IWJ寄稿 一部修正有り
国が23区の財布に手を突っ込んだ
法人住民税の国税化はそう説明されている。 しかし、良く見れば、手を突っ込まれた財布の持ち主は23区。 東京都は国と結託し、被害者顔だ。
今や、国も東京都もあてにする23区の財源だが、23区の財政状況は、国や東京都にあてにされるほど、「余裕」があるわけではない。 厳密に言えば、23区民の住民サービス犠牲に上に成り立っていて、影響を受けるのは、23区民。
法人住民税の国税化からは、消費税を増税しても、国家戦略特区で経済政策を打ち立てても、都民生活に還元されない構図が見えてくる。
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以下は、12月の東京新聞の法人住民税の記事。
・法人住民税が国税化され東京都の税収減が見込まれる ・影響額は少なくない ・都議会与党も反対している
・石原都知事の時は国に対し譲歩させたが、猪瀬都知事は努力不足
(*数字は奈須が加筆)
東京都の猪瀬直樹都知事が医療法人「徳洲会」グループから五千万円を受け取った問題で、 (*1)法人住民税の一部国税化をめぐる国との交渉に当たれなかった猪瀬知事への風当たりが強くなっている。税収に占める法人税の割合が大きい都は、 (*2)十二日決定の税制改正大綱で国税化が決まり、 (*3)約一千億円の減収が見込まれるためだ。都議会からは大事なときにリーダーシップを発揮できない首長に不満の声が漏れる。
九日、国税化を検討する自民党税制調査会の幹部に最後の要請に出掛けたのは副知事だった。「知事の方が本当はインパクトがあるが」と言葉を濁す職員。財務官僚も「ナンバー2には負担が重い」とみる。 (*4)二〇〇七年、法人事業税の国税化にあたり当時の石原慎太郎知事が首相とのトップ会談で譲歩を引き出したのとは大きく異なった。
税制改正では、 (*5)国税化された法人事業税の一部が戻る ものの、都の税収は一二年度ベースで約一千億円減る。千代田区の一般会計予算五百億円のほぼ二倍に相当、「バブルの塔」と呼ばれた都の豪華庁舎の建設費千五百六十九億円の約三分の二に当たる。本格的に予算に影響するのは一五年度以降で、景気に左右される面はあるが、 (*6)一般会計予算が六兆円の都にとって少なくない額だ。
(*6)猪瀬知事は十一月半ばの記者会見で、国の予算の無駄を指摘して「地方の財布に手を入れる前に自ら歳出削減の努力をすべきだ」と国税化を批判した。下旬に現金授受問題が発覚して一転、議会への説明で総務委員会へ出席するなどして、関係省庁や与党の税制調査会での交渉やアピールに動けていない。
都議会は十三日の定例会最終日に国税化に反対の決議を予定している。「本来なら知事が先頭を切って国と折衝すべき問題なのに、遺憾この上ない」と公明党の中島義雄幹事長。国税化には、 (*7)政府与党の自民、公明党でさえ、都議会レベルでは反対を唱えてきただけに、自民党の吉原修幹事長も (*8)「知事が努力したようには見えない」と憤まんやる方ない。
そこで、法人住民税の東京都への影響額を、葛飾区が出している資料 から下記の表にしてみた。
法人住民税国税化と消費税影響額
(表より)
赤字が法人住民税の国税化による減収部分。
要は、減る減ると言われている東京都の税収だが、東京都の実質減収は③431億円で、1,000億円の1/2以上=④539億円は23区の減収だ。
なぜそうなるかと言えば、真ん中の法人事業税復元698億円により、帳消しになっているからだ。
で、ちょっと専門的になるが、東京都の減収分は、東京都が23区のために行っている事業の費用だ。たとえば、明日ママがいないで話題になっている児童養護施設などがこの441億円でまかなわれる。東京都の税収が減って困るのは23区民だ。
23区は、保育園、特別養護老人ホーム、障害者施設など住民福祉を主体的に行い、東京都はその補助金等を出すというのが東京都と23区の大きな役割分担だ。
いくら東京都が財源を確保していても、大田区、とか、世田谷区とか、実際に事業に取り組まなけければ、保育園の定員は増えないし、特別養護老人ホームも建たない。
23区の税収が減るということは、23区の子育て支援や高齢福祉の財源がひっ迫するということだ。
社会保障の担い手である23区の税収を下げるのが、法人住民税の国税化の本質
もっと言えば、これは、23区の問題だけでなく、全国の社会保障の財源が減るという問題でもある。
全ての市町村の法人住民税が国税化されるのだから日本全体の問題と言える。
法人住民税の国税化とは、日本の社会保障財源の減額。
国の説明は、「たくさんあるところから、足りないところに分ける」ので、国税化されても国から交付金として戻ってくるし、全体としてみれは、税収の豊かな東京都などの税金が地方にまわることになる」。
しかし、消費税と同じで、いったん国や自治体のお財布に入れば、金に色はついていないので、何に使われるかわからない。
消費税増税により、税収が増えるはずが、法人住民税の国税化で減っているのがよくわかる。それも、23区の方が影響が大きい。
消費税増税を社会保障にまわさない小細工が法人住民税国税化
「社会保障拡充のため」の消費税だったはずだが、法人住民税国税化により、今度もまた保護にされるのだろうか。
法人住民税国税化と消費税増税は確信犯的セット政策か。いつまでたっても消費税は社会保障にはまわらない。
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国も都知事も都議会もぐる?
いったい誰がこんなことを許しているんだろう。
追いかけてみると意図的に論点をすり替えている感じがある。
新聞記事に戻るが、記事では、
石原元都知事の時に、法人事業税の一部が国税化されたことにふれ、それが今回一部戻ると言っているのに、猪瀬前都知事の国との折衝にあたっての努力不足としている。
猪瀬前都知事を悪者にした形だ。
確かに、都議会自民党、と公明党は 反対しているが、猪瀬前都知事も国に、地方の財布に手を入れるなと国税化を批判していると書かれている。
しかも、都議会自民党と公明党が「都議会レベルでは」反対と書かれている通り、この法人住民税の国税化は、自民党と公明党が提案だ。( 自民党と公明党の税制大綱 が元)
国と東京都が陰で手を組み 、東京都の税収を確保し、23区に負担を押し付けた形だ。
東京都は、オリンピックのためのインフラ整備にまわすのだろうか。
法人住民税の国税化の経緯をみれば、国と東京都と都議会と区長会と区議会が結託しているのではないかという図式も垣間見える。争点にならない都知事選の争点 「誰が23区民を捨てるのか」
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ホントに23区は金持ちか
一方で、法人事業税・住民税の国税化は、企業の集中する東京都に偏って税収が集まっている(偏在)から、それを税収の少ない地方に振り分けることを目的としている。
石原元都知事の平成20年当時は、「東京都」に税金が偏在していたことになっていたようだが、今回、偏在しているのが「23区」に変わった。
それにしては、保育園の待機児も、特別養護老人ホームの待機者も特に23区に目立って多い。大田区始め、自治体は、土地が高い、人が多いと説明するが、税収が偏って多いから地方に振り分けないさいと国が税制を変えるほどなのに、一向に待機児も待機者も改善しない。
税収が豊かだと言っている国が間違っているのだろうか、それとも23区の使い方に問題が有るのだろうか。
東京都が豊かになっても都民が豊かにならない東京一極集中
国は東京が豊かだと言い、稼いだ税収をすいあげるが、都民は一向に豊かさを実感できない。
それどころか、土地が高くて家賃も住宅ローンも負担が大きいし、交通費も食費も高い、人が多くて保育園も特養も我慢させられる。
ところが、高い土地だから直接間接に負担している固定資産税も、人が多いから負担している住民税も、還元される前に、国家戦略特区で企業の法人税、固定資産税の減免や利子補給に使われる。減免し、補てんした以上の税収増が実現できる試算も無い。
あげくの果ては、23区は、偏って税金が多いから、国が代わりに地方に分けます、だ。
日本で一番税金が集まる東京都が、社会保障サービスは、日本で一番悪くて、それでも、特区で規制緩和して、更に東京一極集中させ、何をしようとしているのだろうか。 また、地方の財源が足りなくなって、23区の税金を国がすいあげるのだろうか。
地方自治体に交付するなということではない。
今の、東京一極集中による政策では、いつまでたっても都民に還元されないということだ。
都民から遠い都政、都知事選をチャンスにするために
伏魔殿、利権の府など、なかなか良い形容詞のつかない東京都だが、12兆の予算に加え。国家戦略特区法成立により、国家規制の変更権限まで担おうとしている。
猪瀬都知事の辞任がなければ、こうした都政の課題について、知りたい、聞きたい、変えたいと願う多くの仲間に発信することができなかった。
立場により、選択肢は異なる。持っている情報によっても選択肢は違ってくる。
あの時分かっていたら、が無いように、投票する最後の最後まで、聞き、伝えていきたい。
そして、日本で一番豊かな財源を都民のために還元できる東京都、一極集中ではなく、東京も地方も共存でき施策を実行できる知事の誕生を希望する。