先日の9.11浸水被害を受け、
大田区議会が東京都に浸水対策の更なる事業推進を求める意見書を出すと決めました。
私の事務所も浸水しましたから、浸水対策には賛成ですが、
対策ではなく、単なる事業推進では、
対策の私費負担や税負担を伴い、住宅価格を上げたり、物価高を招くリスクがある、ため、反対しました。
気持ちで区民を支援すると「議会」が声を上げることで
東京都や大田区の考えている事業を後押しすることになるからです。
いま、
区も都も、浸水対策で、500㎡未満の土地の保有者に、
新規既存含め、雨水貯留施設の設置強化を進めています。
区議会が、東京都に、更なる浸水対策を求めれば、
今は、お願いですんでいる浸水対策ですが
雨水貯留施設や、浸透ますの設置が義務になってしまいます。
東京都が求める浸水対策のハードルは、1平米あたり30リットルと極めて高いのです。
70平米の土地で、すべてコンクリートや建物で覆われていたら、2100リットルの
貯留槽などを造らなければなりません。
しかも、新規だけでなく、既存施設もです。
物理的にも、経済的にも、非常に厳しいハードルです
全額私費だとしても、負担が大きいですが、
税負担なら良いかと言えば、税負担も大きいですし、
今度は、住宅費や家賃に影響したり、物価を高くするリスクも大きいです。
意見書提出で、これらを踏まえて出しているか、提出者に聞きましたが、
そこは考えていない、と答弁しています。
都や区の施策を調べればすぐにわかることですし、私が通告した質疑でも
お知らせしています。
私も都市水害の対策は重要で何とかしたいと思います
が、原因は、土に蓋する開発や、ヒートアイランドです。
一方で、土に蓋する開発は、ブレーキどころか、アクセルを踏みながら
対症療法で、税や私費負担をかけて、さらに、土を掘り、地中や帯水層に
人工的に手を加えるのですから、問題はさらに悪化します。
選挙でえらばれ、多額な報酬をいただき、政策立案にかかわるものとして
「区民にやります」ばかり、でなく、
その、なんぼも先を見通した提案が必要だと思い、
以下の討論を行いました。
末尾に、
意見書を掲載します
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フェアな民主主義奈須りえです。
議員提出第3号議案雪谷地区における浸水対策のさらなる事業推進を求める意見書に反対の立場から討論いたします。
意見書は
・9月11日の豪雨と浸水被害をうけ、東京都が現在進めている浸水対策を完成させること。
及び、
・雪谷地区の一時的な浸水被害防止の観点から、雨水浸透施設等を設置することや、一般住宅や店舗等に止水版を設置する助成制度を設けることをもとめています。
これだけ読めば、良いことに聞こえますが、
東京都が2023年12月に東京都豪雨対策基本方針を改定し、
都内全域の目標降雨を10ミリ引き上げたため、それに伴い、区民の税負担や私費負担が高まる可能性が極めて高く、そこを十分踏まえた意見書になっていないので反対です。
これまで、大田区で、開発指導要綱で設置を義務付けていた雨水浸透施設などは、大田区の埋め立て地以外の全域一律で500㎡以上の開発や、呑川・丸子川流域の500㎡未満の集団住宅建設事業に限られていました。
改定された、東京都豪雨対策基本方針は、
小規模民間施設における流域対策を強化していて、今は、法令で定めた開発行為等に当たらない小規模開発や、既存施設まで、対策を強化すると書かれています。
大田区は、令和4年4月に雨水流出抑制施設技術指針を改定し、呑川・丸子川流域の500㎡未満の小規模開発についても1平米あたり30リットルの雨水貯留施設設置などの対策を求めるようになっています。
東京都豪雨対策基本方針に従い、小規模の新築や既存の開発や施設への対策が強化されれば、
●500㎡以上の開発への対策を平米あたり10リットル引き上げたのも併せ、
●区民、中でも意見書にある雪谷地区含めた呑川・丸子川流域の区民は、雨水貯留施設や浸透施設の設置の強化で経済負担が増えることになります。
結果、建築費等が上がって、住宅価格や家賃に影響を及ぼす可能性が高いのです。
住宅費は区民生活に大きな影響を及ぼしますし、住宅や事務所費が上がれば、全ての物価に影響しますから、物価に所得が連動しないなか、特に丁寧な対応が必要です。
小規模開発を対象にした東京都の流域対策は呑川丸子川だけでなく都内全域なのです。
そもそも、宅地が細分化する中、
70㎡の土地に1平米あたり30リットルの対策を求めれば、2100リットルの貯留、浸透施設を設置することになりますが、物理的、経済的に可能か、と言う問題があります。不可能な区民は、ただでさえ高くなった住宅を持つことも売ることも難しくなるかも知れません。
問題は、豪雨や浸水の原因が、土に蓋をする開発やヒートアイランドであると
大田区も一員の東京都総合治水対策協議会が言っているのに、開発の在り方に抑止をかけるなどの根本的な取り組みをまったくしていないことです。
それどころか、さらに、蒲蒲線やリニア中央新幹線など、地下まで開発を進めているのです。
豪雨や浸水や都市部の気温上昇は、政治の不作為ともいえる問題なのに、小規模開発まで対象にして、区民が政治の無策のツケを払わされる構図は問題だと思います。
降った雨を貯留槽で貯留しても、雨水の地下浸透を道路や建築物で阻害しつづけていますから、根本的な問題解決にはなりません。
近年は、道路陥没が年々増えていますが、土に蓋をする開発との関係も無視できないと思いますが、曖昧にしたままです。
私も9.11で床上浸水した被害者ですから、一日も早い改善を望んでいますが、根本的な原因である、過剰な開発とそれらを許す都市計画や建築関係法令の不備を不問にし、対症療法だけを進めることは、さらに問題を悪化深刻化させます。
それらに触れることなく、浸水対策を早期に完成させることだけに言及する意見書を東京都に提出すれば、
大田区は既に、雨水流出抑制施設技術指針を出していますから、
東京都の豪雨対策基本方針に基づき、小規模開発の規制を強化し、開発指導要綱に盛り込んで、建築確認の要件にするでしょう。
その前に、
●そもそもの都市型水害の要因である土に蓋する開発をどう抑制し、改善するか、
●区民の負担をどう緩和するか、
●小規模宅地の区民の雨水流出抑制を誰がどうすべきか、
など考えることはたくさんあります。
それらの一定の方向性を出したうえでの意見書とすべきと考え、反対といたします。
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意見書
雪谷地区における浸水対策のさらなる事業推進を求める意見書
東京都におかれては、区民の安全を守り、安心で快適な生活を支えるために、令和3年3月に「経営計画2021」を策定し、下水道管の再構築、水再生センター・ポンプ所の再構築、浸水対策、震災対策などにご尽力をいただき、心より感謝申し上げる。これまでの取組により、大田区内においては、幹線等の下水道施設整備が徐々に進み、雪谷地区では雨水調整池が完成するとともに、洗足池増強幹線の整備が進められている。
しかしながら、去る令和7年9月11日に大田区では初めて「記録的短時間大雨情報」が発令され、数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨が記録された。
この短時間での大雨により大田区内において、住家と事業所の床上、床下浸水の被害が650件以上発生し、そのうち約半数の320件以上が雪谷地区において生じており、大田区内での浸水被害が窪地のある雪谷地区に集中していることを物語っている。これは、近年多発している短時間での大雨が従来の想定を超えるため、平時からの水害リスクに対する備えがいかに重要であるかを示している。
このような中、地域の方々からは、大雨が降るたびに浸水に対する不安の声が数多く寄せられており、区や都に対してはさらなる事業の推進が求められている。
よって、大田区議会は、今回の雪谷地区における浸水被害を十分に検証し、当地区における浸水対策の早期完成を目指して取り組むとともに、区民が安全で安心して暮らせるまちづくりが推進されるよう、東京都に対して下記事項を強く要望する。
記
1 雪谷地区の浸水対策を早期に完成させること。また、これに併せて必要に応じて地域住民に対して説明の機会を設けること。
2 雪谷地区の一時的な浸水被害を防止する観点から、雨水浸透施設等を設置することや一般住宅や店舗等に止水板を設置する助成制度を設けること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
東京都知事 宛 年月日
大田区議会議長名