東京都の補助で行う「保育・幼児教育の無償化」について 東京都に聴いて見えてきた様々な論点
大田区議会第2回定例会で、
保育や幼児教育の無償化のための条例を可決しました。
東京都が、補助金を出して、保育料や、幼稚園の月謝を負担すると言うのです。
タダは、誰にも嬉しいことですが
なぜ、これまで、払ってきた保育料などがタダになるか
東京都のHPを調べてみました。
無償化の対象は、認可保育園、認証保育所、幼稚園、その他の保育園などで、
例えば、都のHPをみると、以下のように説明されています。
保育料等の無償化について|保育サービス|東京都福祉局
少子社会対策は一刻の猶予もない中、
保育料の無償化は、本来国がすべきものですが、
都として国に対応を求めつつ、国が実施するまでの間、
独自の取組として、令和7年9月1日から保育料等第一子無償化を実施する区市町村を支援します。年齢や所得にかかわらず認可保育所等を利用する全ての世帯が対象となります。
ここからわかるように、
東京都は、無償化は、
1.少子化対策で
2.国がすべき無償化を、国が無償化するまでの間、東京都が補助する
と言っているのです。
そうなると、
国が、どう無償化するのか、心配になります。
国は、こども保険を作っていて、こども保険の仕組みで無償化すれば
私たちの健康保険料で負担することになり、
必ずしも、タダではないからです。
しかも、企業負担があるので
健康保険料の負担を減らすため、賃金を減らすかも知れませんし
健康保険組合の経営が悪化している企業は
廃業に追い込まれるかもしれないのです
そこで、無償化のしくみについて、東京都に説明をしていただきました。
そうしたら、いくつかの、重要なことが見えてきました。
大田区は、肝心なことを議会に説明していなかったのです。
1.無償化は、去年、こども保険が出来た後、都知事選で小池都知事が言ったので、検討が始まった、令和7年3月に計画ができた
去年、国会がこども保険を可決した直後に、都知事のいわば、公約になったのです。
私は、東京都は、国の直轄だと思っていますから、都知事は、こども保険を想定しているのではないかと思いました。
いつまで無償化するか、
国が無償化しなかった場合どうするか
うかがいましたが、想定していませんでした。
2.無償化の根拠法令は無い
一方で、こんれほどに、大きな影響が及ぶ、重要な施策ですが、無償化には、国の根拠法も、東京都の条例も無いそうです。調べたら、補助金要綱だけでした。
国民の権利義務に関わる問題は、法令に寄るのが原則ですが、市区への補助金だから、ということのようです。
余計に、こども保険(こども子育て支援金法を根拠にしたこども子育て支援金制度)を想定している可能性が大きいなあ、と思いました。
23区(特別区)のしくみは、ここでも、都合の良いように使われています。
3.私立と公立で、都の補助割合が違うため、さらに民営化に誘導される可能性がある。幼稚園が軽視されないか?も心配
私立保育園100%補助、直営(区立・市立)保育園 都50%、区市50%。
(説明を受けたのが、保育のご担当だったので、調べますが、幼稚園も私立と公立で負担割合が違うようです。そうなれば、区立幼稚園の無い大田区は、私立幼稚園だけですから、心配な仕組みです。
こども保険で、国民と企業負担になるから(構わない)ということなのでしょうか?)
4.国がこども保険で無償化するか、税で無償化するか、東京都は考えていない
都は、国に無償化の要望はしていますが、国が税で無償化するか、こども保険で無償化するかは
どちらにすべきと言った考えも無ければ、どうするかの想定はありませんが、
令和7年6月に国へ予算の概算要望しています。
都の無償化により、国が、こども保険で無償化すれば、
🔴国民全体の社会保険料負担があがりますし
🔴中小企業を中心に、経営が悪化する可能性があります
🔴社会保険料負担を減らすため、賃金が減らされれば、社会保険料負担以上に手取りが減るかも知れません。
5.都の無償化負担総額約1兆円、国が無償化したらどうなる?
令和7年度予算の無償化予算総額は763億円(保育の無償化は、~9月で242億円)ですから、
(*幼稚園の無償化分が計算できていませんが、)
1年間フルで無償化されれば、763億円+170億円=933億円にもなります。
約1兆円にもなる無償化分、東京都は、何に使うのでしょうか?
都で、都民の保育料を無償化出来るだけの税収があるのです
国に負担させれば、こども保険なら、国民と企業に負担が生じますし
税なら、国債発行額がまた増えることになり、良いことはありません。
そもそも、東京都には、税収がふんだんにあるのだなあ、
こども保険などつくらなくても、そういう税収で、社会保障は担えるのだなあ、と思います。
本来、都民や、国民に(一極集中で得た富は)還元されるべきではないか、
いったい何に使われているのか、とあらためて感じました。