10年で3度も変えた都市計画、誰の発意で京急蒲田は高層化し、メリットを得るのは誰なのか

京浜急行蒲田駅周辺の街の将来像を変えるための
「地区計画」の議案が提出され、
私の所属するまちづくり環境委員会で審議されました。
 
地域の住民との合意で作った「ハズ」の地区計画ですが、 何故変えたか?担当に聞いたら、
「事業採算性」と答えました。
 
公共性を持つ事業だから、都市計画の優遇を認めているハズで、 住民発意のまちづくりのハズが、
事業を担うデベロッパーの視点で変わったと言うのです。
 
本会議場で質疑したら、副区長は、
事業性確保が困難とは聞いていない、
と答弁しています。
担当は言ったかもしれないけれど、、、と言う感じでしょうか。
 
担当が間違えて言ったのか、
公式では言えない理由だったのか、 それとも担当の本音が出たのでしょうか。
規制を緩和し、新たに生み出した床面積で作るマンションなどを売却して、 建築費を確保するのが、再開発です
そこに公共の意義が有るから、行政は建築規制の緩和を認めますし、そこに広場や通路ほか、莫大な税金を投入します。
京急蒲田の場合も、
・公共目的で、通路や道路や広場を広げ確保したことで 建物建築可能な区域が狭くなるので、
・建築する建物に必要な床面積を確保するには、高くしなければならないから、
・80mの高度地区を利用しています。
ただし、
公共目的の通路や道路や広場は、大田区などが税金を払って負担するので 事業採算性に変わりはありません。
資材が高騰したとしても その分、売却費用があがりますから(いまマンション価格が高騰していますね) 経費は連動するはずです。
事業採算性と言う言葉を使った担当の言葉からは、
これまでの地区計画では
事業者が採算が取れなくなった=儲からなくなった
ので高度地区を利用し、高さを目いっぱい取って 床面積を増やしてあげた、という意味にとれるのです。

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議案の内容と、私の意見についてご報告します。

議案は、京急蒲田駅西口の一部の区域について、
地区計画と言って地域の地権者の合意で、都市計画のルールを変えて、道路などから、建物を後退させると、航空法の規制の限度80mまで高い建築を可能にする内容です。

結果、道路幅により、規制のかかる指定容積率500%だったこの区域ですが、建築可能な容積率は、683%まで可能になり、
新たな地区計画で、480戸の住宅が建設可能になります。

しかも、この区域の地区計画の内容が変わるのは、2005年の策定時、2015年の区域拡大、そして今回で3度目になります。

地権者で合意して決めている者の、なぜ3度も変わるのか、
会議録や都市計画審議会の資料などを読みますと、
それが、必ずしも、地権者の発意ではなく、大田区が作った上位計画である、
・都市計画マスタープランや
・グランドデザインや
・グリーンプランや
・鉄道都市づくり構想などの改定に影響されていることがわかります。

しかも、行政主導で作った計画に影響された地区計画が、防災性の向上や、環境保全や、
地域住民の財政負担などに良い影響を及ぼすかと言えば、
高度化し密集して、逆に防災性を後退させ、
大規模な開発で、地表をコンクリートで蓋をし、温暖化や豪雨をもたらし、
高密度化して一極集中をさらに進め、インフラ整備で財政負担を大きくします。

しかも、限界まで高度化して、高密度化させた区域を
将来的に建て替える際には、今回のような、新たな床面積を創出して
建築費の足しにすることもできませんから、将来老朽化した時の建替えは、
今より、さらに困難になります。

以下、
詳細な説明と共に地区計画改定の問題についてご報告します。

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第128号議案、京急蒲田駅西口地区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例につきまして、反対の立場から討論いたします。

この京急蒲田駅西口地区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例は、平成17年2005年に第三回定例会で可決し同年111日から施行している条例です。

 10年後の平成27年2015年の改正で当初の区域1.5haに、京急蒲田駅よりの街区の1haが加わり、計画区域は、全体で2.5haになっています。

そして、今回、全体区域2.5haのうちの、おもに10年前に加わった1haの一部を加えた0.6haB地区として、地区計画の変更をするための条例改正です。

20年前に計画を策定し、
その10年後に区域を拡大し、
そして今回、20年前に、区域全体にかけていた地区計画の網を、A地区とB地区に分け、B地区の地区計画を変更するという、
20年の間に3度も都市計画を変更しているのです。

もともと、AB合わせたこの区域の地区計画では、指定容積率は500%ですが、前面道路の幅により、高さの限度設け、4m以上5m未満で17m、5m以上11m未満で25m、11m以上で42m、とし、壁面を0.5m以上後退すると、建築可能容積率にプラス60%上乗せする地区計画でした。

これを今回の地区計画の変更による条例改正で、B地区だけ、呑み川沿いは3.5m、それ以外の街区の外周は2mの壁面後退した場合、高さの限度を80mとして、容積率は683%まで可能にします。

この80mというのは、羽田空港の航空法の制限が地区計画全体の敷地の一番西、JR蒲田駅寄りの旧保健所前の通りの方で約81メートル。京急蒲田駅の方で79メートルかかっているから、と当時の委員会で交通再開発課長が説明していますから、今回の高さ制限80mは、目いっぱいの上限と言っていい数字です。

容積率683%も、区域の土地利用に際しての上限の容積率であると、答弁いただいています。

 

・なぜわずか20年の間に、地区計画をたびたび変えるのでしょうか

・今回、高さも、容積率も、この区域で可能な上限まで引き上げているのは、なぜなのかでしょうか、

・変えることで、誰に、どのような影響が及ぶのでしょうか

2005年の地区計画策定の際の条例改正で、

地区計画を策定する時、誰が主導で、まとめ上げるのか。地元か、区か、その辺はどうか。という質問に、

当時の齋藤 助役は、やはり地域の方が自分たちのまちを将来的にどうしたいのか、それをやはりベースとして考えてもらう。それが基本にあって初めて成り立つということだろうと思う。と答えています。

当然、今回の地区計画も、地域地権者の方たちの合意の元出されてきた計画だと思いますが、それでは、今回の地区計画の変更の発意が、全て、地権者からかと言えば、必ずしもそうではないことが、地区計画の理由や、地区計画の目標の変更の内容をみると、見えてきます。

そこには、大田区が、
・令和4年6月に変更した防災街区整備方針や、
・令和4年4月に改定した蒲田駅周辺グランドデザインや、
・蒲蒲線(新空港線)のその後の動きに対応して、いると説明していますし

また、地区計画の目標にも、これら計画などに加え、
・令和4年3月改定の都市計画マスタープラン、
・令和6年3月策定の大田区鉄道沿線まちづくり構想、
・令和5年3月改定大田区緑の基本計画グリーンプランおおた、などに書き込んだから、

その書き込んだ機能である、

・良好な都市景観との調和のとれた街並みへの誘導

・道路と一体となった安全で快適な歩行空間の形成、

を図るための街並み誘導型地区計画を活用して老朽化した建物の建て替えを進めることで、

・地域の回遊性と

・防災性の向上を目指すのが、大田区のまちづくりの目標だと言っています。

京急蒲田駅西口地区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の第一条の目的には、「敷地の共同化による共同建て替えや個別建て替えを促進し、商業と住宅が調和する複合市街地としてのまちづくりを推進する。」と書かれていて、改正していないのに、

この間策定した各種の上位計画を変更したことを理由に、
●地区計画の目標が変わり、国内外からの来訪者を迎え入れる玄関口にふさわしい、魅力的な都市環境を作り上げなければならない目標に変わってしまっているのです。

議決不要の行政内部で決めた上位計画の変更が、

土地利用の方針に影響し、

地区施設の整備の方針に影響し、

地区施設の配置及び規模に影響し、

建築物等の整備の方針に影響して、

高さを、航空法の限度80mまで目いっぱいに使うことで、容積率683%まで可能にしているのです。

具体的には何が起きるかと言えば、

・地域の回遊性や

・防災性の向上や

・安全な沿道空間や
・潤いある街並みや
・賑わいや
・回遊性などで

地区施設の配置及び規模がかわり、道路を拡幅し、緑道・広場・通路・空地などを新設することになり、建物内にも防災拠点を作って防災性を向上させるというのですが、
そこに、多額な税金が投入されることになります。

多額の税金を投入したこれらの整備により、土地が必要になりますから、その分、建物を建築する土地面積が狭くなり、上に床を積み上げなければなりません。

しかも、建築する建物の中に、防災性を向上させる一時的な滞留施設まで造るので、その分も建物の床面積が必要になり、更に高度が必要になるので、高度制限が、航空法目いっぱいの80mになるのです。

しかも、こうした、多額に税金を投入して整備する緑道・広場・通路・空地・建物内の防災拠点で、目的は果たせるでしょうか。

第三回定例会の一般質問で、土にコンクリートで蓋をする開発が雨水の地下浸透を妨げる問題や、蓄熱性の高いコンクリートそのものの容積が増えることが、暑い夏と夜間の気温が下がらない温暖化の一番の要因であることについて取り上げました。

京急蒲田駅周辺は下流域のため、地下水位が高く、雨水の地下浸透はあまり期待できませんが、それでも、この大規模な土地利用の再開発により規模が大きくなりますから、敷地に求める地下貯留施設の規模が大きくなり、地下深くまで掘り下げ、膨大な量のコンクリートの塊を埋めて地下貯留槽を作ることになります。地上も床を確保するために単に高度化するだけでなく、共用部分の不算入は、共用部分面積を増やしますので、必要な床面積を確保する以上に、床面積が大きくなり、高度化します。

街路の緑は、グリーンインフラとはよく言ったもので、私たち生命体にとっての食物連鎖を支え、光合成による炭酸浄化作用を持つ植物ではなく、単なる飾り程度になっていないでしょうか。無いよりはいいかもしれませんが、呑み川沿いの特に北側にあしらわれる植物は、高い建物で、風害の可能性が高く、日照も期待できないため、本来の植物が育つ良好な環境とは言い難くて、ちゃんと育って、私たちに、清涼な空気や生態系の基礎を支える緑になるのか心配です。

防災機能や安全を高めるための通路や空間や道路や広場ですが、それらを確保したことで、逆に建築物が高度化しますから、建築物の安全性が本当に確保できるのでしょうか。そもそも再開発の手法は、高度化することで生み出される保留床の売却価格が建築費用に使われるため、高度化するのに、さらに上位計画により高くなるのです。先日の香港の悲惨な高層ビルの火災などの事例に、私たちが学ぶべきことは無いでしょうか。これまで無かった災害でも、これから無いとは言いきれません。僅かなリスクも高めることがあってはならないと思います。技術を過信すべきではありません。

こうした合意形成は、地域住民の発意と言うより、大田区の上位計画にあります。出てきた地区計画は、地域住民のみなさんが合意していますが、果たして、この計画により、莫大な財政負担が生じることや行政が説明している期待される効果には、疑義のあることまで、行政が説明しているのでしょうか。

しかも、大田区は公民連携で地域の課題解決は、企業と相談をすると言っていて、企業が提案する課題解決は、利益を求めて良いと言っているのです。こうした上位計画や地区計画の変更などに、株主利益最大化が企業存立の目的である営利企業が関わっている可能性も十分にあるのです。

まちをみれば、計画前の地権者とは大幅に入れ替わり、居続けられない方たちが減っていますから、区域全体に求める合意形成は、より、合意が取りやすくなってきたと言って良いと思います。
 しかし、結果として、こうした理屈と手法で作るまちづくりが、東京や中核市などを中心に広がったことで、東京や中核市などへの一極集中が進み、本来なら労働人口減少などで下がるはずの土地の価格が下がらない要因を造りここに来て引き上げる要因になっています。そのうえ、再開発や公共インフラの需要増大が資材の高騰に拍車をかけ、再建築価格をもとに算定される共同住宅の売買価格を上げています。

しかも、東京の特区のメニューは、外国資本に有利なので、この計画に使われる莫大な私たちの税金の一部は、世界の証券の中心ウオール街に利益となっていってしまうかもしれません。

一極集中は進み、そのぶん、仮にこの開発で、賑わいがつくれても、周辺の住宅や、商業施設の利益がここに奪われるかもしれません。

行政が、一部に賑わいのために税金を投入することをよしとする理由は、私には公平性の観点から、理解できません。

かつて、日本の補助金が、市場の経済競争に下駄をはかせ、弱いものの延命になると批判されていた時期がありました。それなのに、再開発ビルに入ることができるのは、家賃と共益費管理費が高いため、高額な家賃を払える利益率の高い大資本などです。莫大なインフラへの税金投入と都市計画による保留床の優遇によりなりたつ再開発で、利益を得るのは誰でしょう。

区分所有で固定資産の土地がほぼ、償却資産にかわってしまう地権者でしょうか。

税金を負担する、区民でしょうか。

結果物価が上がって、それを広く薄くモノの値段で負担させられ、今も物価高に悩む区民でしょうか。

それとも、大田区が、事業採算性のために地区計画を変えた、この事業による環境影響も財政負担も考えていないと言っていた地区計画を利用し、事業を遂行するデベロッパーでしょうか。

そうやって出来上がった高層ビルが、遠い将来老朽化した時に、どういう方法で建て替えるのか、わからないと言って、事業を始めるのです。

大田区のいう、マンション建て替え円滑化法は、合意形成の一つの方法ではありますが、保留床などの期待できないマンションで、採用するのが難しいことは、区も100も承知だと思います。

デベロッパーは安く買い取り、また作ることも可能かも知れませんが、事業のための環境や防災などの費用と利息と事業者利益も負担しなければならない区分所有者と区民などが、人生の所得と費用で考えたとき、この事業が、本当に区民のためといえるとは考えられません。

事業採算性のためとこたえた職員の意図は、こういうことなのではないでしょうか。

デベロッパーの視点で見れば、そうかもしれませんが、ここで行うべきは、全体の奉仕者である行政が出した計画に対し、それが、区民に本当に良い計画かを検証するための議論です。

大田区の担当課長が事業採算性のための地区計画変更であり、環境、税負担、雇用、税収などへの影響、将来の建替えといった公共性については全く考えていないと言ったのは、営利企業の利益目線で、区の事業をおこなっていることの本音なのでしょう。

いくら取り繕っても、この計画が多くの区民のためと言える根拠は、ありません。反対です。

 

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