羽田空港対策特別委員会で、伊丹空港に視察に行きました。
伊丹空港は、関西空港、神戸空港とともに3空港一体で、民間資本100%の関西エアポート株式会社が、コンセッション方式で運営している国内線専用空港です。
コンセッション方式と言うのは、
資産=土地や建物は国の所有で、運営を民間企業が担う方式で、上下分離方式とも呼ばれます。
伊丹空港も、羽田空港同様、
ジェット機就航を契機に騒音問題が激化し、夜間飛行差止等訴訟や、空港廃止など調停が行われるなどの住民運動がおきました。
訴訟などの請求は却下されたものの、国は、自治体や住民団体と協定を締結し、自主規制によって、
・飛行時間を7時~21時とし夜間飛行は行わないことや、
・発着回数を370回に制限し、プロペラ機枠170、ジェット機枠を200とする
(その後、プロペラ機枠が低騒音機枠に規制緩和される)
・3発機以上のジェット機乗り入れ全面禁止
などが今も守られています。
夜間飛行が制限されているため、羽田で増えている貨物量(旅客機の荷物室に貨物を積み込む)も貨物は夜間便が多いため減少傾向にあるそうです。
総発着回数370回や、午後9時~午前7時まで発着するダイヤ設定を認めない、などを履行する根拠となるのが、
・周辺自治体および、
・地元自治会会長等で構成される調停団と締結している
2つの協定ですが、
自治体を代表する伊丹市が、空港との共存共栄都市を言い始める一方、
調停団の構成員である自治会長が高齢化するなど、
現在の空港供用の根拠となる協定が、今後も継承されていくか、不確定要素を感じました。
伊丹空港は、現在、国際線が飛行していない国内線専用空港ですが、
正式な飛行場名は、関西国際空港です。
国内線を羽田に、国際線を成田へとすみ分けた羽田空港でしたが、
空港名は東京国際空港のまま供用され、結果、再国際化となってしまいましたから、将来、国際便を飛ばす余地を残しているのではないかな、と感じました。
2つの調停も、本来であれば、行政の継続性の元、堅持されるべき約束事ですが、
首長や自治会長という属人的な判断で、効力の在り方も動きそうな気配を感じます。
大田区の「海から入って海へ出る」が、いとも簡単に=一方的な説明だけで、合意形成なく、変えられてしまったように、
伊丹空港の在り方が変わり、
飛行時間帯、便数、機種、飛行ルート、国内・国際などが変われば、大阪、兵庫一帯の住民への影響も、決して少なくないと思います。
伊丹空港の滑走路は、北に少し寄った北西から、南東に、平行に2本しかれていますが
南東から北西への離発着が99%を占めているそうです。
逆の運用を行えば、大阪の市街地に向けての離陸が行われてしまうのですから、影響を最小限にとどめていると言えます。
風向きにより、使用滑走路を変えている羽田空港との違いを訪ねたところ、
豊中測定所は北風が多いと説明を受けました。
視察後、気象庁の豊中測定所の直近1年間の最多風向データを調べたところ、
・豊中の北風は73%で
・羽田の57%より多いものの
99%には程遠く、羽田を15%上回っているにすぎません。
このデータから、
伊丹空港のある場所は、北風が多いからと説明を受けましたが、
風に向かって飛行機は離着陸する、と一般に言われるほど、風向きと飛行ルートとは、
厳密に履行されるべき関係に無く、他の要素との関係で柔軟に運用されているのではないか、
と感じました。
伊丹空港では、発着回数を370回に制限し、
プロペラ機枠を170、ジェット機枠を200としてきましたが、
低騒音のプロペラ機枠を低騒音機枠にかえる規制緩和を行っています。
規制緩和ということは、ジェット機より低騒音機の方が、騒音影響が大きいと言う意味では無いでしょうか。
昨今、羽田空港では、低騒音機が90デシベルを超え飛行するなど、ICAOの示す低騒音機種が、低騒音で飛行しない事例が散見されます。
伊丹・羽田双方とも住宅地にある空港の騒音指標が、国際民間航空が安全に発達しその運送業務が経済的に運営されることを目的に設立されたICAOの指標による低騒音機の導入や、最大騒音レベルLASmだけで守れるのか、改めて考えさせられました。
伊丹空港では、実際の飛行実績に基づき低騒音機の指定をしたうえで、着陸料でインセンティブを与えるとともに、機種ごとの継続的な実測を空港会社(KAP)と兵庫県5か所、大阪府5か所、伊丹市3か所、豊中市3か所で行い、騒音レベルを公表しています。
ICAOは国際航空機の健全な発達を目的に国連に設置された機関ですが、そこが指定した低騒音機が、生活や環境に及ぼす影響が適正かを、正確に知るために、空港会社、県、市などの実測と値の公表は欠かせないと感じました。
伊丹空港の機種ごとの測定の在り方や、公表の方法は、羽田空港においても、学ぶべきはぜひ取り入れたいと思いました。