一部の投資家利益の最大化のために、多くの区民の生活水準を犠牲にしてはならないことを最後に申し上げ、質問を終わります。